部下に秘密を知られたから口止めとしてセフレになったのに思ってたのとなんか違う!

丸井まー(旧:まー)

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19:悶々

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 アルノーは会議から執務室に戻ると、椅子に座り、小さな溜め息を吐いた。国の重鎮が集まる会議はいつも疲れる。それでも、王都の守護魔術の要である魔導具を最新のものにする承認を得られたのでよしとする。
 アルノーは近くにいた部下に声をかけ、ダミアンを呼んでくるよう頼んだ。

 然程待たずにやって来たダミアンの顔を見ると、アナルがむずっと疼いた。会議でかなり疲れたからアナニーがしたい気もするが、それよりもダミアンとセックスがしたくなる。よくないなぁと思いながらも、アルノーはうずうずするアナルを無視して、ダミアンに話しかけた。


「ごめんね。ダミアン君。忙しいところ来てもらって。王都の守護魔術の要の魔導具を最新のものにすることが決定したんだ。君の研究部に任せたいんだけど大丈夫かな」

「大丈夫です。今やってる研究はひとまず後回しでいいんですよね?」

「うん。要の魔導具の方を優先して欲しいな」

「分かりました。明日までに必要なものを申請しますね。魔導具に必要なものが揃い次第、魔導具を作り始めます。必要なものが揃うまでの間に、王都の守護魔術の要を見て回ってきます」

「よろしく頼むよ。手が足りない場合は相談してね」

「はい。期限はいつまでですか?」

「今年中に全て新しくできたらいいよ。必要な要の魔導具の数が多いし、一つ作るのにもそれなりに時間がかかるからね」

「分かりました。早速研究部の皆と話し合ってきます」

「よろしく頼むよ」

「はい」


 ダミアンがにこっと笑って、足早に去っていった。ダミアンは様々な魔導具を開発しているが、中でも守護魔術の要になる魔導具に関しては群を抜いたものを開発している。今回の仕事はダミアンに任せておけば大丈夫だろう。手が足りなければ、アルノーも手伝えばいい。

 アルノーの専門は攻撃魔術だが、守護の魔術に必要な魔導具についても、それなりにかじっている。新たな魔導具を開発できる程ではないが、既存の魔導具を作るには十分な知識と技術は持っている。
 ダミアンと一緒に魔導具を作るのもちょっと楽しそうな気がする。
 アルノーは機嫌よく書類仕事を始めた。

 少しだけ残業して帰ると、アルノーは真っ直ぐに風呂場へと向かった。汗ばむ身体をシャワーで流しながら、ふと思った。
 ダミアンに大きな仕事を任せてしまったので、もしかして暫くはセックスがおあずけになるかもしれない。
 アルノーは長い髪を洗いながら、むぅっと唇を尖らせた。

 これ以上ダミアンにハマらないように、ダミアンとのセックスはできるだけしないに越したことはないのだが、今もうずうずするアナルがダミアンのペニスを求めている。
 ダミアンが忙しい間は1人でアナニー祭りをしたらいいだけなのだが、なんとなく物足りない気がする。よくないなぁと思うが、快感に弱々過ぎる身体がダミアンを求めていることは否定できない。ダミアンが優しくてテクニシャン過ぎるのがいけない。ダミアンに甘やかされるのにも、かなり慣れてしまっている。

 楽しいアナニーさえできればいいとずっと思っていた。でも最近は、ダミアンとのセックスの方が楽しくなってしまっている。
 アルノーは顔を洗いながら、何気なく自分の唇に指先で触れた。

 ダミアンとキスをしたことはない。キスをしたら、自分の中で何か変わるのだろうか。ダミアンとキスがしたいような、したくないような、微妙な気分だ。
 アルノーが『だめ』って言ったから、ダミアンはキスをしてこない。いっそのこと、しれっとキスをしてくれたらいいのに。そうしたら、アルノーだってダミアンのキスに応えるだろう。

 アルノーは身体を洗いながら、悶々と考え始めた。
 ダミアンとはセフレ関係で終わるべきだ。恋人になっても苦労するのはダミアンだろうし、自分だって周囲に知られたらマズいことになる。
 とはいえ、ダミアンが他の誰かに触れて、甘やかすのを想像すると、もやっとしてしまう。自分はダミアンのことが好きなのだろうか。

 ダミアンとのセックスは最高だ。ダミアンに甘やかしてもらうのも心地いい。
 アルノーは、ダミアンを他の誰かに盗られたくないと思っている自分に気づいた。ダミアンはアルノーのものではない。それなのに、妙な独占欲を抱いてしまっている。
 アルノーは溜め息を吐いて、ぼそっと呟いた。


