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第2章
41.対決②
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「フォルネウス。お前は悪魔魔法を使い、ドラゴンを混乱させたのか?」
マードック陛下の質問に、フォルネウスは答えない。正確には答えられないんだろう。身体をガタガタと震わせ、明らかに挙動がおかしい。
「ホワイトドラゴンの目は正気ではありませんでした。あれは魔法で操られたとしか思えません」
キールを見ればわかるんだよ。あれはヒュプノシスだ。そして、その魔法をかけられるのはお前しかいねぇから。
「おい、フォルネウス。陛下に嘘をつくことは大罪だぞ」
俺はフォルネウスに揺さぶりをかける。ほら、案の定フォルネウスは俺の言葉にビクッと怯えたような反応をした。
さっさと真実を吐けよ。
「……陛下。も、申し訳ございませんでした。ホワイトドラゴンに悪魔魔法を使いました……」
フォルネウスはついに自白した。
よし!
やっぱりコイツには、こんな大きな秘密をずっと抱えているほどの根性はない。
はっきり言って俺の手元には十分な証拠がない。フォルネウスの気弱さにつけ込んだ、自白を狙うしかない状況だ。
ヴィクトールはフォルネウスの態度にめちゃくちゃ驚いている。まさかフォルネウスが自ら罪を告白するとは思わなかったのだろう。
「フォルネウス。なぜそのようなことをしたのだ?」
「…………」
フォルネウスはうつむき黙っている。
ほら、あと少しだ。
「陛下、わたくしの推察を申し上げます。フォルネウスは、たったひとりでそのような計画をし実行するほどの凶悪性がある男ではございません。フォルネウスは自分より身分が上の者に、命令されてこのような事件を起こしたと考えられます」
うつむいていたフォルネウスが、バッと俺のほうを向いた。
フォルネウスはそれ以上は言うな! みたいな顔をしている。
でもそんなの知るか!
「畏れながら申し上げます」
俺は陛下の前に跪く。
「フォルネウスはヴィクトール殿下の命令により、このような悪事を行ったのです」
ヴィクトールはマードック陛下にとって実の息子だ。
息子のことを犯罪者呼ばわりされて、怒り出すだろうか。
「ノア。根拠のないことを言うな。私とフォルネウスはそこまでの繋がりはない。コイツが勝手にやったんだ」
ヴィクトールは焦っている様子はない。まだ余裕があるようだ。
たしかにそうなんだ。俺にはヴィクトールの命令だと断言できる証拠はない。フォルネウスの自白に頼っているという、綱渡り状態だ。
「父上! 事の発端はこれです。ノアは思い込みが強い性格で、なぜか私を首謀者かのように責めてくるのです。ですが決してそのようなことはありません」
ヴィクトールは被害者ぶっている。本当はお前がライオネルを陥れたくせに!
「……ヴィクトール、火のないところに煙は立たぬと言うぞ?」
マードック陛下は息子のヴィクトールに厳しい視線を向ける。
よかった。陛下は息子と言えども公平に判断を下してくれそうだ。
「父上。実は、私とノアは結婚の契りを交わそうと話をするほどの仲なのです。お恥ずかしい話なのですが、これは痴情のもつれです」
え……? こいつ急に何を言い出す!?
「ですが私には正室がおります。それで、ノアと揉めまして……ノアは側室が嫌だと言うのです」
ヴィクトールは懐から一枚の紙を取り出した。それは、俺とヴィクトールが交わした念書だ。
「それでノアとこのような念書を交わしました。私が無罪ならば、ノアは私の側室になるという約束を交わしたのです」
「えっ……!?」
俺はたしかに念書を交わした。でも、そんな理由じゃない。
「まぁ、ノアが正室に嫉妬し、私に八つ当たりをするのも可愛らしいと思います。そんな愛しのノアを、私としては早く側室に迎えたいという所存です。ですので、ノアの話は話半分に聞いていただければ。私もノアも本当はいがみ合うような仲ではありません」
俺ははぁぁっ? ふざけんなと思うが、問題はマードック陛下だ。陛下は「そのような事情だったのか」と妙に納得しちゃってる!
「陛下! そうではなくっ、殿下は俺のことを無理矢理側室に……っ!」
「無理矢理に念書を書かせることはできないだろう? この魔術印は正真正銘ノアのもののようだな」
待って、俺が何を言っても、正室に嫉妬する可愛い側室候補、みたいにされる!
