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第五章 天の川に引き離された恋人たちのこと
87 金玉は恐ろしい試練に立ち向かうのこと
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さて夕食のはじまりである。
悦蛇と金玉は隣り合わせに、申陽はその向かいに台の上に座って、それぞれ豪華なお膳を前にしている。
「ちゃんと人間用だよ」
ふだん悦蛇は、洞庭湖のプランクトンをこして食べていたが、人間用の食事が必要だろうと用意させたのだ。
「わあ、ありがとうございます」
それは蛯名がつくったもので、一流シェフ並みに美味しかった。
いま田楽は、ウェディングプランナーとの打ち合わせにバタバタ忙しくしている。
さて夕食が進み、男二人が酒を飲みはじめた頃、申陽は悦蛇にこう尋ねた。
「ところで、金玉さまは本当にふたなりなのですか?」
「うん、そうだよ」
悦蛇は、田楽が集めてきた金玉のカルテを見ていた。
「ご自分でお確かめになったので?」
「い、いや、そんなんじゃないけど」
悦蛇はエッチな空想をして、頬を赤らめた。
「それは危ういですなあ。結婚は一大事のこと。もし間違った人と結婚してしまったら、とり返しがつきませんよ」
申陽は、丁寧かつ、妙に含みがあるような調子で話した。
「それはそうだけど、裸になってもらうわけにもいかないし」
「おお、それはいいアイデアではないですか。金玉どのに、今、脱いでもらえばいいのでは?」
ここは個室だが、夕食の席である……さらに申陽は言う。
「金玉さま、どうしました? 恥ずかしいのですか?」
――金玉は「恥ずかしいといってはいけない」という誓いを思い出した。
「そ、そんなことないよっ!」
「では脱げますか」
「も、もちろんだよ! 悦蛇さま、ぼくは本当にふたなりなんです」
金玉は立って、あっという間に一糸まとわぬ姿になった。
悦蛇は、あんぐりと口をあけている。
「ほう、これは見事なふたなりだ。これで悦蛇さまは、前も後ろも楽しめますな」
「ど、どういうことだい?」
「ですから、子作りするところと、後ろも楽しめるでしょうが」
「いや、べ、べつに僕はそんなことするつもりじゃ……」
「それはもったいない。せっかくのふたなりだというのに。
私が後ろの楽しみ方を教えてあげましょう」
そして申陽は、半刻(一時間)ばかりも、いかにそれが素晴らしいか、そのためにはどうすればいいかを滔々と語るのであった。
ちなみにその間、金玉はずっと裸だった……。
「――というわけで、後ろを楽しむには、事前に十分に広げておく必要があるのですな」
「ま、まあ、理論はわかったよ」
悦蛇は、申陽の気魄に圧倒されっぱなしだった。
「理論の次は、実践です。よろしければ、私が手本を見せてあげましょう。
なに、心配はいりません。私はこの通り医師ですし、みだらな心は何もありません」
「いいよ! さすがに、金玉ちゃんにそんなことをさせるわけには……」
「やはり恥ずかしいでしょうか?」
申陽が、全裸の金玉を射抜くようにじろりと見た。
「は、恥ずかしくなんかないよ!」
「では、そこに四つん這いになってみてください」
金玉はいわれた通りにする。
申陽は護謨
(護謨:妖怪世界の地底湖に住む魚。その腸は弾力性に富み、いろいろなものに加工されている)
の手袋をつけ、さらに和合油《わごうゆ》を金玉の後庭にたらした。
「ひっ」
「さあ、指を入れていきますよ」
「ま、待って!」
「恥ずかしいのですか? 犬のように四つん這いになって、秘所をさらけだして、男二人の前で棒状のものを入れられるのが? どうなんですか、金玉さま」
「は、恥ずかしくなんかないったら! さっさとやって……あうっ」
「こうやって、少しずつならしていくわけですな」
金玉の秘密の庭に、申陽のごつごつした指が押し入ってくる……。
さらにその指は、金玉の内奥を味わうように、蛇のごとくうごめいた。
