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【小話6】サンガレアの豆まき
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2人でなんとかもぎ取った休みの日にサンガレアに行くと、母屋の居間でとてもテンション高めな天使達に出迎えられた。オフィーリアは12歳、ヴィリオは9歳になっている。
「おかえり!父様!お父さん!」
「おかえり!2人とも早く準備して!」
「準備?」
ナイルは訳が分からなくて首を傾げた。今日は何かあっただろうか。ディリオを見上げれば、同じ様に首を傾げている。
ナイルに抱きついてきたヴィリオを反射的に抱き締めると、ヴィリオがナイルそっくりな眠そうな目をキラキラと輝かせて口を開いた。
「今日は豆まきだよ!」
「あーー。そういや、そうね」
「豆まき?」
豆をまいてどうするのか。育てるのだろうか。ナイルが疑問に思って、納得顔のディリオを見上げると、オフィーリアをくっつけたディリオがナイルの疑問に答えてくれた。
「今日は豆まきの日なんですよ。『鬼はー外ー。福はー内ー』って言いながら、家の中で豆をまくんです。んで、自分の歳の数だけ炒った豆を食べるんですよ。本当は大豆でやるらしいんですけど、うちは殻つきのピーナッツをまきます」
「何だそれ。初めて聞くぞ」
「そういえば、ナイルと豆まきの日にこっちに帰ったことなかったですね。ばあ様の故郷の行事らしいですよ。厄除けの意味があるとかなんとか。多分、やってるのはうちの領地くらいですね」
「ふーん」
「今年の鬼はじい様がやってくれるのよ」
「鬼の人に豆を投げるの」
「え、じい様にピーナッツを投げるのか?」
「「うん」」
サンガレア公爵閣下にピーナッツを投げつけるなんて、どんな暴挙だ。ナイルは顔をひきつらせた。確かに今は家族だし、ナイルの天使達を育ててもらっているが、王兄である公爵閣下にピーナッツを投げるなんて不敬にしか思えない。
これはどうしたらいいのか、とナイルが眉間に少し皺を寄せていると、マーサ様が籠を持って居間に入ってきた。
「あらー。おかえりー。2人とも」
「ただいま、ばあ様」
「ただいま戻りました」
「いいタイミングで帰ってきたわねぇ。今から豆まきするのよ。使うのはこれね。うちで作ったピーナッツ。今年の鬼はリチャードだから、ガンガンぶつけちゃってよ」
「「「はぁーい」」」
「……いや、あの、その……流石に不敬では?」
「えー?いいのよー、別に。ていうか、今年は違うけど、陛下が鬼の年もあるし」
「はいっ!?」
「厄払いも兼ねた身内の遊びですもの。細かいことはいいのよ」
「は、はぁ……」
「あ、食べるピーナッツの数は肉体年齢の数ね。実年齢の分食べてたら大変だもの。はい。皆、升にピーナッツ入れてー」
「「「はぁーい」」」
「ほら、ナイル君も」
「あ、はい」
「他の人達もすぐに来るから。鬼の仮面を着けたリチャードが入ってきたら、全力でピーナッツを投げてぶつけてね。『鬼はー外ー。福はー内ー』って言いながら。リチャードは丈夫だから、思いっきり投げても大丈夫よ」
「は、はぁ……」
「終わったらお昼ご飯よ。恵方巻き代わりにクレープ作ってあるの。海苔を未だに見つけられてないのよねぇ。海辺の地域でも食べられてないみたいで。自分で探しに行けたらいいんだけど、私、神子の務め上、基本的にサンガレアから動けないし」
「海苔?」
「海草?みたいなやつ。乾燥させてシート状にしたやつを使ってお寿司を作るのよ。うちの領地に海があればいいんだけど、内陸地なのよねぇ。寒天は水の宗主国にあったから、海苔もあってもいいと思うのだけど」
「はぁ……」
「そういや、ばあ様。何でサンガレアから出たら駄目な訳?」
「ん?土の神子の務めって基本的に大きく2つあるのよ。1つは土の聖域である土竜の森で地面の下にある地脈の流れを整えるってので、もう1つは子供を産んだり産ませたりってのね。土の神子という媒体を通して地脈に土の神の祝福を流して大陸中に届けることで、世界が実り豊かになるの。それに土の神子が子供を産んだり、産ませたりすると、獣や人の出生率が上がるのよ」
「「へぇー」」
「だいぶ戻ってきたけど、全盛期に比べれば、まだまだ出生率は低いのよねぇ。食糧事情その他を考えると、無計画に出生率を上げる訳にもいかなくて。生まれてくる多くの子供を受け入れられる下地がしっかりしてないと、育てられなかったりとかで、結局死なせちゃうってことになりかねないし。まぁ難しいところなのよー」
