うちの悪役令息が追放されたので、今日から共闘して一発逆転狙うことにしました

椿谷あずる

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150.性癖発掘

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「ヘッセンともはぐれた私は、この洞窟で一人寂しくさまよっていました。私はこの通り、戦うことなんて出来ません。運悪くモンスターに遭遇し、困っているところを助けてくれたのがレイズ様でした」
「へぇ」

 レイズ様、まるで主人公みたいじゃないか。 
 どういう風の吹き回しか知らないけど、まともに人を助けるなんて。

「聞けば彼も迷っている様子。そこで二人でここを出ようとしていたんですが、今度はそこにヘッセンを見つけたのです」

 ココネお嬢様はちらりとヘッセンさんの方を見た。
 ヘッセンさんは苦笑している。

「お二人には声を掛けようとしたのですが、どうも様子がおかしいと。するとあっという間にヘッセンがモンスターに変貌したじゃありませんか」
「その節は大変申し訳なく……」
「ああ」

 再びモンスターに変身したヘッセンさんを思い出し、私も苦笑いを浮かべた。

「どうしようかと悩んでいたところ、人質作戦をレイズ様が授けてくれたんです」

 やっぱりあの下衆な案は、この男のものだったか。
 ちらりと隣を確認すると、奴は涼しい顔で話を聞いていた。

「そしてあなたはその作戦に乗ったと」
「はい」

 少女は力強く頷いた。

「ですからこれは、私同意の元で行われた作戦。彼に非は一切無いんです」
「はあ」

 お嬢様ご本人がそう言うなら事実なんだろうけど、よくもまあこんな怪しい男と協力する気になったものだ。

「……」
「他に何か気になることでも?」

 妙な空気を察知したのかココネお嬢様は首を傾げた。
 うんまあ、気になるって程では無いんだけど、あれは本当によかったのかなって。

「えっと、剣をつきつけられていましたよね?」
「ええ」
「結構乱暴でしたよね?」
「ええ」
「それも納得を?」
「はい、勿論」

 その返事はあまりにもはっきりと事実を肯定していた。
 この少女、見かけによらず結構メンタル強いな。

 そして、極めつけにはこれだった。

「普段には無いあの刺激、とても楽しいものでした」
「…………」

 まるで白馬に乗った王子様を見るような、キラキラとした瞳。
 両手の指を組み合わせて、胸の前で祈るような仕草。

 冗談だろう。
 これは完全に夢見る少女のそれだった。

「……趣味が悪い」
「おい、聞こえる」
「いやだって」

 あれは楽しいにならないだろ。普通。

 レイズ様からの叱責に、なるべく相手に聞こえないような小声で返した。

「変な性癖に目覚めたらレイズ様のせいですからね」
「うるさい、俺は悪くない」

 いや、悪いよ恐らく。
 
 キラキラとまだ瞳を輝かせている少女を前に、私は小さくため息を漏らした。
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