金玉はその未知なる感触に、唇をぎゅっとかんで耐えた。
「でも、指だけでは足りませんからな」
申陽は手袋を外し、あらかじめ用意してきた鞄の中を、ごそごそさぐりはじめた。
「まずは細いものからはじめていきましょう。これがいちばん小さいサイズ(私物)ですね。そして慣れてきたら、大きくしていきましょう。これが男性の標準的なサイズのもの(私物)ですね。さらに効率的に拡張するためには、拘束具つきのもの(私物)があります。これならつけたままでも大丈夫ですよ。さらに他にも……」
そのズラリと並べられた様子は、まさに一流の書家が筆にこだわるのごとくであった。
「いやあ……ここまでしなくちゃ、広がらないんですねえ」
悦蛇は素人らしく、率直な感想をもらした。
「少しずつ広げていくのが、また楽しいのです。
さあ金玉さま、いちばん細いのからはじめていきましょうか。もちろん恥ずかしくないですよね?」
ところが……。
「い、痛い! 恥ずかしくないけど、無理、やめて」
異様な状況下で緊張しきっているせいで、体に力が入っているのだろう。
「うーん、それは困りましたな……」
申陽は焦った。まだ、ほんの序の口ではないか。
「え、えと、じゃあ、これでどう?」
悦蛇は服の袖から、細めの黒ミミズのようなものをひゅっと出して、金玉に見せた。
それは輿のなかで、自分の足首をつかんだものとよく似ていた。
だが、あの時のものよりはだいぶん細い。
「大丈夫だよ。痛くないようにするから」
その触手は、体表からぶわっと透明な液体をふいた。
それは灯かりの下で、ぬらぬらとぬれそぼっている。
「な……なにっ?」
「金玉ちゃん、入れてみてもいい? 恥ずかしい?」
思わず脅えた金玉だったが、気丈にふるまった。
「は、恥ずかしくなんかないですっ!」
「じゃあ、ちょっと我慢してね」
「んっ……」
金玉は身をかたくしたが、そのぬらぬらは熱く、うぞうぞとうごめいていて、後庭がとろけてしまうように思えた。
「どう?」
「あ、ああっ……なんか、ヘンな気持ちです……悦蛇さまぁ……」
金玉は熱に浮かされたように頭がぼうっとして、甘ったるい声を出した。
「さ、さすがは悦蛇さまですな!」
しかし、申陽の手はワナワナと震えていた。
目の前で愛しい人が後庭を――しかし、その状況をつくったのはまぎれもなく自分である。
「え、ええと、これを一週間、一刻(二時間)ずつ続けるんだっけ? そんなに長く?」
「まあ、今日は初めてですから、もういいのではありませんか」
申陽は努めて冷静さをよそおいながら、言ったのだが……。
「悦蛇さま、ぼく、大丈夫です。恥ずかしくなんかないから! く、ください……」
そういうわけで、地獄のようにおそろしい試練は続いていくのであった!
*
「なんだよあれっ!」
部屋に戻ってきた金玉は、怒りで寝台をぼふっと叩いた。
悦蛇のぬるぬるが入れられたとたん、頭が真っ白になってしまったのだ。
金玉は、自分がうわごとのようにいっていた「悦蛇さまぁ」「触手、気持ちいい」「もっと太くして」などの言葉を思い出して、羞恥に顔を赤らめた。
――あんな恥ずかしいこと……。
だが、ハッと思い出した。
恥ずかしいって、いっちゃいけないんだ。
そういう話、よくあるよね。
仙人さまが若者に「これから恐ろしい化け物がやってくるが、決して口を聞いてはならぬぞ」とかいうんだ。
「金玉……恐ろしい運命がやってきたピョン。もうぼくの力じゃ、金玉の童貞を守りきれないピョンよ。早く逃げたほうがいいピョン」
兎児はぶるぶると震えている。
「兎児くん、もう言わないで。ぼく、申陽さんを信じるから!」
そして金玉は、翌日も、翌々日も、恐ろしい試練の前に身を投げ出すのであった……。
*
「やだって……ぼく、それ固くて嫌いなんだもの」
裸の金玉は、申陽が目の前に突き出した張形を拒絶した。
「し、しかしですな……」
申陽は焦っていた。
普通サイズのブツものみこめなくて、虹色の張形を入れられるわけないではないか!
