異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト

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第6話

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「えっと、ここが商人ギルドか……」
 あの後、何度か迷いながらもなんとか商人ギルドに辿り着くことができた。
 ただでさえ見知らぬ街なのに、なぜかこの辺りは似たような建物が多すぎる気がする。
 それでも何とか目的のギルドまでたどり着くことができて、俺はホッと胸を撫でおろした。
「それにしても、なんだかイメージと違うなぁ」
 なんとなく立派な建物を予想していたんだけど、着いてみればそこは巨大な倉庫のような見た目をしていた。
 飾り気のない外装に申し訳程度の緑が添えてあって、目立つところには天秤をモチーフにした看板が掲げてある。
 木製の扉を抜けて中に入ると、どうやら酒場と併設されているらしく大勢の人の姿があった。
 昼間から大の大人が酒を酌み交わしている姿を見ると、なんだか一気に異世界って感じがしてくる。
 前の世界に居た頃は酒を飲む時間すらなかったから、なんだか少し羨ましかったりする。
 そんな彼らの姿を横目で見ながら、俺は正面に見えるカウンターまで近づいていった。
「こんにちは、商人ギルドへようこそ。今日はどのようなご用件でしょうか?」
 俺の接近に気付いて、カウンターの中に居た女性がニッコリ笑顔で声をかけてくる。
「えっと、実はこれからこの街で商売を始めようと思って……」
「なるほど、ギルド登録をご希望ですね。では、まずはお名前をお聞きしてよろしいですか?」
「三上彰です」
「ミカミ・アキラさん、ですね。では次に、少し審査させていただきますのでこの水晶に触れてください」
 そう言ってカウンターに出されたのは、手のひらサイズの水晶玉だった。
「これは?」
「身分証を発行するために、過去に犯罪歴がないかを調べる魔道具です」
「なるほど、取引相手が犯罪者じゃ困りますもんね」
 特にやましいことのない俺は、迷うことなく水晶に手をかざす。
 しばらく触れても特に変化はなく、その様子を見て女性は小さく頷いた。
 どうやら、当たり前だけど俺に犯罪歴はなかったみたいだ。
「はい、確認ができました。では、ギルドカードを発行しますので少々お待ちください」
 そのまま女性はカウンターの裏へ去っていき、しばらくして一枚のカードを持って帰ってくる。
「こちらが、ミカミさんのギルドカードになります。再発行には費用が掛かりますので、なくさないように気を付けてくださいね」
「ありがとう」
 あっさり登録が終わって、カードを受け取ると女性は次にいくつかの書類を取り出した。
「では最後に、今後ご商売をされるうえでの注意点などをご説明しますね」
 差し出された資料を受け取ると、そこには細かい字で色々と書き込まれていた。
「ギルドの許可のもとで商売をする場合、年間の売り上げから諸経費を除いた利益の1割をギルドに納めていただくことになります。売り上げはギルドカードに記録されるため、不正はできませんよ」
「へぇ、記録されるなら計算も楽そうだ」
「ふふ、そうですね。次に、ギルドからの買取依頼についてご説明します。特に商売を始めたての方には大事な話ですから、ちゃんと聞いてくださいね」
 そう前置きして、女性は説明を続ける。
「ギルドでは定期的に、指定した物品を買い取る依頼を出しています。物品を持ってきていただければ、相場の8割程度で買い取らせていただきます」
「8割? それじゃ、普通に売った方が儲かるんじゃないか?」
「初めての方は、そう感じるかもしれませんね。ですが、商売を始めたばかりの方ではまだ販路が確立されていない場合もありますから。そういった場合でも、ギルドを介せば販売することが可能です。また、ギルド買取りの分での1割納付は納めた扱いとして免除されます」
「なるほど、そういうことか。確かに、誰も買ってくれないよりはマシかもしれないな」
「もちろん、依頼を受けるかは自由ですから。最初から店舗を構えている方なんかは、一度も利用しないこともあります。ちなみにミカミさんは、店舗を構えるご予定は?」
「今のところないな。というより、そんな余裕もない」
 なんなら、今後の生活費さえ急いで稼がないといけないくらいだ。
 それでも、いつかは店舗も構えてみたいものだ。
「ではやっぱり、最初は買取依頼を利用するのがオススメですね。もしも店舗をお探しの時は、ギルドが色々と相談に乗りますので」
「至れり尽くせりだな。ありがとう」
「いえいえ、これも仕事ですから。説明は以上ですが、何か他に質問はありますか?」
 そう言われても、すぐに思いつくようなものではない。
 あ、そういえば……。
「お姉さんの名前は、なんて言うんですか?」
「あぁ、そういえば名乗っていませんでしたね。私はレインと言います。以後、よろしくお願いしますね」
「レインさんか。こちらこそ、これから色々とお世話になると思うのでよろしくお願いします」
 カウンター越しに頭を下げ合って、俺たちはどちらからともなく笑い合う。
「それじゃ、いつまでもここを占領しているわけにもいかないからそろそろ行くよ。また近いうちに来ると思うけど」
「はい、ではお待ちしていますね」
 笑顔で手を振ってくれるレインさんに別れを告げて、俺は商人ギルドを後にする。
 さて、これで俺もこれから商人の仲間入りだ。
 この世界では、絶対に金持ちになってやるからな。
 そんな決意を胸に秘めて、俺は商人としての第一歩を踏み出したのだった。

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