8 / 19
凛子の婚活
7 凛子、お茶する⑵
しおりを挟む
10分もしないうちに小森さんはやってきた。
白のポロシャツと黒のチノパン姿で。
「こんにちは!お待たせしてすみません。待ちました?」
若干声を落として聞いてきた。
「こんにちは。さっき着いたばかりです」
うん?
先週のお見合いと同じ姿のような気が…いやいや気のせい、先週は確か黒のポロシャツだったはず。
私はけっこう変なところを覚えていたりする。
カウンター席に座った小森さんにメニューを渡す。
ちなみに私はとっくに注文するものを決めている。お店が売りにしているバスクチーズケーキとコーヒーにした。実はホームページを見ている時から気になっていたのだ。
「凛子さんはもう決めました?」
メニューから顔を上げてこちらを見てくる。
「はい。ケーキセットにします。バスクチーズケーキと飲み物はコーヒーにしようかと」
「いいですね~、それじゃあ俺もそれにします」
そう言って店主に注文する小森さん。
「ケーキセットでバスクチーズケーキとアイスコーヒーを二つずつお願いします」
「かしこまりました」
笑顔で注文を受けた店主は下がりケーキの用意を始めた。
進んで注文してくれるあたり気遣いができてよいのかもしれないが、私は内心自分で言えばよかったかもと残念に思った。
だってアイスコーヒーよりホットコーヒーが飲みたい気分だったから。
てっきりこちらに聞いてくれるものかと思ったけれどそうではなかったらしい。
そして本当だったらここで「この一週間いかだお過ごしでしたか?」みたいな流れで聞いていきたいんだけど、毎日何かと質問攻めだったから深堀されかねない。
とりあえず深堀される前にこちらから仕事の話題を振ってみる。
「今週は研修に行かれていたんですよね?慣れない部署はどうでしたか?」
本来は事務仕事がメインの雑用係だと自虐していたが、他の部署で研修をすることになっていると言っていた。
「立ち仕事はさすがに疲れますね!夕方になると脚がパンパンです」
そして具体的な仕事内容を説明された。
一方的ではなく時々「こういうのがあるんですけど知っていますか?」と問いかけてくれたから相槌だけで終わらずにすんだことには安心した。
「お待たせしました、どうぞ」
ケーキとアイスコーヒーが眼の前に置かれると、そのどっしりとした見た目としっとりとした断面に私は目を輝かせた。
「わぁ、美味しそうですね」
今日来て良かったと思えるのはこの店のケーキを食べれることかな。
一時間かけて仕事の話、愛猫の話、最近見た映画の話、好きな漫画の話をした。
趣味については何気に理解があるし会話も振ってくれる。確認はなかったけど注文もとってくれたし態度も傲慢じゃなかった。
小森さんは良い人なんだろうけど付き合えるのかと聞かれたらそれはまた別の話になる。
ましてや小森さんと触れ合うことなんてまずできないなぁ。
下がった第一印象を上げるなんてこと、たったの一時間でできるはずがない。そんなに簡単なことではないのだ。
悲しいことに気付いた時には話を聞いていた私の身体は若干引き気味となっていた。
◆ ◆ ◆
白のポロシャツと黒のチノパン姿で。
「こんにちは!お待たせしてすみません。待ちました?」
若干声を落として聞いてきた。
「こんにちは。さっき着いたばかりです」
うん?
先週のお見合いと同じ姿のような気が…いやいや気のせい、先週は確か黒のポロシャツだったはず。
私はけっこう変なところを覚えていたりする。
カウンター席に座った小森さんにメニューを渡す。
ちなみに私はとっくに注文するものを決めている。お店が売りにしているバスクチーズケーキとコーヒーにした。実はホームページを見ている時から気になっていたのだ。
「凛子さんはもう決めました?」
メニューから顔を上げてこちらを見てくる。
「はい。ケーキセットにします。バスクチーズケーキと飲み物はコーヒーにしようかと」
「いいですね~、それじゃあ俺もそれにします」
そう言って店主に注文する小森さん。
「ケーキセットでバスクチーズケーキとアイスコーヒーを二つずつお願いします」
「かしこまりました」
笑顔で注文を受けた店主は下がりケーキの用意を始めた。
進んで注文してくれるあたり気遣いができてよいのかもしれないが、私は内心自分で言えばよかったかもと残念に思った。
だってアイスコーヒーよりホットコーヒーが飲みたい気分だったから。
てっきりこちらに聞いてくれるものかと思ったけれどそうではなかったらしい。
そして本当だったらここで「この一週間いかだお過ごしでしたか?」みたいな流れで聞いていきたいんだけど、毎日何かと質問攻めだったから深堀されかねない。
とりあえず深堀される前にこちらから仕事の話題を振ってみる。
「今週は研修に行かれていたんですよね?慣れない部署はどうでしたか?」
本来は事務仕事がメインの雑用係だと自虐していたが、他の部署で研修をすることになっていると言っていた。
「立ち仕事はさすがに疲れますね!夕方になると脚がパンパンです」
そして具体的な仕事内容を説明された。
一方的ではなく時々「こういうのがあるんですけど知っていますか?」と問いかけてくれたから相槌だけで終わらずにすんだことには安心した。
「お待たせしました、どうぞ」
ケーキとアイスコーヒーが眼の前に置かれると、そのどっしりとした見た目としっとりとした断面に私は目を輝かせた。
「わぁ、美味しそうですね」
今日来て良かったと思えるのはこの店のケーキを食べれることかな。
一時間かけて仕事の話、愛猫の話、最近見た映画の話、好きな漫画の話をした。
趣味については何気に理解があるし会話も振ってくれる。確認はなかったけど注文もとってくれたし態度も傲慢じゃなかった。
小森さんは良い人なんだろうけど付き合えるのかと聞かれたらそれはまた別の話になる。
ましてや小森さんと触れ合うことなんてまずできないなぁ。
下がった第一印象を上げるなんてこと、たったの一時間でできるはずがない。そんなに簡単なことではないのだ。
悲しいことに気付いた時には話を聞いていた私の身体は若干引き気味となっていた。
◆ ◆ ◆
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる