【完結】AnimaRoom

桐生千種

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ミヨちゃんは居候

4.気まぐれ!! ネコ兄さん

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 戻るなり、探さんが玄関まですっ飛んで来た。

「お帰りミヨちゃん! 大丈夫だった? ケン兄になにかされなかった?」

 本当に、ここに来たときとキャラが違い過ぎて……。

 薬の力、恐るべし……。

「ごめんね。お風呂から出たばっかりだったのに。湯冷めしてない? もう1回お風呂入る?」

 本当に、本当に、キャラが違い過ぎるよ……。

「大丈夫ですよ。居候の身なので、できることはお手伝いします」

 できること、なんて限られているとは思うけど……。

 ちらりと、ケン君が視界に入った。

 お座りして、グッと上を向いて首元をさらけ出している。

 人間として見ると微妙な様相だけど、ワンコだと思えばお利口さん。

「ちゃんと待ってて偉いねー」

 希望通り、リードを外してあげる。

「俺偉い? 俺偉い?」

 目をキラキラさせて、こっちを見てくる。

 ――これはワンコ。これはワンコ。

「偉い偉い」

 よしよし、と頭を撫でる。

 さっきのこともあるから慎重に。

 でも、今度は抱き付かれることもなく、ケン君は家の中へと入って行った。

「……俺は?」

 ――はい?

「俺も撫でて?」

 なに言ってんのこの人(探さん)。

 私、なにやってんだろ……。

 結局、なぜか大の男たる探さんの頭をひとしきりに撫で、今はリビングらしきところの前に私はいる。

 ダイニングテーブルらしきものとコタツと、なぜかクリスマスツリーと笹の葉に短冊がかかっていて……。

 お化けカボチャまでおいてある。

 片付けができてないのか、しないのか、季節感が全然ない。

「おい」

「はい!!」

 うしろから声をかけられた。

「お前、邪魔。廊下の真ん中に突っ立ってんなよな」

「はい、ごめんなさい!」

 さっと避けると、その人はさっさと部屋の中に入って行く。

 長いしっぽに、ネコミミ。

 この人はネコのニィ君。

 心なしか、動きがしなやかに見える。

 ネコだから?

「……なに? お前。俺を撫でたいの?」

「え……」

 いやいやいやいや。

 普通のニャンコならまだしも、今のキミはネコの耳としっぽが生えた人間!!

 そんな人間の頭を撫でたいとか、変態か私は!!

「そうだよな。俺を見たら撫でたくなるよな。この毛並み、そんじょそこらのネコとはツヤが違う」

 ――毛並み、どこ!?

「けど、お前には触らせてやらない」

 プイッと背を向けて、やっぱりニャンコ。

 身軽に本棚の上に登ってしまった。

 ――なんか……、嫌な奴!!

 いいですよーっだ。

 人間の頭を撫でても楽しくないし。

 本棚に世界のネコ全集を見つけたので、それを読むことにする。

 やっぱり、ネコはこうでなくっちゃ。

 このモフモフな感じがたまらなく可愛いっ!!

 このスリムなネコも美人さんっ!!

 ――ん?

 夢中になってニャンコを眺めていると、人型ニャンコ(ニィ君)が近づいて来た。

 ――ちょっ、近っ!!

 グイッと真正面から顔を近づけて来る。

 ……これじゃあ、読めない。

 それに少しむすっとしてる気が……?

「なに?」

 顔をあげて声をかけると、その表情は不機嫌を隠そうともせずにムッとしていた。

「……撫でろよ」

「へ?」

「他のヤツなんて見てないで、俺を撫でろよ」

 ――えーっと……。

 撫でてほしかった……?

 恐る恐る手を伸ばして、頭を撫でてみると、しっぽがゆらゆらと揺れた。

 表情にはあんまり変化はないけど、喜ばれている、みたい……?

「えっ」

 頭を撫でていると、突然、ニィ君が机に乗り上げて、こっちに来た。

「ひゃあっ」

 身体を倒されて、抱きかかえられるような体制になる。

「ちょっと、ニィ君!?」

「うるさい。俺は寝るの」

 ――寝るのはわかった! だから放して!!

 いくらニャンコでも、今はほとんど人間の男の子なんだからぁ!!!

 誰か、助けてっ!!
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