「べ、べつにいいんじゃないの? 無理に入れなくても」
そういう悦蛇は、裸の金玉を膝に抱き上げ、自らのもの――触手である!――を差し入れたまま、とりなすようにいった。
六日目の今では、もうずいぶんと太いものが入るようになっている。
「ああ、ぼく、悦蛇さまのがいい……」
そのとろけるような声に、申陽はズタズタにプライドを傷つけられた。
そもそも自分は、どっちかというと拡張がうまいほうだと思っていたのに。
それなのに、テクでこの気持ち悪い生き物に負けてるだと?
「よしよし……と、ところでこれ、どうかな?」
悦蛇は金玉の前に、いつもの触手とは違った、双頭の亀のようなものをひょいと出した。先っぽのぬらめきが、ぬらぬらとぬらめいている。
金玉は、ぼんやりした目で、それを見た。よくわかっていないようだ。
だが申陽にとっては一目瞭然、どうみても亀の頭だった。
二本あるけど。
「な、なめてくれたり……する? やっぱり恥ずかしい?」
「そんなことないですっ……」
金玉は、口の前に差し出されたそれをちろちろとなめた。
「甘い……」
――聖獣だから! たぶんネクタルやアンブロシア、ソーマなどのように、すごく健康に良い霊薬なのであろう。
「お、美味しい? もっと食べてもいいよ。恥ずかしかったらいいけど」
「恥ずかしくなんかないっ! 悦蛇さまの、とっても美味しいです……」
金玉はそれをつかみ、目を細めてむしゃぶりつくのだった。
*
客室に戻り、一人になった申陽に明月鏡が声をかけた。
「あんたはんさぁー、ちょっとやりすぎちゃうの? いくらなんでも……」
「黙ってろ、古鏡!」
申陽は、湾珠王の張形を金玉にほどこすため、あえてあの行いをしていたのだ。
しかし金玉は、固い張形がきらいで――人肌に温めているのだが――悦蛇のぬめぬめして、細くも太くもなり、なんかトロトロしたものが流れる触手のほうが好きなのだった。
そして、とうとう双頭の亀をなめるように……。
「こんな、こんなはずでは……」
「だから、わいが言うたったやんか。
あの化け物は変幻自在なんや。理想的な張形になれていわれたら、なれるんやて。
先端から流れてるのは、筋弛緩作用と催淫作用のある霊液なんや。
あれを入れられたら、もうどないもこないもならん。直腸からは薬物を吸収しやすいからな。メロメロになってまうんやて」
――八十年代黄金期のSM雑誌の愛読者が考えたような設定である!
「そら、悦蛇はウゾウゾのバケモンやし、内面もキモメンやけど、金玉とは、めっちゃ体の相性ええんちゃうの?」
「やめろっ! 言うなぁーっ!」
申陽は真実を拒絶した。
「てか、おたくはん、あの子に未練タラタラやんか。
目の前で、他の男に上も下も入れられて、なにやってんの?」
「仕方ないだろうが! 悦蛇は神にも等しい力の持ち主だ。
おまえは『金玉を連れだしても、アッという間に捕まる』といってただろうが。
だから、私はあえて悦蛇の前で調教しようと……」
「まあ、せやねんけどー。
ところで、明日はとうとう満月やで。どないするん?」
「ぐぐっ……」
申陽は悔しそうに、虹色に光るイボイボつきの大きなものを見つめるのであった。
以下、次号!
