この記憶、復讐に使います。

SHIN

文字の大きさ
24 / 31

惹かれるのはその瞳

しおりを挟む


『私のどこが気に入ったの?』


 そう問いかける女は人族で俺が力を込めたらすぐに折れてしまいそうなぐらい繊細だ。
 初めて見たときは何処の小枝だなんて思っていた。

 だが、風に吹かれて覗かせた燻る炎の様な目を見たら、俺の身体が歓喜に震えた。
 あの目が俺に向いたらどれだけ幸せだろうか。


 俺は昔から獣人の王である兄貴と比べられてきた。どんなに頑張ろうが、優秀にしてこようがいつも『あのお方なら…。』だ。
 俺の事を見てくれる奴なんていないのだ。
 魔法を学びに学園に入ったときも、兄貴が居ないから比べられないと思いきや、いつでも兄貴の影が付きまとっていた。

 こんなのなら、最初からやらなくても一緒だとぐうたら過ごしていた。
 フィシゴがお目付け役になってもそれだけは変わらない。ある程度の友人、いや知人ができて卒業になったが、待っていたのは隣国の姫との政約結婚だった。

 簡単に調べさせれば姫は獣人が嫌いらしい。

 まあ、興味がないのはお互い様だ。純白の結婚でもいいだろう。

 そう思っていたのに。

 俺はあの女が欲しい。
 自らの手を血で汚しても、痛みで泣き叫ぶことはなく毅然と何かを守る姿勢。
 美しかった。
 復讐を望む女の姿が楽になるとわかった時のほっとした微笑み。
 一目惚れだった。


 我々、獣人の男は強い女が好きだ。
 彼女は絶対に生きてもらう。そして、俺の物にする。





 女が目を覚ましたと聞いた。
 フィシゴがサボりによく部屋を使っていたのは知っていたが、まさか目覚めた時にいるとはなんという偶然か。

  部屋に入って目が入ったのは寝起き姿のすこし乱れた夜着姿だった。日に当たってない肌は白く、今まで何をされてきたのか想像を書き立てるアザの見える胸元。胸元…。

 思わずフィシゴを殴ってしまったが、そういえばこいつハイエナの娘が良いんだったか。



「なぜ、あのまま死なせてくれなかったのですか?」


 そう聞く女の目は死んだようにくすんでいた。
 あの時のあの目が見たくて、自分の手で復讐ができると話せば、炭火の様に火が着く。

 やはり、彼女、レイリが俺の妻になって欲しい。いや、なってもらう。


 そんな彼女が書き上げた設計図らしきものは、世界を変えるだろう。
 魔法が主体のこの世界で銃は危険なものである。これは黄泉の国に相談した方が良さそうだ。
 黄泉の国なら最新の技術が豊富で何かしら教えてくれるだろう。最悪、俺が燃やした事にしよう。

 他は、水銀の危険性。
 たしか、あのおねぇがそんな事を言っていたが、皆から相手にされなかったな。カリスマで世界に名を馳せているのに、そうなっているのはどうしてなのか説明できないからだ。
 この紙を渡したら飛んでくるだろうよ。

 ステンレスという金属は水に強いとのことだから、水辺の何かに使えるかなと、考えていると、どうやら水仕事の主婦に愛の証としてよく贈られていたとのこと。

 まさに、獣人の国にはふさわしいかもしれない。


 その後も色々と書いて、力尽きたレイリは医者代わりに読んだディーラに怒られて、おとなしく布団で横になってすぐさま眠りについた。

 フィシゴの視線が痛いが、この知識のかたまりは俺が預かることにする。
 水銀だけは兄貴き報告しておくか。
 たしか、美白の化粧品に含まれているからリドリーの奴が騒いでいたんだよな。


「この知識を得るためにしちゃ、暴力が容赦ないな。とりあえず、潜り込ませるか。」


 俺は、姿が人間によりにているガイドを呼び出してクェイルの動向を調べるように伝えた。あの姫さんならイケメンのほうが言うこと聞くだろうな。あと、俺の金を使ってでも雪の国で足止めをしておくようにも伝えておく。

