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本編
61、地図
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十五で婚約して、十八で結婚した。それから四年、第二皇子と協力して、カヴァニス公爵家の宝剣を探していた。
シュリヤ・フォルカが死んだ場所は、想像以上の険しさだった。
山の中腹なのだが、そこに至る道は細く、斜面は急勾配で底の見えない鞍部、一度足を滑らせれば命はないだろう。
足を伸ばせる範囲は捜索したが、何も出なかった。
やはり遺体は、崖下だ。鞍部に下る道を見つけなくてはならない。そう判断した一行は、麓まで引き返し、急拵えの天幕を用意していた。
天幕のそばでは、第一皇子と第二皇子が、睨み合っている。
それをよそにリュシアーナは、有無を言わさず騎士たちに指示を飛ばしていた。疑問に思う騎士たちは多いが、皇子たちが何も言わないので、従う他ない。
「妃殿下」
準備が整うまで、リュシアーナは馬車の近くで休憩していた。そこにリシャルが呼びに来る。
「どうぞ中へ」
皇子たちが入る後に続いて、リュシアーナも天幕の中に入った。中央の卓には、それぞれが持ってきた資料が整理されており、地図が広げられている。
それを前に難しい顔をする皇子たちの間に入り、リュシアーナは最新のブラド山岳地帯の地図を目の前に持ってきた。
「リュシー、君は何を考えているんだい」
率先して動くリュシアーナにエヴァリストが苦言を呈す。
「宝剣の在処を探す以外にないでしょう。殿下方に任せると探せるものも探せません。宝剣を見つけ出し、皇帝陛下に献上する。それこそが、エヴァリスト様の望みでは?」
「そうだが……」
エヴァリストは物言いたそうだ。
ルカから貰った坑道と洞窟の地図も隣に持ってくる。そして、その横にラウルが得た古びた地図を置く。
「では、何も問題ないでしょう。今回は、第二皇子殿下の尽力があったことを陛下にもお伝えすれば良いだけです。……何か、書くものをいただいても?」
リュシアーナの要求に動いたのは、リシャルだった。他の騎士たちは顔を見合わせるばかりで動かない。
リシャルからペンとインクを受け取ったリュシアーナは、シュリヤが亡くなった場所に印をつける。そして、そこから遺体が落ちたと思われる鞍部の範囲にあたりをつけた。
その範囲は、複数の山々の合間になっていて、どこからたどり着けるのか、見当がつきにくい。
「そもそも宝剣は、女が持てるような代物なのか? 軟弱な腕力で運べるのか?」
リュシアーナが作業する傍ら、ラウルが尋ねてきた。おそらく彼が想像する宝剣は、皇帝が持つ十字架の剣だろう。
リュシアーナは自分で用意した資料をラウルに渡した。カヴァニス公爵家の姉たちが持っていた剣の模写だ。
そのうちの一つ、鍔のない薄い刃の剣を指差す。
「今回探しているのは、こちらです」
「ふむ……」
通常よりも軽そうな剣なので、ラウルも納得したような顔になる。
「…………似たようなものを見たことがあるな」
そして、その次の一言にリュシアーナは、顔をあげた。
「それは、どういう……」
ラウルは自分の騎士にも剣の模写を見せる。
「――確かによく似ております。以前我々が追っていたデュラハンが持っていた剣です」
答えたのは、赤星騎士団の第三騎士だった。
ブラド山岳地帯に現れたデュラハンは、青剣騎士団が討伐した。ならば、すでに宝剣は、ルカの手の内ではなかろうか。
だが、ルカは宝剣に無関心だった。そのまま放置されているのか。
デュラハンがブラド山岳地帯のどこかにあったシュリヤの宝剣を拾ったのだとすれば納得がいく。
「デュラハンを討伐した場所を教えていただけますか?」
リュシアーナが尋ねると、第三騎士は困った顔で、指差した。
「確か……このあたりです。坑道のその先なのですが、中が入り組んでおり、我々は深追いできず、正確な場所はわかりません」
第三騎士が指差したところをルカの地図に照らし合わせて、印をつける。
「ゼノンがすでに回収したのではないか?」
ラウルが言った。
「いや、ゼノンに宝剣の話を聞いた時には、特に反応はなかった。価値に気づいてないはずだ」
それをエヴァリストが否定する。
「ふん、間抜けめ」
デュラハンが現れた坑道に注目して、ルカの地図を見ると、妙な空白地帯があることに気づいた。この空白地帯を解明すれば、目指す鞍部への道もあるかもしれない。
しかし、坑道と洞窟の入り混じる複雑な地形を地図に書き起こしているのに、そこだけ記さなかった意味はなんだろうか。
そもそもルカにとって、地図は無用の長物だ。ルカは目で見たものをすべて記憶している。記憶力に関して、ルカはずば抜けた能力を持つ。
(わざわざ地図にしていたのは、どうして? 書かなかったのは、隠したいから? 無駄なことだから?)
