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暗いくらい所で
しおりを挟むここは、城の地下に設けられた薄暗い場所。
何で、城の牢屋って地下に造るのかしら。じめじめしているし虫もいるし。
反逆して閉じ籠ったら鉄壁な守りになるかもしれないけど、こんなじめじめな所、病気になるじゃない。
ああ、そうして死ぬなら処刑代とかは掛からないからかしら。
結構残酷よね。
でもやっぱり、王族である私には似合わないわ。
自室で軟禁ぐらいにしてくれないかしら。服も着替えたいし、風呂も入りたいのよ。騙すためにわざわざボロボロにしたんだから。ドレス結構気にいっていたのに。
え、私が何者ですかって?
知らないの?まあ、確かに余り表には出されなかったものね。いいわ、教えてあげる。
私はこの国の第二王女のクェイル・テンペスター。
全てに愛されているはずの美少女よ。
王女様がなんでこんなところにいるのかって疑問に感じるわよね。はあ、早く薔薇風呂に入りたいわ。
ところで貴方、何でこの世界には色々な種族が要るのに純粋な人間が大勢いるか疑問に思わなかった?
私は不思議だったわ。
だって、何万年もの間交わることなく純粋な人間なんて。だから、人間は優性な遺伝子をもっているのではと考えたの。
優性だから、他と交わると人間の性質が強くでて、そのうちに人間だけの性質になるってね。
だから、他種族は下等な者なの。特に獣人なんか人の性質が獣と明らかに混じってますって感じで虫酸が走るわ。そんな所に嫁に行くなんて嫌よ。
むしろ、そんな中途半端な国なんて滅べばよくない?
おまけでこの国の王妃がその発端なら王の座から降りて私が王妃になればよくない?
ちょうど、破棄しようとしていた女がいたから、色々と考えて計画を練っていたのに、逆にその女のせいで計画がぐちゃぐちゃになっちゃった。
そもそも、その女もある男の人質。
兵器を造るための贄みたいな存在だったのだけど、何をやっても男は兵器だけは造らなかったから、もう飽きて要らなくなっちゃった。
今回知ったけど兄妹だったらしかったから、女を女癖の悪い男に貸せば良かったわ。そしたら、慌てた顔でもみれたでしょうね。
え、なんでそこまで話してくれるのかって?
だって、貴方が可哀想だから。
これからここに私の迎えがくるの。
その際に小火を起こすのだけどね、煙って人を殺すこともあるのよ。
一緒に助けてほしい?
馬鹿じゃない?
誰が犯罪者と共に逃げると思うのよ。まあ、処刑代が節約できるぐらい世間の役にたって頂戴な。
コツコツと先程から見張り兵も来なかった地下牢に足音が響いた。夕飯にはまだ早い時間だし、靴の音は安物の兵士が身に付けるような音ではない。
まさかと、思って隣の私のふつうの生活ではお会い出来ないだろう女性の顔を覗き見ると、女、クェイル王女が満面な笑みで入り口を観ていた。
「待たせたな。」
靴の音が止まると、そこには私でも見たことのある男が立っていた。
目をぱちくりとしていると、男の背後から、二人の若い男がさらに現れた。二人はクェイル王女の牢の鍵を開けると恭しく手を取って外にだした。
私の存在に気がついていないのではないかと、淡い期待を持っていたか、気を緩めた瞬間、喉に熱い衝撃を感じた。思わず押さえるとその手に熱い液体を感じる。
「証人にならないように万が一のため喉を潰しておいた。」
「あら、そうね。今度こそは確実にね。」
クスクス笑う、女の肩を抱いて二人の若い男達がでて行く。
残った男は、姫のいた部屋に何かを転がし、その回りに藁を敷き詰めてゆく。
たしか、あの女小火がなんとか言っていた。まさか本当に。
「この牢獄で哀れだったな。」
男は、絶対に哀れんでいない目で私を見つめて藁に火をつける。藁は湿っているのか燻っているような煙がもうもうとあがる。
私はあの男を知っている。何せ、私をここに入れるきっかけはあの男だったから。
あの男はこの国の宰相の息子だ。裁判を担う部署に最近入った若きエースだ。
誰か、早くこの異変に気がついて。
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