66 / 73
心はヌーディスト②
しおりを挟む
「まぁ、話は水掛け論になったけど、元々借金そのものがないんだから、すぐに疑いは晴れるはず。そう思っていたんだけど、当局の狙いは別にあったらしい」
「何が狙いだったんですか?」
「PCがハードディスクごと押収された。たぶん、顧客リストだと思う」
つまり、僕たちキャストのお客様名簿である。
「それって、お客さんに迷惑がかかることはないでしょうか?」
「警察が直接、一人ひとりに連絡する可能性は低いと思う。でも、『ナイトジャック』休業の件も含めて、お客様には伝えておいた方が賢明だろうね」
「わかりました。やっておきます」
僕にはもう一つ、気になることがあった。
「あの、もしかしたら、カズの件と関係があるんでしょうか?」
警察からカズの遺体確認の連絡あった時、まずココナさんに一報を入れた。お互い警察に良い印象はもっていないのに、「少し嫌な予感がする」という彼女の忠告を無視したのは、ほかならぬ僕である。
「どうだろうね。関係があるかもしれないし、ないかもしれない。確かなことは、『ナイトジャック』は警察の考え一つで吹き飛んでしまう、ということだ」
最も気になることも訊いてみる。
「逮捕とか、ないですよね」
「こんなことでシュウを逮捕していたら、全国のコールボーイが一人もいなくなるよ」
「いえ、僕のことじゃないです。ココナさんが逮捕されないか、心配なんですよ」
「はは、ありがとう。一晩ぐらいブタ箱に泊ってきてもよかったけど、こうして戻ってこられたんだ。心配は無用だよ」
ココナさんの明るい笑い声を聞くと、少し照れ臭くなった。思春期の息子が母親を思いやる気持ちに似ているかもしれない。いや、年齢的に母親は失礼か。
『キャッスル』時代にお客様の一人として知り合ったけど、『ナイトジャック』に誘っていただいてから、ココナさんにはお世話になりっぱなしである。これまで問題がなかったのは、彼女の経営力によるところが大きい。
「営業再開はいつ頃になりそうですか?」
「さぁ、今はまだ何とも言えないね。当分は休業のつもりでいてくれる? そうだ。早めの盆休みだと思って、真由莉とバカンスにでも行って来たら?」
ココナさんは僕と真由莉さんの関係を承知している。そもそも、ココナさんは吉原の元ソープ嬢であり、真由莉さんの元同僚なのだ。
ただ、真由莉さんは多忙なはずだ。休みが合えばいいけど、なかなかそうはいかない。そういえば、室内デートで中座した件をうっかり忘れていた。真由莉さんに約束した埋め合わせがまだだ。後で、連絡しておこう。(裸のプリンスⅣ「やわらかな唇」参照)
「何が狙いだったんですか?」
「PCがハードディスクごと押収された。たぶん、顧客リストだと思う」
つまり、僕たちキャストのお客様名簿である。
「それって、お客さんに迷惑がかかることはないでしょうか?」
「警察が直接、一人ひとりに連絡する可能性は低いと思う。でも、『ナイトジャック』休業の件も含めて、お客様には伝えておいた方が賢明だろうね」
「わかりました。やっておきます」
僕にはもう一つ、気になることがあった。
「あの、もしかしたら、カズの件と関係があるんでしょうか?」
警察からカズの遺体確認の連絡あった時、まずココナさんに一報を入れた。お互い警察に良い印象はもっていないのに、「少し嫌な予感がする」という彼女の忠告を無視したのは、ほかならぬ僕である。
「どうだろうね。関係があるかもしれないし、ないかもしれない。確かなことは、『ナイトジャック』は警察の考え一つで吹き飛んでしまう、ということだ」
最も気になることも訊いてみる。
「逮捕とか、ないですよね」
「こんなことでシュウを逮捕していたら、全国のコールボーイが一人もいなくなるよ」
「いえ、僕のことじゃないです。ココナさんが逮捕されないか、心配なんですよ」
「はは、ありがとう。一晩ぐらいブタ箱に泊ってきてもよかったけど、こうして戻ってこられたんだ。心配は無用だよ」
ココナさんの明るい笑い声を聞くと、少し照れ臭くなった。思春期の息子が母親を思いやる気持ちに似ているかもしれない。いや、年齢的に母親は失礼か。
『キャッスル』時代にお客様の一人として知り合ったけど、『ナイトジャック』に誘っていただいてから、ココナさんにはお世話になりっぱなしである。これまで問題がなかったのは、彼女の経営力によるところが大きい。
「営業再開はいつ頃になりそうですか?」
「さぁ、今はまだ何とも言えないね。当分は休業のつもりでいてくれる? そうだ。早めの盆休みだと思って、真由莉とバカンスにでも行って来たら?」
ココナさんは僕と真由莉さんの関係を承知している。そもそも、ココナさんは吉原の元ソープ嬢であり、真由莉さんの元同僚なのだ。
ただ、真由莉さんは多忙なはずだ。休みが合えばいいけど、なかなかそうはいかない。そういえば、室内デートで中座した件をうっかり忘れていた。真由莉さんに約束した埋め合わせがまだだ。後で、連絡しておこう。(裸のプリンスⅣ「やわらかな唇」参照)
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
麗しき未亡人
石田空
現代文学
地方都市の市議の秘書の仕事は慌ただしい。市議の秘書を務めている康隆は、市民の冠婚葬祭をチェックしてはいつも市議代行として出かけている。
そんな中、葬式に参加していて光恵と毎回出会うことに気付く……。
他サイトにも掲載しております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
先生の秘密はワインレッド
伊咲 汐恩
恋愛
大学4年生のみのりは高校の同窓会に参加した。目的は、想いを寄せていた担任の久保田先生に会う為。当時はフラれてしまったが、恋心は未だにあの時のまま。だが、ふとしたきっかけで先生の想いを知ってしまい…。
教師と生徒のドラマチックラブストーリー。
執筆開始 2025/5/28
完結 2025/5/30
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる