女子大生の彼女を公園で孕ませ

Yuki

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エレベーターの奇跡

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 僕は今日もまた、いつもと変わらない日常を送っていた。都心の雑踏に埋もれる小さなデザイン事務所で、ひたすらモニターとにらめっこする日々。僕の人生は、色彩に溢れるデザインとは裏腹に、いつも単調で、どこか味気ないものだった。
 そんな僕の日常に、ある日突然、甘い蜂蜜のような香りが漂い始めた。彼女の名前は佐奈。同じフロアに新しく入居してきたアロマショップの店員さんだ。初めて彼女を見たのは、僕が休憩のために屋上へ向かうエレベーターの中だった。
「すみません、このエレベーター、屋上に行きますか?」
 透き通るような声だった。振り向くと、そこにはまるで光を宿したような、柔らかな笑顔があった。淡いミントグリーンのワンピースに身を包んだ彼女は、まるで春の風のように爽やかで、そしてどこか、甘い香りを漂わせていた。
「はい、行きますよ」
 僕は精一杯の笑顔で答えたつもりだったが、きっと硬直していたに違いない。彼女の手には、可愛らしい小瓶がいくつか握られていた。それがアロマオイルだと、後で知ることになる。
「ありがとうございます。私、このフロアに新しくオープンしたアロマショップの佐奈です。よろしくお願いします」
 差し出された小さな手は、驚くほど柔らかかった。僕の心臓は、まるで初めての恋を知った中学生のように高鳴った。
それからというもの、僕の日常は少しずつ、色づき始めた。エレベーターでの偶然の出会いは、決して偶然ではなくなった。朝、会社に着く時間が少し早ければ、彼女とエレベーターで一緒になる確率が高まる。僕はいつしか、会社へ行く時間を微調整するようになっていた。
ある日、エレベーターの中で、彼女が小さな瓶を僕に差し出した。
「これ、新作の蜂蜜の香りなんです。もしよかったら、どうぞ」
 小瓶の蓋を開けると、ふわりと甘く優しい香りが広がった。それは、まるで陽だまりの中で、花々が咲き誇っているような、温かい香りだった。僕はその香りに、なぜか懐かしさを感じた。子供の頃、祖母の家で食べた、庭で採れた蜂蜜の味が蘇ってくるようだった。
「ありがとうございます。すごく、いい香りですね」
 僕は素直な感想を伝えた。彼女は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔は、蜂蜜の香りと同じくらい、僕の心を温かく満たしてくれた。
 それから、僕たちは少しずつ言葉を交わすようになった。エレベーターの中だけでなく、休憩時間には偶然を装って、彼女のアロマショップの前を通り過ぎることも増えた。彼女はいつも、僕に優しい笑顔を向けてくれた。
 ある日の昼休み、僕は意を決して、彼女のアロマショップの扉を開けた。店内は、様々なアロマオイルの香りが入り混じり、まるで異国の森に迷い込んだような不思議な空間だった。
「いらっしゃいませ。克也さん、今日はどうされましたか?」
 佐奈は、いつもの優しい笑顔で僕を迎えてくれた。
「あの、実は……」
 僕はどもりながら、今日までずっと胸の奥に秘めていた想いを言葉にしようとした。しかし、言葉はなかなか出てこない。
「何か、お探しですか?」
 僕の困惑を見て、佐奈が優しく尋ねた。
「あの、佐奈さん……」
 僕は深呼吸をして、ようやく言葉を絞り出した。
「僕、佐奈さんのことが、気になっています」
 佐奈は一瞬、きょとんとした表情をしたが、すぐにふわりと微笑んだ。その笑顔は、僕の心を解き放つようだった。
「ありがとうございます。私も、克也さんのこと、気になっていました」
 まさかの返答に、僕は心臓が飛び出しそうになった。夢か幻か。僕は何度も自分の頬をつねった。
 それから、僕たちはデートをするようになった。最初のデートは、少し照れくさかったけれど、僕たちは共通の話題を見つけるのに時間はかからなかった。お互いの仕事の話、好きなもの、休日の過ごし方。佐奈は僕の話をいつも真剣に聞いてくれて、そして、彼女の話はいつも僕を惹きつけた。彼女は、アロマオイルのことになると、目を輝かせながら語ってくれた。植物の持つ力、香りの癒し効果、そして人々に安らぎを与えることへの喜び。彼女の言葉からは、仕事への情熱と、人への優しさが溢れていた。
