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悦楽のアクトレス⑥
しおりを挟むリビングのテーブルに並べられたのは、ゴーヤーチャンプルー、タコライス、コラーゲンたっぷりなてびち(豚足の煮込み)、とろとろのラフテー(豚の角煮)、デザートはサーターアンダギー……。
一糸まとわずに口元を油で光らせた食事は、ある意味、とても官能的だった。
メイさんも同じことを感じていたらしい。食事の途中なのに、僕ににじり寄ってきて、キスと愛撫をせがまれた。
もちろん、リクエストに応じる。メイさんがラフテーの汁を胸にこぼしたので、舌先で丁寧に舐めとって差し上げた。
「もう10年以上前の話になるけれど、Nさんってさ、私の初めての男なんだよね」独り言のように、メイさんは語り始めた。「高校生になったばかりでさ。白馬の王子様を待ってはいなかったけど、深夜の楽屋で無理やり、なぁんて最悪なのは想像もしていなかった」
メイさんによると、当時20代前半のNさんは初めてのドラマ主演だったという。初回の視聴率が最悪だったこともあり、現場はピリピリした極限状態にあったらしい。
そんなドラマに新人のメイさんはゲスト出演のチャンスを得た。素人同然の上に現場の緊張感が相まって、NGを連発したらしい。
それでも何とか収録を終えて、Nさんにお詫びの挨拶に行った時、頭ごなしに怒られて無理やり……、というのが事の顛末らしい。
「それも事前にマネージャー同士で話がついていたんだって。後で知らされて愕然としたよ。とんでもない世界に迷い込んじゃった、ってね」
その後も時折、Nさんから定期的に呼び出され、関係を結んできたという。事務所からの暗黙の命令だったし、弱者であるメイさんに拒否権はない。
引き換えに、Nさんがらみの仕事を回してもらえたというから、いびつな形のバーターだったのだろう。
「弱肉強食の芸能界にはよくある話」と、メイさんは笑う。
痛々しくて、僕は何も言えない。水蜜桃を優しく愛撫することで言葉に変えた。
メイさんは無理やり納得しようとしているけど、当然、承服しているわけではない。その証が僕の前で見せたNさんへの反発であり、「フニャ××」云々と言い捨てた嘲笑だろう。
「シュウくんが初めての男だったらよかった」
溜め息まじりの呟きを耳にして、ふと思いついたことがある。
「よかったら、やり直しませんか?」
「え?」
小首を傾げたメイさんに、僕は優しく微笑みかける。
「メイさんの初めてを上書きしてしまいましょう」
「……シュウくんとのセックスで?」
「はい、僕でよろしければ」
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