うちの悪役令息が追放されたので、今日から共闘して一発逆転狙うことにしました

椿谷あずる

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77.その推理は的外れのようだ

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「どうでもいい事気にしてないで集中しろよ」
「いやでも」
「黙れ」

 ちょっとの雑談くらい快く対応してくれてもいいのに、心が狭い人だなあ。その優しさを表面にも出して貰いたいものだ。
 言葉とは裏腹なレイズ様の丁寧なエスコートを受けながら、私はしみじみとそう思った。
 何度も言うがこっちは未経験者なのだ。

「大体お前は」
「なんです?」
「未経験者ってほどの動きでもないだろ」

 ……未経験者じゃない? はて、何を言ってるんだ、この男は。
 メイドしかやって来なかった女のどこにダンスの経験値が溜まる要素があるっていうんだ。溜まったとすればさっき舞踊のイヤリングを使った時くらいだし。そんなんじゃレベルの1つすら上がらないよね。

「未経験者ですよ」

 こんなへっぽこダンス、未経験者からしか生まれないでしょ。

「ね、レイズ様?」
「……」
「?」

 レイズ様は何か考えているようだった。
 なんだよどうした。沈黙はやめようぜ。

「じゃあきっと」

 うん、何さ。

「うちの屋敷で主催してるパーティ。それが羨ましくて見てたんだろ」

 ……。

「はっ?」

 今なんと?

「そのおかげで、無意識のうちに多少踊れるようになったんじゃないか?」
「は?」

 ……いや、いやいやいやいや。んな訳あるか。

「あ、のぅ~」
「なんだよ」
「パーティって、あの、レイズ様が取っ替え引っ替え女の子を招いていたパーティですよね?」

 あのクソみたいに地位や権力を見せびらかした下品な集いだろ?

「取っ替え引っ替えって……お前な」
「羨ましがって見てた? ないない、そんなの全然ある訳無いですよ」

 声を大にしてNOと言わせてもらおう。

「は?」
「は? じゃなくて」

 なんで理解しないんだこいつ。

「羨ましくなるだろ、普通。三流メイドには一生届かない場だぞ」
「いや、全然」
「嘘だろ」

 その頑なな自信は一体どちらから。

「あのですね、そんなのに見惚れるよりも、こっちはパーティの料理をどうやって持ち帰ろうかと考える事に集中していてですね……あっ」

 やべっ、余計なことを口走った。
 咄嗟に口は塞いだけどバッチリ耳に入っちゃってますよね?

「……お前、いつもそんな事を」

 あーやっぱり聞こえてたか。

「いやーうそうそ。今のは冗談です、冗談」
「冗談って言われて俺がすんなり納得するとでも」
「あらやだーレイズ様ったら、私の言葉をまに受けちゃったんですか。いつもは全然私の発言なんて信じてくれないのに、嬉しいなぁ」

 こうなったら誤魔化して逃げ切ってやる。

「誤魔化すなよ」
「あ、はい。すみません」


 
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