恋とはどんなものかしら

東雲さき

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凛子の婚活

7 凛子、お茶する⑵

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10分もしないうちに小森さんはやってきた。
白のポロシャツと黒のチノパン姿で。

「こんにちは!お待たせしてすみません。待ちました?」

若干声を落として聞いてきた。

「こんにちは。さっき着いたばかりです」

うん?
先週のお見合いと同じ姿のような気が…いやいや気のせい、先週は確か黒のポロシャツだったはず。

私はけっこう変なところを覚えていたりする。

カウンター席に座った小森さんにメニューを渡す。
ちなみに私はとっくに注文するものを決めている。お店が売りにしているバスクチーズケーキとコーヒーにした。実はホームページを見ている時から気になっていたのだ。

「凛子さんはもう決めました?」

メニューから顔を上げてこちらを見てくる。

「はい。ケーキセットにします。バスクチーズケーキと飲み物はコーヒーにしようかと」

「いいですね~、それじゃあ俺もそれにします」

そう言って店主に注文する小森さん。

「ケーキセットでバスクチーズケーキとアイスコーヒーを二つずつお願いします」

「かしこまりました」

笑顔で注文を受けた店主は下がりケーキの用意を始めた。

進んで注文してくれるあたり気遣いができてよいのかもしれないが、私は内心自分で言えばよかったかもと残念に思った。
だってアイスコーヒーよりホットコーヒーが飲みたい気分だったから。
てっきりこちらに聞いてくれるものかと思ったけれどそうではなかったらしい。

そして本当だったらここで「この一週間いかだお過ごしでしたか?」みたいな流れで聞いていきたいんだけど、毎日何かと質問攻めだったから深堀されかねない。
とりあえず深堀される前にこちらから仕事の話題を振ってみる。

「今週は研修に行かれていたんですよね?慣れない部署はどうでしたか?」

本来は事務仕事がメインの雑用係だと自虐していたが、他の部署で研修をすることになっていると言っていた。

「立ち仕事はさすがに疲れますね!夕方になると脚がパンパンです」

そして具体的な仕事内容を説明された。
一方的ではなく時々「こういうのがあるんですけど知っていますか?」と問いかけてくれたから相槌だけで終わらずにすんだことには安心した。

「お待たせしました、どうぞ」

ケーキとアイスコーヒーが眼の前に置かれると、そのどっしりとした見た目としっとりとした断面に私は目を輝かせた。

「わぁ、美味しそうですね」

今日来て良かったと思えるのはこの店のケーキを食べれることかな。

一時間かけて仕事の話、愛猫の話、最近見た映画の話、好きな漫画の話をした。

趣味については何気に理解があるし会話も振ってくれる。確認はなかったけど注文もとってくれたし態度も傲慢じゃなかった。
小森さんは良い人なんだろうけど付き合えるのかと聞かれたらそれはまた別の話になる。

ましてや小森さんと触れ合うことなんてまずできないなぁ。
下がった第一印象を上げるなんてこと、たったの一時間でできるはずがない。そんなに簡単なことではないのだ。

悲しいことに気付いた時には話を聞いていた私の身体は若干引き気味となっていた。


 ◆ ◆ ◆


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