裸のプリンスⅢ【R18】

坂本 光陽

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コールボーイの休日①

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 仕事のスケジュールがびっしり詰まっていたのに、お客様の相次ぐキャンセルによって、当日になってポカッと空いてしまった。こんなことは珍しい。突然降ってわいた休日というわけである。

 昼下がりの空はどんよりしているが、風が涼しいのはありがたい。思い切って外出することにした。新しいスニーカーが欲しかったので、馴染みの靴専門店のある上野に向かう。

 のんびり歩いていると、元気な子供たちとすれ違った。夏休みが始まったせいだろう。親子連れの姿も多い。ああ、そうか、今日は土曜日か、と思い至る。自由業をしていると曜日感覚が失われてしまう。

 さて、あなたはサブタイトルから予想がついたかもしれない。今回の内容は、僕の休日の出来事。つまり、僕のプライベートである。

 女性は登場するけれど、『ナイトジャック』のお客様ではない。相手は行為を望んでいないのだから、無茶な行為はしない。わかりやすく言えば、アバンギャルドなセックスはしない。

 ま、そんなことはどうでもいい。話を戻そう。夏休みの土曜日ということで、上野駅周辺は混雑が予想される。昔から、人混みはどうも苦手だ。

 僕は回れ右をして、最寄り駅である東京メトロ・根津駅に向かった。馴染みの靴専門店はチェーン店であり、北千住の駅ビルにも入っている。千代田線に乗り込めば、目指す店舗まで30分もかからない。

 けど、こういう気まぐれが人の出会いを生むのだから、人生は面白い。

 北千住ルミネのエレベーターで、見覚えのある女性と乗り合わせた。全身から若さを発散している美少女だった。艶やかな長い黒髪とぷっくりした唇が印象的だ。ミニのワンピースからきれいな脚が伸びている。

 僕と眼が合って、にっこり微笑んだ。学生時代の同級生かな、と考えているうちに、靴専門店のある階に到着した。美少女は僕と一緒に降りた。

「シュウくん、久し振り」

 本当は源氏名のシュウではなく本名で呼ばれたのだが、混乱を避けるため、ここはシュウで統一する。とりあえず、格好をつけていても仕方がない。相手の正体を知ることが先決だ。

「すいません、どちら様でしたっけ?」
「ひどーい。シュウくん、忘れちゃったの?」

「高校の同級生だっけ? それとも中学?」
「ブーっ。ちがいます。ほら、足立のアパートで、上の階にいた……」

「ああ、わかった。チィちゃんか。森脇千鶴」
「やっとわかった? 時間がかかりすぎ」

 口角を上げてニコッと笑うと、とたんに幼く見えた。


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