49 / 154
49.忠告よりも今日の宿
しおりを挟む「それでは明日、よろしくお願いしますね、ルセリナさん」
「善処します」
数日ぶりの再会も、時間で換算すると多分ほんの少しで終わった。
後はこっちの頑張り次第。さあてどうしてくれようか。
「そうだ、最後に一つ」
「ん?」
何だろう、アドバイス?
「ヒューベル様のことですが、あまり信用し過ぎないように」
「えっ……」
先輩ったら何を言うかと思えば。それ、最後に不穏なこと言って去ってくキャラじゃないですか。やめてよ、フラグが立っちゃう。裏切りのフラグがすくすく二足歩行で歩き出しちゃう。
うーん、かくなる上は。
「だいじょーぶ、大丈夫。ワタシ ベルサン シンジテルヨ」
「……なんですか、そのふざけた片言は」
予想通りの反応ありがとう先輩。でも、そんな哀れんだ目で見ないで欲しい。これにはちゃんと理由があるのですよ。
「フラグを少しでも緩和させようと、相手を信じる純粋な女の子になってみました」
「その発言が既に純粋さを失っていますね」
ははは、そーですね。
畜生、返す言葉もねえ。
===
「あ、おかえりー」
「うわ」
ベルさん、いたのか。
そこ、さっき君と別れた場所だよな。確かにベンチはあったけど、そこに座って待ってるとはまさか思わなかったよ。
「き、帰宅してなかったんですね」
「うん。すぐ戻ってくるかなって」
「そ、そうですか」
本当に? 本当にそんな理由で待ってたりする? レイズ様ならたぶん即帰るよ? 私も即帰るし。
あーなんか、シュタイン先輩の言葉のせいで、妙に胡散臭く見えるわ。
「それにもう少しだけ一緒に過ごしたかったし」
「???」
胡散臭いな!!! 何その発想。今もう夜遅いんだよ? 帰ってお風呂に入ってゴロゴロして、それからぐっすり寝落ちしたくないの? 一緒に過ごしたいって、そんな会って一日も経ってない人と過ごしたい? そんな馬鹿な。
「えー……誠に申し訳ございませんが、私はもう家に帰って寝たいです」
「正直だね」
「ええ、正直だけがモットーでございます」
嘘も方便という言葉をご存じだろうか。
「うーん。なんだか急に他人行儀に聞こえるんだけど」
「気のせいでございましょう」
「で、ルセリナちゃんはこれからどうしたいんだっけ?」
「暖かい布団で寝たいです」
「じゃあ質問」
質問? なんだろう。
「今日はどこに泊まるのかな?」
「どこにって」
そんなの適当なところで宿屋を探して……あ。
「……………」
「どこに?」
「まだ……決まっていませんね」
喫茶店のコーヒーくらいのお値段で泊まれる『お一人様』用の格安ホテルとかどこかにあったかな。
「そんなルセリナちゃんに美味しい話が。一緒にちょっとお話に付き合ってくれるだけで、宿代を提供してくれる人間がここに」
「……承りましょう」
0
あなたにおすすめの小説
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
裏庭係の私、いつの間にか偉い人に気に入られていたようです
ルーシャオ
恋愛
宮廷メイドのエイダは、先輩メイドに頼まれ王城裏庭を掃除した——のだが、それが悪かった。「一体全体何をしているのだ! お前はクビだ!」「すみません、すみません!」なんと貴重な薬草や香木があることを知らず、草むしりや剪定をしてしまったのだ。そこへ、薬師のデ・ヴァレスの取りなしのおかげで何とか「裏庭の管理人」として首が繋がった。そこからエイダは学び始め、薬草の知識を増やしていく。その真面目さを買われて、薬師のデ・ヴァレスを通じてリュドミラ王太后に面会することに。そして、お見合いを勧められるのである。一方で、エイダを嵌めた先輩メイドたちは——?
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!
キムチ鍋
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。
だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。
「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」
そこからいろいろな人に愛されていく。
作者のキムチ鍋です!
不定期で投稿していきます‼️
19時投稿です‼️
【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?
時
恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。
しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。
追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。
フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。
ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。
記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。
一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた──
※小説家になろうにも投稿しています
いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる