55 / 72
愛の代理人①
しおりを挟むコールボーイを生業にしてから、もうすぐ2年になる。
僕は基本的に、お客様から指名を受けて仕事をする。これまで指名が途切れずにやってこられたことには、素直に感謝したい。
特に、常連の方々は毎回、決して安くはない代金を支払ってくれるのだ。とても足を向けて寝られない。お客様と接する時は、もちろん全身全霊で愛して差し上げる。
それが僕の仕事だし、求められているすべてだ。その意味では、〈愛の代理人〉と言い方もできる。
東京が梅雨入りをした日、僕は初めてのお客様から指名を受けた。僕が求められたのは、まさに〈愛の代理人〉だった。
美紗緒さんとは、京成上野駅の正面口で待ち合わせた。
僕はいつも10分前には、待ち合わせ場所に到着する。お客様を待たせたことは一度もない。でも、僕が着いた時には、すでに美紗緒さんが待っていた。
「私、相手の方を待たせることが苦手なんです」
はにかみながら言う彼女に、僕は好感をもった。ココナさんからは、30代前半の主婦、真面目で控えめな性格、と聞いている。
さらに、育ちの良さもうかがえる。薄い水色のワンピースが清楚な佇まいによく似合っていた。〈貞淑な若妻〉という言葉がぴったりで、男遊びをするようにはとても見えない。
僕は彼女の腰に手を回し、さりげなくスキンシップをとる。ビクンと反応したけれど、嫌がる素振りはない。僕たちはそのまま、ワンルームマンションに向かった。
以前、説明したと思うけれど、『ナイトジャック』の所有する物件だ。ラブホテルに抵抗感のあるお客様のために使っている。
フローリングの上にあるものは、キングサイズのベッドとクローゼットのみ。モデルルームのように、生活感のまったくない部屋だ。
ただセックスをするために使われる空間。もしかしたら、生々しい欲望の残滓(ざんし)が壁や床にへばりついているかもしれない。
美紗緒さんは明らかに緊張していた。ベッドに腰を下ろし、飲み物を口にしても、顔は強張ったままだ。それでも、たわいない世間話をしていると、幾分表情がやわらいできた。
僕は美紗緒さんの髪をなでながら、優しく微笑みかける。
「……男性の方に触られたの、久し振りです」呟くように言った。
おでこをくっつくほど間近で、僕は彼女を見つめる。
「今日はリラックスして、たっぷり楽しんでくださいね」
まず、さりげなく、軽く唇を交わす。二度目は少し長く。三度目はさらに長く。
美紗緒さんの頬に血が上る。
「キスをしたのも、久し振り……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
麗しき未亡人
石田空
現代文学
地方都市の市議の秘書の仕事は慌ただしい。市議の秘書を務めている康隆は、市民の冠婚葬祭をチェックしてはいつも市議代行として出かけている。
そんな中、葬式に参加していて光恵と毎回出会うことに気付く……。
他サイトにも掲載しております。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる