うちの悪役令息が追放されたので、今日から共闘して一発逆転狙うことにしました

椿谷あずる

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88.急募、結婚をお断りする方法

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 適当なこと言って上手いこと撤退しようとしたのに、むしろ逆に自分の首を絞めている。
 このままじゃ逃げ場がない。かくなる上は。

「あ!」
「あ?」

 声に反応したレイズ様からさっと目を逸らす。
 そして私は場の空気から逃げるように視線を宙へと泳がせた。

「あー……ほ、ほら、よく考えたら、領主ってお爺ちゃん、お爺ちゃんですよね!」

 人差し指をピンと立て、大事なことを忘れていた感じを装う。

「ああ」

 割とどうでもいいと思っていそうなレイズ様の生返事。
 しかしいちいちそんなことに気を使っている場合ではない。微妙な感じの空気を強引に覆うように、私は言葉を並べ立てた。

「私、お爺ちゃんと結婚とか、やっぱりどうかと思うんですよね」
「……」
「このイベントの勝者になったとして、最終的にはその方の花嫁になる訳でしょ? 流石に私、それは嫌かなーなんて……」

 好みの点での否定、これでどうだ。
 勝者になるところまでは強制出来るとしても、その後の人生を左右する結婚までは強制出来ないだろう。
 一通り言い終えた私はそこでようやく息を整えて言葉を待った。

「なるほど」
「!」

 お、今度は上手くいきそうか?
 レイズ様にしては珍しく落ち着いた声色だ。言葉もなんだか理解してるような感じだし、計画通りか。
 私は天井に向けていた視線を前に戻し、そっとレイズ様の顔色を伺った。

「領主と歳が離れてるから嫌なんだな」
「そうです」

 力強く首を縦に振る。
 やはり今回は私の言い分を理解してくれたのかもしれない。

「他に嫌な理由は?」
「特には」

 今度は首を横に。
 余計なことは付け足すまい。年齢がネック、その一本でいこう。その方が信憑性がある。
 それにこれ以上に強力な要素は浮かばない。だって財力や性格とは違って、年齢だけはどうこう手を加えて改善出来るもんじゃないんだから。

「……」

 なんとも言えないほんの少しの間が開く。

「だそうだ、ベル」
「みたいだね、レイズ」

 結論を噛み締めるような二人のやりとり。
 同じような口調で語り合うその様子は、本当お前ら仲良いなとしか言いようがない。
 まあそんな仲良し二人組には悪いけど、私は私なりの正論を以てこのイベントを辞退し――。

「安心しろ、メイド」
「へ?」

 不敵に笑う口元。

「ここの領主は言うほど高齢じゃない」
「は??」

 この男は一体何を言っているんだろうか。
 領主はどう見ても80歳はいってそうなコッテコテの白髭のお爺ちゃんだっただろうに。

「レイズ様、いったい何を冗談」
「冗談? 違うな」
「???」

 妙に余裕のある表情。なんなんだ、何が言いたい。

「領主はな、コイツだよ」
「はーい、領主でーす」

「なっ」

 なんだってーーーーーー!?

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