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獣の王②
しおりを挟む「義妹のお陰で最愛なる妻を助ける事ができた。感謝する。」
しばらくして、王の元に黒装束の男が何かを伝えに来た。後々に聞いたところ、やはりあの石には毒性があったようだった。
いや、調べてから献上しなよ。
と思ったが、色々と黒い部分が王国には渦巻くものなのだろうとなっとくしておく。
「そのお礼と言っては何だが、2ヶ月後のテンペスト国への訪問をお前達に行って貰おうと思う。義妹は里帰りも出来て良いだろう。」
ニヤリと王が何か企む様に笑う。
確かに、その申し出は私にとってはありがたい。何せ堂々と城に入り込めるのだから。
「それと、目の上のたん瘤は今は別の領地で楽しんでいるそうだぞ。」
「別の領地。」
「なんでも、新たに増えたメンバーが雪の国の豪族らしくてな。」
これは案に、ちゃんと2ヶ月は足止めが出来るぞとの話だろうか。
この王には全ての話がいっているようだった。
それを、イェシル殿下が話したのか、影と呼ばれているスパイのような者が話したのか知らないが、純粋に感謝をしめす。
周りの者達は何の話かは分からないだろうが、それが不審な話なのは雰囲気で分かるだろう。
「よい。どうやら喧嘩を売られているようだからな。」
「弁明をさせていただいてもよろしいですか?」
「言ってみろ。」
「テンペスト国の現王妃はまともでございます。いつも、民を想い王族とは何たるかを考えているかたです。」
人を信じすぎてしまう王妃だけど、あの国が腐らないのは彼女がいるからだ。
もしも、あの女が言うように、今回の件でその身が地に落ちてしまえば、テンペスト国は落ちに堕ちて、そのうちに他の人の国から攻められ滅ぶだろう。
「そうか、では、立派な花嫁が来たことへの感謝と軽い世間話でも手紙で送ろうか。」
「感謝します。」
要は、本来の花嫁でない花嫁が来たことと、そのいきさつ、戦争の意志があるのかなどを遠回しで聞くのだろう。
いま、謁見でその話を周りにしないのは要らぬ不安や戦闘態勢にしないため。
やはり、王は普通では無さそうだ。
「イェシル、彼女を素晴らしく着飾ると良い。友人達の協力も受けてな。」
「…ちっ。分かってるよ。」
「綺麗な義妹の姿を見ることになる者は大層、怖い表情をするだろうが、見てみたいな。」
はっはっはと笑う姿を残し、王は側使いと共に席を離れた。
これで謁見は終わりのようだ。
一応は、義妹と認められた様だし、挨拶も出来たので良いとしようか。
イェシル殿下に視線を向けると、眉間に皺を寄せていたが、すぐに雰囲気が柔らかくなりまた、抱き上げると入ってきた扉に向かって行く。
途中懲りずに、陰口を叩こうとしている人を見つけて、じっと『聴こえてるわよ』と言うように見つめてたら悔しそうな顔をして黙り込んだ。
何だかんだで早に戻ると、そこにはフィシゴとリドリーさんが優雅にお茶を飲んでいた。
「お帰りなさい。」
「色々とやったみたいっすね。」
先程の状況はもうすでにこちらにまで話が来ているようだ。きっと、影とやらから聞いたのだろう。
「それより、あの鉱石の話は本当?」
「コロラドアイトの事なら本当のことです。」
「キラキラと黒い粒の中で金色が光って綺麗なのに。」
ついでだから聞いてみようかな。
「魔法で一部のものを抽出することは可能ですか?」
「んー。錬金術師の部類よね。繊細な水魔法が使えて、知識があれば可能かしら。」
「知識?」
「ほら、例えばコロラドアイトに何が含まれているか、高レベルの鑑定士ならともかく、普通の人は何が含まれているか判断つかないじゃない。未知な物質なら表示さえされないわ。」
「だから、普通に献上されていたのですね。」
「そう。まだそれが何なのか分からないから抽出までは出来ないの。ちゃんとそれが何かと分からないと。」
要は、ケーキに蜂蜜を使っているよというのが分からない人は抽出の魔法があっても抽出できないということか。いろいろと鑑定も奥が深いのね。
でも、それならどうしようか。
「何かあるの?」
「コロラドアイトは金を含むんです。それがうまく抽出できたらと。」
「金ですって!」
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