神を喰らいし者

 グランシール大陸の南東に位置するアルメイラス王国。この国の北には、大陸のおよそ半分の領土を持つロイセル帝国がある。

 かつて帝国が貧しい小国だった頃、天使の加護を受け、魔王をも退ける力を持つ勇者が現れた。

 ただ、魔王は世を恐怖に陥れるような邪悪な存在ではなく、魔族は人属を始めとする他の多くの種族と共存を果たしていたのである。
 魔族とは、他種族より魔力が桁違いに多かっただけで、単なる一つの種族に過ぎなかったということだ。

 しかしある時、魔族のミスによる不幸な事故で王女を失った初代皇帝ディランは、怒りのままに勇者に魔王の討伐を命じ勇者はこれを果たす。
 そしてこれ以降、小国だったロイセルは周辺国を次々と侵略し、ついには魔族も滅ぼしてディランは自らを皇帝と名乗ったのである。

 勇者とは、ディランの復讐心にかこつけて魔族を毛嫌いする天使が遣わした、魔族撃退用の道具に過ぎなかったのだ。

 一方、自分を崇める魔族を失った魔神は途方に暮れていた。もちろん、ロイセル軍から運良く逃げ延びた魔族はいる。しかしそれはほんのわずかで、魔族の血が絶えるのも時間の問題だった。

 だから魔神は、わずかな魔族を生きながらえさせるためある策を講じた。
 それは村を作り、生き残った魔族をそこに集めることだった。

 だが、信仰を失った魔神の力は弱まっていた。このままでは他の六柱の神々との均衡が崩れ、せっかく救った魔族があの忌まわしい天使たちに滅ぼされてしまう。
 魔神は自分の神格を取り込んでも壊れない、強い何かを探した。それは生き物なら何でもよかった。

 そして選ばれたのが人族のリアム・アラスだった。

 一万の軍勢に匹敵すると言われる勇者だったが、それは単にロイセルに攻め込まれた国の軍が、一万の兵を勇者に差し向けて全滅させられただけに過ぎない。つまり勇者の力は未だ底知れずなのである。

 しかしそんな勇者も魔神の神格を手に入れたリアムと、彼に寄り添う真紅の髪の美少女アルテナの敵ではなかった。
 何故ならアルテナの正体は――
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