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逝けない女⑨
しおりを挟むダブルベッドに腰をかけて、彼女はうつむいている。照明が暗く絞られているせいで、彼女の表情はうかがえない。
明るい口調で話しかけても、返ってくるのは沈黙だけ。緊張しているのだろうか?
僕は彼女にじり寄り、耳元に顔を寄せる。
「今日は楽しんでくださいね。どのような感じがお好みですか?」
少し間があって、ポツリと呟いた。
「……普通の男と、身体で対話したい」
「対話、ですか? それはどういう……」
言い終わる前に強い力で引き寄せられ、あっという間にベッドの上に押し倒された。
仰向けになった僕の腰に、マリコさんは馬乗りになる。僕を見下ろしながら、バスローブを脱ぎ去った。筋肉でつくられた水蜜桃が露わになる。きれいに腹筋が割れており、ほどよく脂肪がのっていた。
ショーツはつけていない。野生の獣のような、よく鍛え抜かれた身体だ。僕は素直な気持ちを口にした。
「マリコさん、とても、きれいですね」
「……」
彼女は戸惑いの表情を浮かべて、僕の大胸筋や二の腕をなでさする。身体で対話する、とはどういう意味なのか? とりあえず、身を任せた方がよさそうだ。
「好きに扱っていいですよ、僕の身体」
マリコさんは無言で上体を倒してきて、強引に僕の唇を奪った。
二匹の獣のように、僕たちはもつれ合った。肉の密度が高い者同士だけど、肌をすり合わせていると、意外とよく馴染んだ。
マリコさんの唇が、僕の身体を這いまわる。僕の唇から頬、首筋、肩、胸へと移動する。もちろん、チェリーも吸われた。快感で思わず、身体がうねってしまう。
マリコさんは寝技をかけるように、僕をベッドに押さえつけてきた。跳ね返そうとしても、全然身動きがとれない。その状況で、僕のバナナを弄ばれてしまう。
「マリコさん、責めるだけでいいんですか?」
「……」
「あんたにも気持ちよくなってほしいです」
「……最初に言っておく。私、逝ったことがないんだ」
恥ずかしそうに告白する彼女を、僕は可愛いらしいと思った。
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