監修・調教指導・アイデア提供:湾多珠巳
クラヴィフィリア、あるいは永遠への律動
https://kakuyomu.jp/works/16818093078821212294
現在、連載中の作品です。まだ序盤ですが、音楽SFになるらしいです。
チロを連れて
https://kakuyomu.jp/works/16817330654832772800
最もSM味が強い作品です!
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ふだん悦蛇は、洞庭湖のプランクトンをこして食べていたが、人間用の食事が必要だろうと用意させたのだ。
「わあ、ありがとうございます」
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いま田楽は、ウェディングプランナーとの打ち合わせにバタバタ忙しくしている。
さて夕食が進み、男二人が酒を飲みはじめた頃、申陽は悦蛇にこう尋ねた。
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「うん、そうだよ」
悦蛇は、田楽が集めてきた金玉のカルテを見ていた。
「ご自分でお確かめになったので?」
「い、いや、そんなんじゃないけど」
悦蛇はエッチな空想をして、頬を赤らめた。
「それは危ういですなあ。結婚は一大事のこと。もし間違った人と結婚してしまったら、とり返しがつきませんよ」
申陽は、丁寧かつ、妙に含みがあるような調子で話した。
「それはそうだけど、裸になってもらうわけにもいかないし」
「おお、それはいいアイデアではないですか。金玉どのに、今、脱いでもらえばいいのでは?」
ここは個室だが、夕食の席である……さらに申陽は言う。
「金玉さま、どうしました? 恥ずかしいのですか?」
――金玉は「恥ずかしいといってはいけない」という誓いを思い出した。
「そ、そんなことないよっ!」
「では脱げますか」
「も、もちろんだよ! 悦蛇さま、ぼくは本当にふたなりなんです」
金玉は立って、あっという間に一糸まとわぬ姿になった。
悦蛇は、あんぐりと口をあけている。
「ほう、これは見事なふたなりだ。これで悦蛇さまは、前も後ろも楽しめますな」
「ど、どういうことだい?」
「ですから、子作りするところと、後ろも楽しめるでしょうが」
「いや、べ、べつに僕はそんなことするつもりじゃ……」
「それはもったいない。せっかくのふたなりだというのに。
私が後ろの楽しみ方を教えてあげましょう」
そして申陽は、半刻(一時間)ばかりも、いかにそれが素晴らしいか、そのためにはどうすればいいかを滔々と語るのであった。
ちなみにその間、金玉はずっと裸だった……。
「――というわけで、後ろを楽しむには、事前に十分に広げておく必要があるのですな」
「ま、まあ、理論はわかったよ」
悦蛇は、申陽の気魄に圧倒されっぱなしだった。
「理論の次は、実践です。よろしければ、私が手本を見せてあげましょう。
なに、心配はいりません。私はこの通り医師ですし、みだらな心は何もありません」
「いいよ! さすがに、金玉ちゃんにそんなことをさせるわけには……」
「やはり恥ずかしいでしょうか?」
申陽が、全裸の金玉を射抜くようにじろりと見た。
「は、恥ずかしくなんかないよ!」
「では、そこに四つん這いになってみてください」
金玉はいわれた通りにする。
申陽は護謨
(護謨:妖怪世界の地底湖に住む魚。その腸は弾力性に富み、いろいろなものに加工されている)
の手袋をつけ、さらに和合油《わごうゆ》を金玉の後庭にたらした。
「ひっ」
「さあ、指を入れていきますよ」
「ま、待って!」
「恥ずかしいのですか? 犬のように四つん這いになって、秘所をさらけだして、男二人の前で棒状のものを入れられるのが? どうなんですか、金玉さま」
「は、恥ずかしくなんかないったら! さっさとやって……あうっ」
「こうやって、少しずつならしていくわけですな」
金玉の秘密の庭に、申陽のごつごつした指が押し入ってくる……。
