うちの悪役令息が追放されたので、今日から共闘して一発逆転狙うことにしました

椿谷あずる

文字の大きさ
26 / 154

26.私というものがありながらって一度は言ってみたかった

しおりを挟む

「脈絡も無くそんな美女と抱き合うなんてどうしたんですか!?」
「馬鹿か」
「それに、私という……いえ、アリスちゃんというものがありながらなんという裏切り! 酷いっ!」
「本当に馬鹿か」

 まあさすがに後半は冗談だとして。
 馬鹿って。馬鹿はお前だ。空気を読め。どんな場面か考えろ。
 なんでメイちゃんとの心温まるほっこりエピソードが、急に謎の美女とのイチャイチャシーンになるんだよ。チャンネル間違えちゃったかなって視聴者がいたら番組表見だすぞ。大体その人何処から出した。手品か?
 どっちにしてもメイちゃんの前でそんな過激な光景は駄目だと思っ――

「あれー? お姉ちゃん」
「うん?」

 今、美女からメイちゃんの声がした気が。謎の美女(CV:メイちゃん)。
 やめてくれよ、私をお姉ちゃんと呼んでいいのはメイちゃん本人だけなんだから。声だけ同じでも却下です。

「美女ってもしかして、私のこと?」
「あーうんうん。そう君の……おぉっ!?」

 私の頭がおかしくなったらしい。

「め、め、め」

 メイちゃん!?
 くるりとこちらを振り向いて見せたその姿はどう見てもあのメイちゃんだ。それをおっきくした感じ。
 いや、待て。まだご姉妹の可能性だって否定出来ない。そうだ、きっとメイちゃんのお姉ちゃんだ。

「メイちゃんのご家族の方ですか?」
「私がメイだよ」
「ご本人」

 ちょっと何言ってるか分からないなぁ。このどう見ても私と同年代くらいのスレンダーな美女がメイちゃん。誰か攻略本か解説者を頼む。

「……」

 ですよね、レイズ様は親切に解説を加えてくれる人ではないか。

「えっーと、魔法かな?」
「あったりー」
「わーい当たったぁ……」

 別に嬉しくないなー。

「私、魔法で自分の年齢を変えられるの」

 へえ、すごいなぁ。

「だって子供の姿だとみんな油断するんだもの」

 確かにね。
 そうやって私達のような被害者を誘い込む役割を果たしていたのか。なるほど私達の馬車に子供が夜道を一人で歩いてやってきたのはこういう訳だったか。私の目の付け所、結構良かったじゃない。

「ルメール家の馬車も手に入ったし、我ながら良い仕事をしたわ」

 そう言った彼女の手元からは、一枚の紙が光を放ち空へと溶けていった。

「契約魔法も成立っと。これで馬車の所有者は私。子供の姿で所有者として契約されちゃったら面倒だもんね」
「あのオンボロ馬車がそんなに価値あるものとは思わないけど」

 魔力を補充しなければ動かない、見た目もボロボロの馬車だ。

「バッカねー。ルメール家の資産ってところに意味があるの」

 この世界の人物は私を馬鹿と呼ばなければ気が済まない呪いにでもかかっているのか。

「それを貰ったってどういう事だか分かる?」
「さっぱり」
「縁が出来たってことだろ」
「!」

 レイズ様? 
 ようやく会話に混ざってきたと思ったら。何、この意図分かってるの? 分かってないの私だけ?

 次回、メイドお役御免か。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

裏庭係の私、いつの間にか偉い人に気に入られていたようです

ルーシャオ
恋愛
宮廷メイドのエイダは、先輩メイドに頼まれ王城裏庭を掃除した——のだが、それが悪かった。「一体全体何をしているのだ! お前はクビだ!」「すみません、すみません!」なんと貴重な薬草や香木があることを知らず、草むしりや剪定をしてしまったのだ。そこへ、薬師のデ・ヴァレスの取りなしのおかげで何とか「裏庭の管理人」として首が繋がった。そこからエイダは学び始め、薬草の知識を増やしていく。その真面目さを買われて、薬師のデ・ヴァレスを通じてリュドミラ王太后に面会することに。そして、お見合いを勧められるのである。一方で、エイダを嵌めた先輩メイドたちは——?

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!

キムチ鍋
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。 だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。 「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」 そこからいろいろな人に愛されていく。 作者のキムチ鍋です! 不定期で投稿していきます‼️ 19時投稿です‼️

婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

処理中です...