ゾンビばばぁとその息子

容疑 傷口

家に戻り、しばらくして…

あぁ痛い！
誠はひどく顔をしかめている。
見せて
真由美が誠のふくらはぎの包帯を外してみると…

うわっひどい
赤黒く腫れ上がり、表面はうんだように濡れていた。

大丈夫？
病院に行く？

あぁそうしようかな
誠の顔はひどく青ざめていた。
とりあえず、痛み止め飲む？
これしかないけど
真由美が頭痛薬を出して来て、誠はそれを飲んで、しばらく頭を抱えていた。
うんちょっとましになった。

その時、玄関のチャイムが鳴った。
誰かな？今ごろ
真由美が出てみると、中年男性と若い男性。
警察のもんや
警察手帳を見せて言った。
2人は私服だった。
刑事のようだ。

あ、あの…
ご苦労さまです…

いかにもって感じの強面の中年の刑事が、ちょっと聞きたいことがありましてね、と言う。

悪い予感しかしない。

旦那さんもいらっしゃいますね
お母様はお戻りになりましたか
いえ、まだ
昨日行方不明者届けを出されましたね
はい…
お2人とも署までご同行願えますか？
え？今からですか？
事情聴取させていただきたいんでね。

な、なんで？
通報がありましてね。
あなたがた御夫婦と、お母様が大声で言い争ってると…
隣の人から聞いたんですか？
いえ、お隣りさんではなくて、前の道を通りかかった人ですがね

そりゃそうだろう、と誠は思った。
両隣りはばあさんのことをよく知ってる。
ばあさんの耳が遠くて、声がかん高くて大きいことも。
呆けてしまってから、どんなに息子夫婦を困らせてるかも。

なおも刑事は続けた。
お母様は、朝から何も食べてへんと言ってたとか…
で、なんでいじめるんやと泣き叫んでたらしいですね？

え？ま、まさか、泣き叫ぶなんて…
誠は、説明しようとしたけど、遮って刑事は続けた。
汚れた服でおばあさんが夜中に1人で歩いてるのも見たらしいですよ

それは…
真由美は弁明しようとしたけど、すぐにはうまく説明出来そうもなかった。

ともかくね、あんた方には虐待の容疑がかけられてるんですよ

そうして2人は警察に連れて行かれた。


　　続く…