さらにその指は、金玉の内奥を味わうように、蛇のごとくうごめいた。
金玉はその未知なる感触に、唇をぎゅっとかんで耐えた。
「でも、指だけでは足りませんからな」
申陽は手袋を外し、あらかじめ用意してきた鞄の中を、ごそごそさぐりはじめた。
「まずは細いものからはじめていきましょう。これがいちばん小さいサイズ(私物)ですね。そして慣れてきたら、大きくしていきましょう。これが男性の標準的なサイズのもの(私物)ですね。さらに効率的に拡張するためには、拘束具つきのもの(私物)があります。これならつけたままでも大丈夫ですよ。さらに他にも……」
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「いやあ……ここまでしなくちゃ、広がらないんですねえ」
悦蛇は素人らしく、率直な感想をもらした。
「少しずつ広げていくのが、また楽しいのです。
さあ金玉さま、いちばん細いのからはじめていきましょうか。もちろん恥ずかしくないですよね?」
ところが……。
「い、痛い! 恥ずかしくないけど、無理、やめて」
異様な状況下で緊張しきっているせいで、体に力が入っているのだろう。
「うーん、それは困りましたな……」
申陽は焦った。まだ、ほんの序の口ではないか。
「え、えと、じゃあ、これでどう?」
悦蛇は服の袖から、細めの黒ミミズのようなものをひゅっと出して、金玉に見せた。
それは輿のなかで、自分の足首をつかんだものとよく似ていた。
だが、あの時のものよりはだいぶん細い。
「大丈夫だよ。痛くないようにするから」
その触手は、体表からぶわっと透明な液体をふいた。
それは灯かりの下で、ぬらぬらとぬれそぼっている。
「な……なにっ?」
「金玉ちゃん、入れてみてもいい? 恥ずかしい?」
思わず脅えた金玉だったが、気丈にふるまった。
「は、恥ずかしくなんかないですっ!」
「じゃあ、ちょっと我慢してね」
「んっ……」
金玉は身をかたくしたが、そのぬらぬらは熱く、うぞうぞとうごめいていて、後庭がとろけてしまうように思えた。
「どう?」
「あ、ああっ……なんか、ヘンな気持ちです……悦蛇さまぁ……」
金玉は熱に浮かされたように頭がぼうっとして、甘ったるい声を出した。
「さ、さすがは悦蛇さまですな!」
しかし、申陽の手はワナワナと震えていた。
目の前で愛しい人が後庭を――しかし、その状況をつくったのはまぎれもなく自分である。
「え、ええと、これを一週間、一刻(二時間)ずつ続けるんだっけ? そんなに長く?」
「まあ、今日は初めてですから、もういいのではありませんか」
申陽は努めて冷静さをよそおいながら、言ったのだが……。
「悦蛇さま、ぼく、大丈夫です。恥ずかしくなんかないから! く、ください……」
そういうわけで、地獄のようにおそろしい試練は続いていくのであった!
*
「なんだよあれっ!」
部屋に戻ってきた金玉は、怒りで寝台をぼふっと叩いた。
悦蛇のぬるぬるが入れられたとたん、頭が真っ白になってしまったのだ。
金玉は、自分がうわごとのようにいっていた「悦蛇さまぁ」「触手、気持ちいい」「もっと太くして」などの言葉を思い出して、羞恥に顔を赤らめた。
――あんな恥ずかしいこと……。
だが、ハッと思い出した。
恥ずかしいって、いっちゃいけないんだ。
そういう話、よくあるよね。
仙人さまが若者に「これから恐ろしい化け物がやってくるが、決して口を聞いてはならぬぞ」とかいうんだ。
「金玉……恐ろしい運命がやってきたピョン。もうぼくの力じゃ、金玉の童貞を守りきれないピョンよ。早く逃げたほうがいいピョン」
兎児はぶるぶると震えている。
「兎児くん、もう言わないで。ぼく、申陽さんを信じるから!」
そして金玉は、翌日も、翌々日も、恐ろしい試練の前に身を投げ出すのであった……。
*
「やだって……ぼく、それ固くて嫌いなんだもの」
裸の金玉は、申陽が目の前に突き出した張形を拒絶した。
「し、しかしですな……」
申陽は焦っていた。
普通サイズのブツものみこめなくて、虹色の張形を入れられるわけないではないか!