マードック陛下の質問に、フォルネウスは答えない。正確には答えられないんだろう。身体をガタガタと震わせ、明らかに挙動がおかしい。
「ホワイトドラゴンの目は正気ではありませんでした。あれは魔法で操られたとしか思えません」
キールを見ればわかるんだよ。あれはヒュプノシスだ。そして、その魔法をかけられるのはお前しかいねぇから。
「おい、フォルネウス。陛下に嘘をつくことは大罪だぞ」
俺はフォルネウスに揺さぶりをかける。ほら、案の定フォルネウスは俺の言葉にビクッと怯えたような反応をした。
さっさと真実を吐けよ。
「……陛下。も、申し訳ございませんでした。ホワイトドラゴンに悪魔魔法を使いました……」
フォルネウスはついに自白した。
よし!
やっぱりコイツには、こんな大きな秘密をずっと抱えているほどの根性はない。
はっきり言って俺の手元には十分な証拠がない。フォルネウスの気弱さにつけ込んだ、自白を狙うしかない状況だ。
ヴィクトールはフォルネウスの態度にめちゃくちゃ驚いている。まさかフォルネウスが自ら罪を告白するとは思わなかったのだろう。
「フォルネウス。なぜそのようなことをしたのだ?」
「…………」
フォルネウスはうつむき黙っている。
ほら、あと少しだ。
「陛下、わたくしの推察を申し上げます。フォルネウスは、たったひとりでそのような計画をし実行するほどの凶悪性がある男ではございません。フォルネウスは自分より身分が上の者に、命令されてこのような事件を起こしたと考えられます」
うつむいていたフォルネウスが、バッと俺のほうを向いた。
フォルネウスはそれ以上は言うな! みたいな顔をしている。
でもそんなの知るか!
「畏れながら申し上げます」
俺は陛下の前に跪く。
「フォルネウスはヴィクトール殿下の命令により、このような悪事を行ったのです」
ヴィクトールはマードック陛下にとって実の息子だ。
息子のことを犯罪者呼ばわりされて、怒り出すだろうか。
「ノア。根拠のないことを言うな。私とフォルネウスはそこまでの繋がりはない。コイツが勝手にやったんだ」
ヴィクトールは焦っている様子はない。まだ余裕があるようだ。
たしかにそうなんだ。俺にはヴィクトールの命令だと断言できる証拠はない。フォルネウスの自白に頼っているという、綱渡り状態だ。
「父上! 事の発端はこれです。ノアは思い込みが強い性格で、なぜか私を首謀者かのように責めてくるのです。ですが決してそのようなことはありません」
ヴィクトールは被害者ぶっている。本当はお前がライオネルを陥れたくせに!
「……ヴィクトール、火のないところに煙は立たぬと言うぞ?」
マードック陛下は息子のヴィクトールに厳しい視線を向ける。
よかった。陛下は息子と言えども公平に判断を下してくれそうだ。
「父上。実は、私とノアは結婚の契りを交わそうと話をするほどの仲なのです。お恥ずかしい話なのですが、これは痴情のもつれです」
え……? こいつ急に何を言い出す!?
「ですが私には正室がおります。それで、ノアと揉めまして……ノアは側室が嫌だと言うのです」
ヴィクトールは懐から一枚の紙を取り出した。それは、俺とヴィクトールが交わした念書だ。
「それでノアとこのような念書を交わしました。私が無罪ならば、ノアは私の側室になるという約束を交わしたのです」
「えっ……!?」
俺はたしかに念書を交わした。でも、そんな理由じゃない。
「まぁ、ノアが正室に嫉妬し、私に八つ当たりをするのも可愛らしいと思います。そんな愛しのノアを、私としては早く側室に迎えたいという所存です。ですので、ノアの話は話半分に聞いていただければ。私もノアも本当はいがみ合うような仲ではありません」
俺ははぁぁっ? ふざけんなと思うが、問題はマードック陛下だ。陛下は「そのような事情だったのか」と妙に納得しちゃってる!
「陛下! そうではなくっ、殿下は俺のことを無理矢理側室に……っ!」
「無理矢理に念書を書かせることはできないだろう? この魔術印は正真正銘ノアのもののようだな」
待って、俺が何を言っても、正室に嫉妬する可愛い側室候補、みたいにされる!
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