【完結】AnimaRoom

桐生千種

文字の大きさ
8 / 15
HAPPY HALLOWEEN

1.犬飼さん家

しおりを挟む
 はじめましての方も、そうでない方もこんにちは。

 犬飼ミヨ(いぬかいみよ)です。

 15歳の高校1年生。

 高校進学と同時に、高校の近くに住んでいる親戚のお兄さん「犬飼探(いぬかいさぐる)さん」の家でお世話になることになりました。

 探さんは、親戚中でも「変人」って言われてる白衣が私服の自称科学者。

 自分で「科学者」って言うだけあって、本当に科学者っぽいことはしている。

 探さんの研究室には、危ない薬品がおいてあるし、キッチンの冷蔵庫も油断できない。

 たまに、どこにでも売ってそうなジュースの瓶を薬のようきにしてたりするから、うっかり飲んだらなにが起こるかわかったものじゃない。

 実際、探さんの研究の被害者というか、ついうっかりでまさかの事態に陥った人……人? が何人も……人? ……もいるんです。

 かく言う私もその1人で。

 そのおかげで、ここに住みやすくはなったけど……。

 そう! この家に初めて来たときの探さんは前髪で目が見えないし、全然喋ってくれないし、すっごく怖かったんです!!

 家に来て早々、「勝手にして」ってご飯もお風呂もどうぞご自由に、だったし。

 「ヤバイのにはラベルが貼ってある」の言葉を信じてラベルのない瓶のジュースを飲んだ結果。

 私は見事に被害者です。

 そのおかげで、探さんは話をしてくれるようにはなったけど。

 怖い探さんと無言の共同生活を送らなくてすんでいるわけだけど。

「ミーヨ!! なにしてるんだ? ボール遊びしようぜ! ボール遊び! 投げてくれよ!」

 ボールを抱えて期待の眼差しでこっちを見る、人間の形をした男の子、イヌミミつき。

 後ろを向けば、クルンとした柴犬のしっぽもついている。

 彼は、柴犬のケン。

 通称、ケン兄さん。

 冗談とかではなく、ケン兄さんは元は本物の柴犬です。

 彼も、探さんお被害者……被害犬。

 しかも、ケン兄さんタイプの被害者……被害動物は他にもいて。

「なに言ってんだよ、ミヨは俺に構いたいんだよ。ミヨがしたいって言うなら、じゃれてやってもいいんだぜ?」

 「あくまでも私が言うからしかたなく……」の体を通したいネコ兄さん。

 ネコミミ、ネコしっぽの本名ニィさんの顏には、「猫じゃらししたい」って書いてある。

 言わずもがな、ネコ兄さんはもとはネコです。

 自称は世界で1番美しい毛並みの持ち主。

「ダーメ!! ミヨちゃんは、今日は僕をなでなでする日なの!!」

 そんな日にはしてません。

 私の心境なんてお構いなしに、頭を擦りつけてくるウサニさん。

 この家で1番大きな身体をしていながら、1番甘えん坊が度を超えている。

 ウサミミが意外と触り心地よかったりする、もとウサギ。

「ねぇミヨ、今日のスカートはどっちがいいかしら? やっぱり秋っぽくこっち? でも私としてはこっちの気分なのよね」

 スカートを2着抱える赤毛の美人さん。

 モフモフの髪から見えるクルンなツノ。

 もとはヒツジのメェ子さん。

 オシャレなお姉さんって感じ、だけど男の子なんだよね……。

 それを知ったときの衝撃たるや……。

 人の姿に似合ってる名前ではあるけども。

 ちなみに、あの赤毛は染色されたもので、メェ子さんの美意識の賜物。

 白い髪を想像してみたけど、見慣れたせいか赤の方がしっくりくる。

 この家にいる動物たちは以上です。

 どうして彼らが人間の姿をしているのかというと……。

 探さん曰く、「事故」だそうです。

 本当は自分が飲むつもりで、動物と意思疎通ができるようになる薬を作っていたそうです。

 それを、彼らが飲んだら人間の姿になりました、と。

 ホント、なにそのふぁんたじー。

 そして、その摩訶不思議なふぁんたじーはうすに居候中の私はと言うと……。

「ミヨちゃん、ミヨちゃん」

 部屋を訪れたこの家の主、探さん。

 最初、この家に来たときからは想像もできないくらいフレンドリーになりました。

 それも、探さんが作ったという『動物に好かれる薬』というのをうっかり私が飲んじゃったせいで。

 こうしてしっかり、この家の動物たち、イヌ、ネコ、ウサギ、ヒツジに懐いてもらってその効力は存分に発揮されているわけだけど……。

 その「動物」の中には「人間」も含まれているわけで。

 しっかり人間の探さんにも好いてもらっています。

 ときどき、ちょっとおかしけど。

「これ、着てよ」

 訂正。

 基本、いつもどこかおかしいです。

 探さんが見せてきたのは、ぴらっぴらっした黒いワンピース。

 小さい子、例えば幼稚園に通っているような、そんな女の子が着るような、変身セットを彷彿とさせるような、魔女のコスプレ衣装。

 大型量販店とかに売っているようなやつ。

 ご丁寧に、三角帽子に杖とマントつき。

「……イヤです」

 私は「NO」と言える日本人。

「なんで!?」

 そんなショッキングな顔をしないでください。

「せっかく……ミヨちゃんのために用意したのに……、ミヨちゃんのために……みんなの分も用意したのに……」

「あら、なぁにこれ、いいじゃない!」

 メェ子さんが、探さんが持って来た衣装に興味を示した。

「それはメェ子の分だよ……。でも、ミヨちゃんが着てくれないなら意味ないよ……。片付けるね……」

 あ、これは、嫌な予感。

「ミヨ!!」

 メェ子さんが、怖い目してる。

「ミヨが着ないと、私が着れないじゃない。早く着替えて来てちょうだい」

 メェ子さん、目が本気だ……。

「着てくれるのっ!?」

 探さんの目が輝いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...