「べ、べつにいいんじゃないの? 無理に入れなくても」
そういう悦蛇は、裸の金玉を膝に抱き上げ、自らのもの――触手である!――を差し入れたまま、とりなすようにいった。
六日目の今では、もうずいぶんと太いものが入るようになっている。
「ああ、ぼく、悦蛇さまのがいい……」
そのとろけるような声に、申陽はズタズタにプライドを傷つけられた。
そもそも自分は、どっちかというと拡張がうまいほうだと思っていたのに。
それなのに、テクでこの気持ち悪い生き物に負けてるだと?
「よしよし……と、ところでこれ、どうかな?」
悦蛇は金玉の前に、いつもの触手とは違った、双頭の亀のようなものをひょいと出した。先っぽのぬらめきが、ぬらぬらとぬらめいている。
金玉は、ぼんやりした目で、それを見た。よくわかっていないようだ。
だが申陽にとっては一目瞭然、どうみても亀の頭だった。
二本あるけど。
「な、なめてくれたり……する? やっぱり恥ずかしい?」
「そんなことないですっ……」
金玉は、口の前に差し出されたそれをちろちろとなめた。
「甘い……」
――聖獣だから! たぶんネクタルやアンブロシア、ソーマなどのように、すごく健康に良い霊薬なのであろう。
「お、美味しい? もっと食べてもいいよ。恥ずかしかったらいいけど」
「恥ずかしくなんかないっ! 悦蛇さまの、とっても美味しいです……」
金玉はそれをつかみ、目を細めてむしゃぶりつくのだった。
*
客室に戻り、一人になった申陽に明月鏡が声をかけた。
「あんたはんさぁー、ちょっとやりすぎちゃうの? いくらなんでも……」
「黙ってろ、古鏡!」
申陽は、湾珠王の張形を金玉にほどこすため、あえてあの行いをしていたのだ。
しかし金玉は、固い張形がきらいで――人肌に温めているのだが――悦蛇のぬめぬめして、細くも太くもなり、なんかトロトロしたものが流れる触手のほうが好きなのだった。
そして、とうとう双頭の亀をなめるように……。
「こんな、こんなはずでは……」
「だから、わいが言うたったやんか。
あの化け物は変幻自在なんや。理想的な張形になれていわれたら、なれるんやて。
先端から流れてるのは、筋弛緩作用と催淫作用のある霊液なんや。
あれを入れられたら、もうどないもこないもならん。直腸からは薬物を吸収しやすいからな。メロメロになってまうんやて」
――八十年代黄金期のSM雑誌の愛読者が考えたような設定である!
「そら、悦蛇はウゾウゾのバケモンやし、内面もキモメンやけど、金玉とは、めっちゃ体の相性ええんちゃうの?」
「やめろっ! 言うなぁーっ!」
申陽は真実を拒絶した。
「てか、おたくはん、あの子に未練タラタラやんか。
目の前で、他の男に上も下も入れられて、なにやってんの?」
「仕方ないだろうが! 悦蛇は神にも等しい力の持ち主だ。
おまえは『金玉を連れだしても、アッという間に捕まる』といってただろうが。
だから、私はあえて悦蛇の前で調教しようと……」
「まあ、せやねんけどー。
ところで、明日はとうとう満月やで。どないするん?」
「ぐぐっ……」
申陽は悔しそうに、虹色に光るイボイボつきの大きなものを見つめるのであった。
以下、次号!
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クラヴィフィリア、あるいは永遠への律動
https://kakuyomu.jp/works/16818093078821212294
現在、連載中の作品です。まだ序盤ですが、音楽SFになるらしいです。
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