うちの悪役令息が追放されたので、今日から共闘して一発逆転狙うことにしました

椿谷あずる

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2.この世界に悪人が一人だけとは限らない

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「いやー今日も結構な人が集まってることで」

 きらびやかなドレスや宝石を身に付けたお嬢様やお坊ちゃま、旦那様にご婦人といった、いかにも金持ちを主張している人達がパーティフロアにひしめき合っている。ここにいる人だけで総額おいくらなんだろう。

「またサボりですか。ルセリナさん」

 げ、この声は。

「どうせまた、お客様の値踏みでもしていたんでしょう」
「や、やだなぁ。ちゃんと働いてますよ、シュタイン先輩」

 シュタイン先輩はこのお屋敷の執事である。まあ執事と言っても、彼一人しかいないわけだけど。
 私はどうもこの人が苦手だ。一見、優しそうなお兄ちゃんみたいな印象を受けるのに毒がある。

「そうですか。あ、次のパーティゲームの支度は勿論貴女メインで準備をお願いしますね」

 ほら出た、メイドいびり。自分が私よりも先に屋敷に勤めたからって、いつもこうして私がやりたいことの妨害をしてくる。ちなみに今日やりたいことは、勿論この後のパーティゲームである。

「え、いやでもアリスちゃんは出来る子なので一人でも大丈夫かと」
「まさか、まだこちらに来て日が浅い彼女一人に仕事をさせる気ですか?」
「えー、あー、うん……はい」

 だって私もゲームに参加したいし。

「ルセリナさん」
「うっ」

 笑顔なのに! 笑顔なのに痛い! 圧が怖い! パ、パワハラだ!! 

「今日はレイズ様の20歳を迎える誕生パーティですから、決して粗相は出来ないんですよ」

 いや、こっちもレイズ様の20歳を迎える誕生パーティで出されるゲーム景品は、もの凄く良いものだろうって期待してるんですよ!

「ルセリナさん」
「い、嫌で……」

「おい、シュタインはいるか?」

 こ、この声は。

「いかがいたしましたか、ご主人様」

 いかにも富豪ですよと思わせる肥満体格、似合わないちょび髭を生やした中年男性。この屋敷の主人であり私の雇用主でもあるハスター様だ。

「シュタインにちょっと相談したいことがあってな、この後のことなんだが取り込み中のようだな」
「いえ、今ちょうど要件を済ませたところです。この後のゲーム、ルセリナさんが精一杯盛り上げるとのことで、激励していたのですよ」

 ちょっと待てい! 言ってない。そんなことはひとっっっことも言ってない!

「おお、そうだったのか! 息子の記念すべき20歳を迎える祝いだ。期待しているぞ、ルセリナ」
「頑張ってくださいね。ルセリナさん」

「え、ええ。お任せくださいませ、ご主人様」

 この野郎……あとで絶対覚えとけよ。

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