 ある日、佐奈が言った。
「ねえ、克也さん。今度、私の家で一緒にアロマオイルを作ってみない?」
 僕は二つ返事で頷いた。彼女の家へ招かれること自体、僕にとっては夢のような出来事だった。
 佐奈の家は、想像以上に素敵な空間だった。大きな窓からは柔らかな光が差し込み、観葉植物がそこかしこに置かれていた。部屋中に、心地よいアロマの香りが漂っていた。
「ここからの景色、好きなんです」
 佐奈が、窓辺に立ちながら言った。僕も窓の外を見た。都心のビル群が広がっているはずなのに、なぜか佐奈の家の窓からは、温かい光景が広がっているように感じた。佐奈の隣に立つと、彼女から漂うアロマの香りが、僕を優しく包み込んだ。
 僕たちは、様々なハーブや精油を混ぜ合わせ、オリジナルのアロマオイルを作った。僕は不器用で、何度も失敗しそうになったが、佐奈はいつも優しく教えてくれた。彼女の手つきは、まるで魔法使いのようだった。
「できた!蜂蜜の香り、ちょっと強めにしてみたんだ」
 僕が作ったアロマオイルは、不格好ながらも、甘い蜂蜜の香りがした。佐奈は、僕が作ったアロマオイルの香りを嗅いで、にこやかに言った。
「うん、すごく克也さんらしい香り。温かくて、優しい香り」
 僕は、佐奈の言葉に胸が熱くなった。僕の作ったアロマオイルに、彼女が僕自身を感じ取ってくれたことが、何よりも嬉しかった。
 それから、僕たちは様々な場所へ出かけた。時には、二人で遠出して、自然の中でアロマの原料となる植物を探しに行くこともあった。佐奈は、どんな植物にも優しく語りかけるように接していた。彼女のそういうところが、僕は大好きだった。
 季節は巡り、僕たちの関係も深まっていった。僕は、佐奈なしの生活を想像することができなくなっていた。彼女は、僕の人生に、色彩と香り、そして温かさを与えてくれた。
 ある雨の日、僕たちは会社のエレベーターで偶然一緒になった。いつもより少し、湿っぽい空気の中、僕たちは沈黙していた。エレベーターが最上階に到着し、扉が開いた瞬間、僕は佐奈の手をそっと握った。
「佐奈、僕と結婚してください」
 僕は、精一杯の勇気を振り絞って言った。佐奈は、驚いたように僕を見つめたが、すぐに目に涙を浮かべ、何度も頷いた。
「はい、喜んで」
 佐奈の返事に、僕の心は幸福で満たされた。僕たちはエレベーターを降り、屋上へ向かった。雨上がりの空は、どこまでも澄み渡り、遠くには虹がかかっていた。
 僕たちは、結婚することになった。結婚式の準備は、佐奈と一緒に、一つ一つ丁寧に選んでいった。結婚指輪は、佐奈がデザインした、小さな蜂蜜の結晶が埋め込まれたものになった。式場は、窓から光が差し込む、温かい雰囲気の場所を選んだ。
 新婚旅行は、佐奈の希望で、フランスのプロヴァンス地方へ行った。ラベンダー畑の広がる中で、僕は佐奈の幸せそうな顔を見て、心からこの人と結婚してよかったと思った。
 僕たちは、新しい家を見つけた。大きな窓があり、そこから夕日が差し込む、温かい家だった。佐奈は、その窓辺に、僕がプレゼントした観葉植物を飾った。僕たちが初めて作った、蜂蜜の香りのアロマオイルも、リビングに置かれた。
僕の日常は、もう単調なものではなかった。佐奈という存在が、僕の人生に、鮮やかな色彩と、甘い香り、そして何よりも温かい光を与えてくれたのだ。毎朝、佐奈が淹れてくれるコーヒーの香り、リビングに漂うアロマの香り、そして何よりも、佐奈の笑顔。それらが、僕の毎日を、特別なものにしてくれた。
 ある日の夕方、僕たちは二人で窓の外を眺めていた。茜色に染まった空が、僕たちの新しい生活を祝福しているようだった。
「ねえ、克也さん」
 佐奈が、僕に寄り添いながら言った。
「私たち、これからもずっと、この窓から色々な景色を見ていこうね」
 僕は佐奈の言葉に頷き、その肩を抱き寄せた。
 僕の人生は、佐奈と出会ってから、蜂蜜のように甘く、エレベーターのように上昇し、窓から見える景色のように、無限の可能性を秘めたものになった。
 僕は、佐奈と出会う前は、人生というものが、ただ流れていくものだと思っていた。しかし、佐奈は僕に、人生は自分で創り上げていくものだと教えてくれた。僕たちの未来は、この窓の向こうに広がる景色のように、どこまでも続いていく。
 そして、その未来には、きっとたくさんの蜂蜜色の思い出が待っているだろう。
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