リュシアーナは軽く頭を振る。地図は必要だ。その地を治めるものとして、必須のものだ。なんでもルカの心情に結びつけるのはよくない。
一度深く呼吸すると、ラウルの地図が目に入った。そして、その端に書かれた人名らしきものに気づく。
「ライラ、へ……?」
子どもが書いたような不恰好な文字だったため、気づくのが遅れた。
(ライラ? その人にあてた地図?)
地図でやりとりするのか。まだあまり文字が普及していなかった頃だろうか。
(建国初期…………ライラという人物は?)
リュシアーナは、考え込んだ。この地図がブラド山岳地帯のものなら、建国初期のファリーナ帝国に関わっていた人物である可能性が高い。
その中で、ライラという人物はいただろうか。数秒考えて、リュシアーナは言った。
「…………ライラ・クローチェ。滅亡したクローチェ王国の王女にして、ファリーナ帝国初期に東部をまとめた女領主」
一人、該当する人物がいる。今のクローチェ伯爵家の祖先だ。
「それは、誰だい?」
エヴァリストに問われたが、リュシアーナの耳には届かなかった。
ライラ・クローチェは、ファリーナ帝国が出来上がる前から初代皇帝に付き従っていたとされる。
そもそもなぜ初代皇帝が、ブラド山岳地帯に国を興すことになったのか。それは、複雑な地形を防衛と奇襲に活かすためだ。リュシアーナの脳裏にさまざまな推測が浮かんでは、消えていく。
――問題は、この地図がなんのためにライラに送られたかだ。
他の文字らしき所は掠れていて読めない。だが、地図はしっかりしたものだ。
(文字ではなく、地図を送る……。待ち合わせ?)
待ち合わせだと思って地図を見ると、目的地に目印が付けられている気がした。
リュシアーナは目を瞑って、思い出す。ファリーナ帝国初期、最初の街を構えたのは、どこだっただろうか。
待ち合わせの地図なら、相手が普段いる場所か、共通の目印から、落ち合う場所までの道であるはずだ。
「…………」
リュシアーナは、最新のブラド山岳地帯の地図に印を書き足した。
その印をもとに古びた地図を回転させる。古びた地図の地形と、今の地形が一致する向きがあるはずだ。
驚くことに、ルカが記さなかった空白地帯に古びた地図の目的地が重なった。そして、鞍部への道らしきものが、古びた地図に書かれていることに気づく。
(偶然ではないわね……)
デュラハンが討伐された場所、シュリヤの遺体がある場所、すべてが空白地帯に繋がっていたのだ。
シュリヤ・フォルカが死んだ場所は、想像以上の険しさだった。
山の中腹なのだが、そこに至る道は細く、斜面は急勾配で底の見えない鞍部、一度足を滑らせれば命はないだろう。
足を伸ばせる範囲は捜索したが、何も出なかった。
やはり遺体は、崖下だ。鞍部に下る道を見つけなくてはならない。そう判断した一行は、麓まで引き返し、急拵えの天幕を用意していた。
天幕のそばでは、第一皇子と第二皇子が、睨み合っている。
それをよそにリュシアーナは、有無を言わさず騎士たちに指示を飛ばしていた。疑問に思う騎士たちは多いが、皇子たちが何も言わないので、従う他ない。
「妃殿下」
準備が整うまで、リュシアーナは馬車の近くで休憩していた。そこにリシャルが呼びに来る。
「どうぞ中へ」
皇子たちが入る後に続いて、リュシアーナも天幕の中に入った。中央の卓には、それぞれが持ってきた資料が整理されており、地図が広げられている。
それを前に難しい顔をする皇子たちの間に入り、リュシアーナは最新のブラド山岳地帯の地図を目の前に持ってきた。
「リュシー、君は何を考えているんだい」
率先して動くリュシアーナにエヴァリストが苦言を呈す。
「宝剣の在処を探す以外にないでしょう。殿下方に任せると探せるものも探せません。宝剣を見つけ出し、皇帝陛下に献上する。それこそが、エヴァリスト様の望みでは?」
「そうだが……」
エヴァリストは物言いたそうだ。
ルカから貰った坑道と洞窟の地図も隣に持ってくる。そして、その横にラウルが得た古びた地図を置く。
「では、何も問題ないでしょう。今回は、第二皇子殿下の尽力があったことを陛下にもお伝えすれば良いだけです。……何か、書くものをいただいても?」
リュシアーナの要求に動いたのは、リシャルだった。他の騎士たちは顔を見合わせるばかりで動かない。
リシャルからペンとインクを受け取ったリュシアーナは、シュリヤが亡くなった場所に印をつける。そして、そこから遺体が落ちたと思われる鞍部の範囲にあたりをつけた。
その範囲は、複数の山々の合間になっていて、どこからたどり着けるのか、見当がつきにくい。
「そもそも宝剣は、女が持てるような代物なのか? 軟弱な腕力で運べるのか?」
