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閑話 ヴェール伯爵家解散
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「えっ……!レイヤード殿下と婚約解消!?!?嫌よ!イヤァ!」
ローザが首を横に振り、金切り声をあげる。
「レイヤード殿下はお前に引っかかり、将来の王として必要な能力に欠けるとして廃太子になったが、我々と違って罪を犯しているわけではない。伯爵令嬢でいられたのも、オレリアン公爵が爵位を私に譲ってくれたからだし、許してくれたから。そして、オレリアン公爵がいなくてもこの領地が再び活性化できたのは、殿下の力があったからこそ。殿下はよく反省し、そしてこの地をうまく軌道に乗せた手腕が認められて王族のままでいることを許されたのだ。王族が、我々のようなケチのついた者と縁を結ぶはずがないだろう。」
「殿下じゃなかったら?私は誰と婚約するの?それなりの方じゃなければ嫌よ!」
「………喉元すぐれば、か…。そこで関係ない顔をしているケインもだ。お前もこっちに座れ!」
レイヤード殿下が領地から引き揚げて城に戻られて。
少しは仕事を手伝う気があるのかと思えば全然そんなそぶりもなく。
領地を警備しているとは名ばかりでただブラブラしているだけのごく潰し。
警備と言い張って窓辺でぼーっとしている息子を向かい合うソファに座らせる。
「私は殿下から引き継いで仕事をしているが、ここの領地経営はかなり難しい。先々代や兄上の能力が高かったからこそ何とかなっていたようなもので、常に新しいことを考え続けなくてはならない。資源だよりの土地が資源を枯渇させたのだから当たり前だ。ヴェネツィア兄上が構想を立て、オレリアン公爵が準備をし、殿下が軌道に乗せた。とはいっても、それを継続して成功させていくことがどれだけ大変なことか。私の後はどうする?誰が継ぐ?ただでさえケチがついた家だ、同等の家格どころか下位の貴族でさえ嫁いできてくれるか。はっきり言おうか?」
本当の意味で自らを省みず、変われないケインは、後継の資格はない。お前に領地経営は無理!
自分の身の程を知らずにただ我儘を言うだけのブスに釣書は来ません!
こっちがお願いしてお願いしてお願いしても無理でした!
「お父様!」
「酷いわひどすぎるわっ!」
「………幸い、王家は自分たちの有責だからと婚約解消のお金をたくさんくださった。あとは自分たちの私財を集めて、爵位と領地は返上しようと思う。もっとうまく経営できる人に。それなりに身の丈にあった仕事をして、贅沢をしなければ、それなりに暮らしていけるはずだ。」
「貴族をやめるってこと?ドレスが着れなくなるの?パーティにもいけないの?」
「どのみち、あれからパーティには行ってないだろう?私たちが貴族にとどまったところで、パーティに参加することはできないよ。」
「執事をしていた経験があるから、私は執事の職につこうと思う。幸い、陛下が手配してくださった。私たちがこの国で働いても、生きづらいであろうと配慮してくださってな。西のローメン王国の貴族の屋敷で働けるよう、紹介状をくださったのだ。お前たちも一緒にローメン王国へ行くんだ。ケイン、お前はそこの騎士団に就職すること。お前は人に従うのであれば十分仕事ができるだろう。私たちは自分が主ではなく、従であるのが分相応なんだ。他国であれば、あるいは宮勤めも可能ではないかとおっしゃってたぞ。」
「騎士!騎士になれるのなら喜んで行きます!」
「ローザ、お前はその国で修道院に入れ。性根を入れ替えれば、嫁の先もないことはないだろう。」
「ええええっ……。そんなぁ。」
こうして、シンが予測していた通り、ヴェール伯爵家は解散になった。
ローザが首を横に振り、金切り声をあげる。
「レイヤード殿下はお前に引っかかり、将来の王として必要な能力に欠けるとして廃太子になったが、我々と違って罪を犯しているわけではない。伯爵令嬢でいられたのも、オレリアン公爵が爵位を私に譲ってくれたからだし、許してくれたから。そして、オレリアン公爵がいなくてもこの領地が再び活性化できたのは、殿下の力があったからこそ。殿下はよく反省し、そしてこの地をうまく軌道に乗せた手腕が認められて王族のままでいることを許されたのだ。王族が、我々のようなケチのついた者と縁を結ぶはずがないだろう。」
「殿下じゃなかったら?私は誰と婚約するの?それなりの方じゃなければ嫌よ!」
「………喉元すぐれば、か…。そこで関係ない顔をしているケインもだ。お前もこっちに座れ!」
レイヤード殿下が領地から引き揚げて城に戻られて。
少しは仕事を手伝う気があるのかと思えば全然そんなそぶりもなく。
領地を警備しているとは名ばかりでただブラブラしているだけのごく潰し。
警備と言い張って窓辺でぼーっとしている息子を向かい合うソファに座らせる。
「私は殿下から引き継いで仕事をしているが、ここの領地経営はかなり難しい。先々代や兄上の能力が高かったからこそ何とかなっていたようなもので、常に新しいことを考え続けなくてはならない。資源だよりの土地が資源を枯渇させたのだから当たり前だ。ヴェネツィア兄上が構想を立て、オレリアン公爵が準備をし、殿下が軌道に乗せた。とはいっても、それを継続して成功させていくことがどれだけ大変なことか。私の後はどうする?誰が継ぐ?ただでさえケチがついた家だ、同等の家格どころか下位の貴族でさえ嫁いできてくれるか。はっきり言おうか?」
本当の意味で自らを省みず、変われないケインは、後継の資格はない。お前に領地経営は無理!
自分の身の程を知らずにただ我儘を言うだけのブスに釣書は来ません!
こっちがお願いしてお願いしてお願いしても無理でした!
「お父様!」
「酷いわひどすぎるわっ!」
「………幸い、王家は自分たちの有責だからと婚約解消のお金をたくさんくださった。あとは自分たちの私財を集めて、爵位と領地は返上しようと思う。もっとうまく経営できる人に。それなりに身の丈にあった仕事をして、贅沢をしなければ、それなりに暮らしていけるはずだ。」
「貴族をやめるってこと?ドレスが着れなくなるの?パーティにもいけないの?」
「どのみち、あれからパーティには行ってないだろう?私たちが貴族にとどまったところで、パーティに参加することはできないよ。」
「執事をしていた経験があるから、私は執事の職につこうと思う。幸い、陛下が手配してくださった。私たちがこの国で働いても、生きづらいであろうと配慮してくださってな。西のローメン王国の貴族の屋敷で働けるよう、紹介状をくださったのだ。お前たちも一緒にローメン王国へ行くんだ。ケイン、お前はそこの騎士団に就職すること。お前は人に従うのであれば十分仕事ができるだろう。私たちは自分が主ではなく、従であるのが分相応なんだ。他国であれば、あるいは宮勤めも可能ではないかとおっしゃってたぞ。」
「騎士!騎士になれるのなら喜んで行きます!」
「ローザ、お前はその国で修道院に入れ。性根を入れ替えれば、嫁の先もないことはないだろう。」
「ええええっ……。そんなぁ。」
こうして、シンが予測していた通り、ヴェール伯爵家は解散になった。
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