「よくないなぁ」


 本当によくないと思う。ダミアンのことを好きになってしまったら、きっと苦しい思いをするだけになる。アルノーが平民だったら、こうも悩まずにダミアンのことを堂々と好きになれたのだろうか。
 アルノーはシャワーを止めると、脱衣場に出て身体を拭きながら、とりあえずアナニーをしておこうと決めた。
 ダミアンは今年いっぱい忙しくなる。勿論休みはあるが、アルノーとセックスをする余裕もなくなるだろう。その間にアナニーをしまくっていれば、そのうち身体がダミアンの熱と快感を忘れてくれると期待したい。

 アルノーは長い髪を拭くと、全裸のまま寝室に向かい、隣の小部屋に入って、比較的最近買った『ひだひだ君五号』を手に取った。
 これからアナニーをする。全力でアナニーをしまくる。ダミアンとのセックスを身体が忘れるまでは、ひたすらアナニー祭りを開催する。
 アルノーは浄化球とローションのボトルも手に取り、ベッドへと移動して、早速アナニーを始めた。




ーーーーーー
 ダミアンが残業して帰ると、母のナタリアが居間でぼーっとしていた。


「ただいま。母さん」

「あら。おかえり。ダン。遅かったわね」

「うん。多分、今年中は残業が多くなるかも。大きな仕事を任されたんだ」

「あらやだ。すごいじゃない! 頑張りなさいね。あ、でも無理はしちゃだめよ?」

「うん。まぁ忙しくはなるけど、一応休みの日もあるしね。せっかく任せてもらった仕事だから、完璧にやり遂げたいんだよね。ところで母さん」

「なぁに?」

「ぼーっとしてたけど、どうしたの?」

「え? あーー。ちょっと? 考え事……みたいな?」

「俺に言えること?」

「んーーーー。微妙?」

「ふぅん? 微妙なら言っちゃいなよ。晩ご飯食べながら話聞くよ?」

「えー。んーー。どうしようかしら……」

「悩むくらいならサクッと吐く」

「はぁ……そうね。1人で悩んでてもしょうがないわね。晩ご飯温めてくるから、着替えて手を洗ってらっしゃい」

「うん。ありがとう」


 ダミアンは自室に向かい、楽な私服に着替えると、脱いだ制服を持って階下の脱衣場に行き、洗濯籠に制服を入れてから洗面台で手を洗った。

 食堂でもある居間に行けば、テーブルの上に美味しそうな夕食が並んでいた。ナタリアにお礼を言ってから食べ始めると、ナタリアが紅茶を一口飲んでから躊躇いがちに口を開いた。


「あのね、最近お友達ができたって言ったじゃない」

「うん。前の連休の時にうちでお酒飲んだ人でしょ?」

「そう。で、息子に言うのはかなり……ものすごーーく抵抗があるんだけど……」

「え、なに」

「そのー、あのー……酔った勢いで、あのー……そのー……しちゃった? みたいな?」

「ん? 友達って男だったの?」

「……女の人よ」

「マジっすか」

「マジなのよぉ……どうしたもんかなぁって! すっごく気まずいんだけど! 彼女と会わなくなるのもなんかやだなぁって思ってぇ!」

「母さんが幸せになるなら、俺は相手が女の人でも気にしないけど」

「そう言うと思ったわ。でもでもー。そのー、彼女のこと、そういう意味で好きになれるか分かんないしー。ていうか、私もうお婆ちゃんじゃない。今更恋なんてしてもなーって思ったりー」

「相手は若い人?」

「ううん。同い年。ずっと独身で、家政婦をしてる人なの。買い物に行った時にお店で出会って、なんとなく世間話してたらなんか意気投合しちゃった……みたいな?」

「へぇー。俺は相手が誰でも、母さんが恋をするのには賛成だよ。いくつになっても恋していいじゃない」

「……そうかしら? でもでも、私お婆ちゃんよ?」

「細かいことは気にしないの。老いらくの恋って言葉もあるでしょ。もう一回言うけど、いくつになっても恋していいの」

「そう……かしら……」

「相手の人を俺に紹介する気になったら紹介してよ。母さんを泣かせそうな相手かどうか見極めたいし」

「うぅ……その前に彼女のことが好きなのかどうかよ」

「焦らなくてもいいんじゃない? ゆっくり気持ちを育てていくのもありだと思うよ」

「そう……そうね。そうかもね」

「俺でよかったらいつでも話聞くからさ。自分の心に素直になってみなよ」

「頼もしい息子~! うん。ちょっと真剣に考えてみるわ」

「あんまり根を詰めないようにね」

「はぁい」


 ナタリアの相手が女とは完全に予想外だったが、ダミアンだって同性愛者なのだし、別に気にならない。
 ナタリアと話しながら、ダミアンは頭の片隅で、偉そうに他人のことは言えないなぁとぼんやり思った。

 アルノーへの想いを真っ直ぐに見つめる勇気はまだない。

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