【完結】AnimaRoom

桐生千種

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HAPPY HALLOWEEN

8.みんなでおやつタイム

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 探さんの、「いたずらがしたい」というわけのわからない願望から始まった本日のHALLOWEENと催しは、強制終了となりました。

 現在、おやつタイムなうです。

「ミヨちゃん、あーん」

 ウサニさんが食べさせろと催促してくる。

 仕方ないので、マシュマロを1つ放り込んだ。

 それにしても、私はいつになったらこの衣装を着替えられるんでしょうか。

 さっき着替えようとしたら、ウサニさんにごねられた……。

「できたわー!!」

 メェ子さんが、ハロウィン衣装にヘッドドレスをつけてやって来ました。

 やっぱり、美人さんはお得。

 男の子だけど。

 それに、デザインとお裁縫までできるなんて。

 少しでいいから、その才能を分けてほしいくらい。

「どうかしら」

 ルンルンしているメェ子さん。

「メェ子、頭になんかついてるぞ。取ってやるよ」

「つけてんのよ!! 取るんじゃないわよ!!」

 ケン兄さんとメェ子さんの攻防戦が始まる。

「あんたはじゃれるんじゃないわよ!!」

 ヘッドドレスのリボンがひらひらしてるから、ネコ兄さんはじゃれたくなっちゃうんだよね。

「ミヨちゃん、明日もおんなじにしようねー」

 ウサニさんは、まったくの興味なし。

 しかも、明日も服をそろえたいという要求がきた。

 どうしよう……。

「あたしは、ミヨに聞いてるの!! どう!?」

 メェ子さんの勢いと真剣なまなざしに圧倒される。

「かわいいです! 素敵です!」

「やっぱりー! ミヨはわかってるわねー! あたしも一緒にいただきましょ」

 メェ子さんは上機嫌でテーブルについた。

「それにしてもミヨ、こんなに食べたら太るわよ?」

「1人で食べてるわけじゃないですよ!? みんなで食べてるんですよ!?」

 誤解しないで!!

「ふーん」

 興味なさそうにメェ子さんが相槌を打つ。

 信じて!!

「チョコレートはダメだよ、僕とミヨちゃんだけ」

 探さんが言う。

 チョコレートの味を覚えさせないように、気をつけているらしい。

 今は人間の姿だけど、いつか動物に戻ったとき、チョコレートを食べたら中毒を起こしちゃうから。

 でも、それなら用意しなきゃよかったのに……。

 お菓子なら他にもいっぱいあるんだから。

「ミヨちゃん、あーんして、あーん」

 ウサニさんが、また食べさせろと催促してくる。

「はい」

 今度は、キャンディにした。

 しばらく舐めててくれるはず。

「ミヨちゃん」

 探さんからひと言。

「僕にもあーん」

「ご自分でどうぞ」

「えー、ミヨちゃんひどい。ウサニにはしてあげるのに、僕にはしてくれないの? 差別だ! 依怙贔屓反対!」

 何言ってんの、この26歳自称科学者。

「ケン兄、ボスがあーんしてって言ってるよ」

「おう! ボスの頼みなら聞いてやるぜ!」

 さすがワンコは忠実ですね。

「違う!! そうじゃない!!」

 探さんは言うけど、ケン兄さんは本気だ。

「ほら、ボス。口開けろよ。あーんしてほしいんだろ?」

「あぐっ…!!」

 ケン兄さんにほぼ無理矢理、若干乱暴にミニタルトを突っ込まれた探さんは、仕方なくミニタルトを咀嚼する。

 ケン兄さんが、褒めてと言わんばかりに待機しているのが、面白かったり。

 探さんが、頭を撫でると、しっぽをブンブン振って第2弾を投入しようとしている。

「もういいから!!」

 必死に止める探さん。

 しょぼんと耳としっぽが垂れてしまったケン兄さんのために、ビスケットを投げてやる。

「ケン兄」

 呼び掛けて、ぽいと投げるとパクリと口でキャッチ。

「ぐっじょぶ、ケン兄さん」

「わんっ」

 本当は、人間としてはお行儀悪いけど、嬉しそうだし、いいよね?

 探さんが、じっとこっちを見てるけど。

 その目は、私の行動を咎めるものではなく。

「やりませんよ?」

 自分にも、という催促なわけで、言われる前に断るとあからさまに落ち込んだ。

「俺にはしなくていいのかよ」

 ネコ兄さんが、じーっと見てくる。

 あーん、してほしいんだね。

「ネコ兄さん、あーんして?」

 ビスケットを口元まで持って行くと、じーっと見つめて、そして笑う。

 仕方ないから食べてやるよ、みたいなニュアンス。

 パクリとビスケットを食べて、嬉しそうにしっぽが揺れる。

「僕は?」

「ご自分でどうぞ」

「ミヨちゃんが冷たい……」

 しょぼんと、探さんが落ち込むけど、さすがに、ワンコでもなく、ニャンコでもなく、ウサギでもヒツジでもない、ただの人間の親戚のお兄さんに「あーん」するのはちょっと、ね……?

 そこで、チラリとメェ子さんを見る。

 メェ子さんには、そう言う類の催促されたことがない。

「なによ。あたしはいいわよ。自分で食べるもの。せっかく自由に動かせる手があるんだから、使わないなんてもったいないじゃない」

 パクリと、自分でミニタルトをつまんで食べている。

 確かに、ヒツジの手と比べたら、できることは格段に多くなっているもんね。

 ――お母さん。

 今日はみんなでハロウィンをしました。

 みんなが誰かってことは、お母さんには言えないけど、みんないいお友達です。

 探さんも相変わらずで、かなり変わった人だけど、毎日が楽しいです。

 毎日楽しく過ごしてます。

 びっくりするようなことが起こるけど、今日も探さん家は平和です。

 *** AnimaRoom 終 ***
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