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109.この家のセキュリティが皆無で話が頭に入らない
しおりを挟む=前回までのあらすじ=
追放は確定事項のルセリナちゃん。さてさて、この先一体どうなっちゃうの!?
「とにかくお前はそのベルから貰った金で、出来る限り俺の今後の生活に必要な物をかき集めて来い」
「ちょ、ちょっと待った!」
「ちっまだ何かあるのかよ」
あるよ! 大いにある!! なんでそうなる。
「追放が必須なのは分かりました。でもこれは私のお・か・ね。どうして私が自分の財産削ってレイズ様の物まで調達しなきゃならないんですか!」
机をパシパシと二度ほど叩き、私は不満感をアピールをした。
「大体レイズ様だってベルさんからお金貰えるんでしょう? 自分の物は自分で調達してくださいよ!」
こっちはご都合主義の従順なメイドじゃないんだ。不運に不運が重なってやむなくこの立場に収まってるメイドなんだから、一から十までそんなに面倒見てられるか。
「あー、うーんと、それはね」
すかさずベルさんが間を取り持つ。なんてベルさんは解説者の鑑なんだろう。
「ルセリナちゃんが……」
「ふふっ、残念だけどそれは出来ないのよ」
あ、解説取られた。
せっかく役割を見つけた解説者の言葉を遮るように、現れたのは皆様ご想像通りの例のあの女性だった。
「マリアさん」
「ごきげんよう、昨日ぶりね」
そう言って彼女は昨日ぶりの名に相応しく、昨日と変わらない上品な笑みを浮かべて部屋の入り口で頭を下げる。いや、どうなってんだよ、この家のセキュリティ。
見る限りこの家の使用人達が静止している様子は無かった。
ここ、仮にも領主の家なのに。それを今回の戦犯とも思える人物がひょいひょいと入れちゃう状況って。ちょっとセコム入れてちょうだい。
もちろんそんなツッコミどころ満載な状況など華麗にスルーし、この物語は進んでいく。
「彼は買い物はおろか、この街で財産を持つことは出来ないのよ」
ひとまずこの家のセキュリティの話は端に置いておくとして、今のマリアさんの言葉、買い物だけじゃなくて財産を持つことも出来ないって一体。
「どういう事ですか?」
私は訊ねた。
「だって彼、私との賭けに負けたんだもの」
彼女はしれっとそう口にした。
「賭け?」
賭けって、あの賭け事の賭けだよね。
「あーあ、言っちゃった。俺は何も言ってないからね、レイズ」
「いやお前、さっき言おうとしただろ」
「言ってないからギリセーフ」
「?」
んん? この様子。理解してないのは私だけって事か?
「彼はね、貴方を救うために私の魔法を解くと言ったのよ」
「私を救うために」
……ほーん、ふーん、そう。
どういった経緯でそういう話になったかは知らないけど、そんな事があったんだ。私を救うために、ねぇ。
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※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
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