リュシアーナが作業する傍ら、ラウルが尋ねてきた。おそらく彼が想像する宝剣は、皇帝が持つ十字架の剣だろう。
リュシアーナは自分で用意した資料をラウルに渡した。カヴァニス公爵家の姉たちが持っていた剣の模写だ。
そのうちの一つ、鍔のない薄い刃の剣を指差す。
「今回探しているのは、こちらです」
「ふむ……」
通常よりも軽そうな剣なので、ラウルも納得したような顔になる。
「…………似たようなものを見たことがあるな」
そして、その次の一言にリュシアーナは、顔をあげた。
「それは、どういう……」
ラウルは自分の騎士にも剣の模写を見せる。
「――確かによく似ております。以前我々が追っていたデュラハンが持っていた剣です」
答えたのは、赤星騎士団の第三騎士だった。
ブラド山岳地帯に現れたデュラハンは、青剣騎士団が討伐した。ならば、すでに宝剣は、ルカの手の内ではなかろうか。
だが、ルカは宝剣に無関心だった。そのまま放置されているのか。
デュラハンがブラド山岳地帯のどこかにあったシュリヤの宝剣を拾ったのだとすれば納得がいく。
「デュラハンを討伐した場所を教えていただけますか?」
リュシアーナが尋ねると、第三騎士は困った顔で、指差した。
「確か……このあたりです。坑道のその先なのですが、中が入り組んでおり、我々は深追いできず、正確な場所はわかりません」
第三騎士が指差したところをルカの地図に照らし合わせて、印をつける。
「ゼノンがすでに回収したのではないか?」
ラウルが言った。
「いや、ゼノンに宝剣の話を聞いた時には、特に反応はなかった。価値に気づいてないはずだ」
それをエヴァリストが否定する。
「ふん、間抜けめ」
デュラハンが現れた坑道に注目して、ルカの地図を見ると、妙な空白地帯があることに気づいた。この空白地帯を解明すれば、目指す鞍部への道もあるかもしれない。
しかし、坑道と洞窟の入り混じる複雑な地形を地図に書き起こしているのに、そこだけ記さなかった意味はなんだろうか。
そもそもルカにとって、地図は無用の長物だ。ルカは目で見たものをすべて記憶している。記憶力に関して、ルカはずば抜けた能力を持つ。
(わざわざ地図にしていたのは、どうして? 書かなかったのは、隠したいから? 無駄なことだから?)
リュシアーナは軽く頭を振る。地図は必要だ。その地を治めるものとして、必須のものだ。なんでもルカの心情に結びつけるのはよくない。
一度深く呼吸すると、ラウルの地図が目に入った。そして、その端に書かれた人名らしきものに気づく。
「ライラ、へ……?」
子どもが書いたような不恰好な文字だったため、気づくのが遅れた。
(ライラ? その人にあてた地図?)
地図でやりとりするのか。まだあまり文字が普及していなかった頃だろうか。
(建国初期…………ライラという人物は?)
リュシアーナは、考え込んだ。この地図がブラド山岳地帯のものなら、建国初期のファリーナ帝国に関わっていた人物である可能性が高い。
その中で、ライラという人物はいただろうか。数秒考えて、リュシアーナは言った。
「…………ライラ・クローチェ。滅亡したクローチェ王国の王女にして、ファリーナ帝国初期に東部をまとめた女領主」
一人、該当する人物がいる。今のクローチェ伯爵家の祖先だ。
「それは、誰だい?」
エヴァリストに問われたが、リュシアーナの耳には届かなかった。
ライラ・クローチェは、ファリーナ帝国が出来上がる前から初代皇帝に付き従っていたとされる。
そもそもなぜ初代皇帝が、ブラド山岳地帯に国を興すことになったのか。それは、複雑な地形を防衛と奇襲に活かすためだ。リュシアーナの脳裏にさまざまな推測が浮かんでは、消えていく。
――問題は、この地図がなんのためにライラに送られたかだ。
他の文字らしき所は掠れていて読めない。だが、地図はしっかりしたものだ。
(文字ではなく、地図を送る……。待ち合わせ?)
待ち合わせだと思って地図を見ると、目的地に目印が付けられている気がした。
リュシアーナは目を瞑って、思い出す。ファリーナ帝国初期、最初の街を構えたのは、どこだっただろうか。
待ち合わせの地図なら、相手が普段いる場所か、共通の目印から、落ち合う場所までの道であるはずだ。
「…………」
リュシアーナは、最新のブラド山岳地帯の地図に印を書き足した。
その印をもとに古びた地図を回転させる。古びた地図の地形と、今の地形が一致する向きがあるはずだ。
驚くことに、ルカが記さなかった空白地帯に古びた地図の目的地が重なった。そして、鞍部への道らしきものが、古びた地図に書かれていることに気づく。
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