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クールでジューシィ⑨
しおりを挟む優しく、優しく、時折、雄々しくダイナミックに。僕は全身全霊で山本さんを愛してさしあげる。
「サキさん、とてもセクシーです」
「ああ、シュウくん」
僕たちは互いの身体を確かめ合い、共に快楽の大波に翻弄される。山本さんはたちまち、エクスタシーに上り詰めた。
でも、僕は動きを止めない。ゆるやかに動き続け、彼女が落ち着いてくると、力強く責め立てる。
「シュウくん、すごい。私、こんなの……、初めて」
「たっぷり楽しんでください。いくらでもリクエストに応じますよ」
「……リクエストって?」
「例えば、ここをもっと触ってほしいとか、こんな体位で愛してほしいとか、そういうことです」
山本さんは少し考えて、首を横に振った。
「ううん、このままで……、このままがいい」
正常位は互いの顔がよく見えるし、基本中の基本の体位だ。時折、脚を高々と抱え上げたり、上半身を密着させたりして、僕たちは情熱的に愛し合った。
互いの汗と体液にまみれて、いつしか、二人とも獣のようになってみた。
何度も繰り返しエクスタシーを味わってもらい、頃合いを見て僕はフィニッシュした。
心地よい疲れとともに、全身全霊で女性を愛した後の充実感、達成感に満たされる。
「頭の中が真っ白になったみたい。本当にこんなの初めて」
しみじみとした口調でいっていただいた。
「ありがとうございます。楽しんでもらえて、僕もうれしいです」
「カズくんとは全然タイプがちがうのに、本当に不思議ね。あ、別に二人を比べているわけじゃないのよ」
「ええ、よくわかっています」
どっちが気持ちいいとか、どっちがテクニシャンだとか、他人と比べることの無意味さはよく知っている。ただ、それでも、訊いておきたかった。
「もう一度、カズに会ってみたいですか?」
「ううん、少し前まではそうだったけど……。今のカズくんは、私の知っているカズくんではないような気がする」
「その気持ち、何となくわかります」
正月に会った時、カズは荒んだ雰囲気をまとっていた。すっかり変わったカズに幻滅してしまう、というケースは悲劇だろう。
「カズは世渡り上手ですし、どこかで元気にしていると思いますよ」
何の根拠もない言い草だが、何となくそう思っていた。カズと思いがけない再会を果たすことになるとは、この時の僕は知る由もなかったのだ。
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