 2ヶ月あれば、燻る炎の様な目とは違う別の瞳の色でもみられるかな。


「あーあ、楽しみだ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

気がついたら自分は悪役令嬢だったのにヒロインざまぁしちゃいました

みゅー
恋愛
『転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈ります』のスピンオフです。 前世から好きだった乙女ゲームに転生したガーネットは、最推しの脇役キャラに猛アタックしていた。が、実はその最推しが隠しキャラだとヒロインから言われ、しかも自分が最推しに嫌われていて、いつの間にか悪役令嬢の立場にあることに気づく……そんなお話です。 同シリーズで『悪役令嬢はざまぁされるその役を放棄したい』もあります。

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

【完結】悪役令嬢は何故か婚約破棄されない

miniko
恋愛
平凡な女子高生が乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった。 断罪されて平民に落ちても困らない様に、しっかり手に職つけたり、自立の準備を進める。 家族の為を思うと、出来れば円満に婚約解消をしたいと考え、王子に度々提案するが、王子の反応は思っていたのと違って・・・。 いつの間にやら、王子と悪役令嬢の仲は深まっているみたい。 「僕の心は君だけの物だ」 あれ? どうしてこうなった!? ※物語が本格的に動き出すのは、乙女ゲーム開始後です。 ※ご都合主義の展開があるかもです。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしておりません。本編未読の方はご注意下さい。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

【短編】男爵令嬢のマネをして「で〜んかっ♡」と侯爵令嬢が婚約者の王子に呼びかけた結果

あまぞらりゅう
恋愛
「で〜んかっ♡」 シャルロッテ侯爵令嬢は婚約者であるエドゥアルト王子をローゼ男爵令嬢に奪われてしまった。 下位貴族に無様に敗北した惨めな彼女が起死回生を賭けて起こした行動は……? ★他サイト様にも投稿しています! ★2022.8.9小説家になろう様にて日間総合1位を頂きました! ありがとうございます!!

好きになったあなたは誰? 25通と25分から始まる恋

たたら
恋愛
大失恋の傷を癒したのは、見知らぬ相手からのメッセージでした……。 主人公の美咲(25歳)は明るく、元気な女性だったが、高校生の頃から付き合っていた恋人・大輔に「おまえはただの金づるだった」と大学の卒業前に手ひどくフラれてしまう。 大輔に大失恋をした日の深夜、0時25分に美咲を励ます1通のメールが届いた。 誰から届いたのかもわからない。 間違いメールかもしれない。 でも美咲はそのメールに励まされ、カフェをオープンするという夢を叶えた。 そんな美咲のカフェには毎朝8時35分〜9時ちょうどの25分間だけ現れる謎の男性客がいた。 美咲は彼を心の中で「25分の君」と呼び、興味を持つようになる。 夢に向かって頑張る美咲の背中を押してくれるメッセージは誰が送ってくれたのか。 「25分の君」は誰なのか。 ようやく前を向き、新しい恋に目を向き始めた時、高校の同窓会が開かれた。 乱暴に復縁を迫る大輔。 そこに、美咲を見守っていた彼が助けに来る。 この話は恋に臆病になった美咲が、愛する人と出会い、幸せになる物語です。 *** 25周年カップを意識して書いた恋愛小説です。 プロローグ+33話 毎日17時に、1話づつ投稿します。 完結済です。 ** 異世界が絡まず、BLでもない小説は、アルファポリスでは初投稿! 初めての現代恋愛小説ですが、内容はすべてフィクションです。 「こんな恋愛をしてみたい」という乙女の夢が詰まってます^^;

【本編完結】真実の愛を見つけた? では、婚約を破棄させていただきます

ハリネズミ
恋愛
「王妃は国の母です。私情に流されず、民を導かねばなりません」 「決して感情を表に出してはいけません。常に冷静で、威厳を保つのです」  シャーロット公爵家の令嬢カトリーヌは、 王太子アイクの婚約者として、幼少期から厳しい王妃教育を受けてきた。 全ては幸せな未来と、民の為―――そう自分に言い聞かせて、縛られた生活にも耐えてきた。  しかし、ある夜、アイクの突然の要求で全てが崩壊する。彼は、平民出身のメイドマーサであるを正妃にしたいと言い放った。王太子の身勝手な要求にカトリーヌは絶句する。  アイクも、マーサも、カトリーヌですらまだ知らない。この婚約の破談が、後に国を揺るがすことも、王太子がこれからどんな悲惨な運命なを辿るのかも―――

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

処理中です...