「2000年くらい土の神子が不在だったじゃん」
「えぇ。当時の火の神子に殺されたからね。お気に入りの神子を殺されて土の神が拗ねてたせいか、ほぼ2000年ぶりの土の神子が私なのよ。お陰で苦労するわー」
「出生率ってどんくらい下がってんの?」
「私が神子になった時はそれ以前の半分以下ね。今は多少上がってるけど。人だけじゃなくて、動植物も緩やかに減っていってたのよ。医療が発展している水の宗主国が男同士でも子供をつくれる設備と技術を開発したのだって、減少し続ける人口をなんとかしようとしたからだもの」
「なるほど」
「さ、小難しい話はここでおしまい。豆をガンガンまくわよー」
「「「おー!」」」
他の家族達がやって来たので、豆まき開始である。
ピーナッツが山盛りの升を片手に、マーサ様手作りの鬼の仮面をつけた何故か半裸のリチャード様に向かってピーナッツを投げる。ナイルはかるーく投げた。
ディリオや子供達は思いっきりリチャード様にピーナッツを投げつけている。
「「鬼はー外ー!福はー内ー!」」
「地味に痛いっ!」
「それ、鬼はー外ー!うりゃっ!」
「マーサ!乳首を狙うな!」
「半裸でいる方が悪いわよ。ていっ!ていうか何で脱いでんのよ。うりゃっ!」
「気分だ!いてっ!いてっ!だから全員、乳首を狙うんじゃありません!」
「鬼はー外ー!福はー内ー!鬼の弱点は乳首よー!」
「「鬼はー外ー!福はー内ー!」」
ナイルは楽しそうにリチャード様の乳首を目掛けて全力でピーナッツを投げつけているディリオに、こそっと話しかけた。
「鬼の弱点って乳首なのか?」
「さぁ?じい様の弱点は乳首らしいけど」
クックッと笑うディリオはとても楽しそうである。ナイルは升に半分以上残っていたピーナッツを、空になったディリオの升に全部入れた。
「乳首が腫れて大きくなっちゃうだろ!!」
「それはそれで私は楽しい」
「マーサのイジメっ子!」
「全員!リチャードの乳首に集中砲火!」
「「「はぁーい!鬼はー外ー!福はー内ー!」」」
「いっってぇぇぇ!!」
思いっきり乳首目掛けてピーナッツを投げつけられたリチャード様が両手で胸を押さえながら、『やーらーれーたー』と言いつつ、居間から出ていった。
マーサ様達は『鬼に勝ったぞー!』と盛り上がっている。何だこれ。ナイルは、変な家に嫁いじゃったなぁ……と、今更なことをぼんやり思った。
「おかえり!父様!お父さん!」
「おかえり!2人とも早く準備して!」
「準備?」
ナイルは訳が分からなくて首を傾げた。今日は何かあっただろうか。ディリオを見上げれば、同じ様に首を傾げている。
ナイルに抱きついてきたヴィリオを反射的に抱き締めると、ヴィリオがナイルそっくりな眠そうな目をキラキラと輝かせて口を開いた。
「今日は豆まきだよ!」
「あーー。そういや、そうね」
「豆まき?」
豆をまいてどうするのか。育てるのだろうか。ナイルが疑問に思って、納得顔のディリオを見上げると、オフィーリアをくっつけたディリオがナイルの疑問に答えてくれた。
「今日は豆まきの日なんですよ。『鬼はー外ー。福はー内ー』って言いながら、家の中で豆をまくんです。んで、自分の歳の数だけ炒った豆を食べるんですよ。本当は大豆でやるらしいんですけど、うちは殻つきのピーナッツをまきます」
「何だそれ。初めて聞くぞ」
「そういえば、ナイルと豆まきの日にこっちに帰ったことなかったですね。ばあ様の故郷の行事らしいですよ。厄除けの意味があるとかなんとか。多分、やってるのはうちの領地くらいですね」
「ふーん」
「今年の鬼はじい様がやってくれるのよ」
「鬼の人に豆を投げるの」
「え、じい様にピーナッツを投げるのか?」
「「うん」」
サンガレア公爵閣下にピーナッツを投げつけるなんて、どんな暴挙だ。ナイルは顔をひきつらせた。確かに今は家族だし、ナイルの天使達を育ててもらっているが、王兄である公爵閣下にピーナッツを投げるなんて不敬にしか思えない。
これはどうしたらいいのか、とナイルが眉間に少し皺を寄せていると、マーサ様が籠を持って居間に入ってきた。
「あらー。おかえりー。2人とも」
「ただいま、ばあ様」
「ただいま戻りました」
「いいタイミングで帰ってきたわねぇ。今から豆まきするのよ。使うのはこれね。うちで作ったピーナッツ。今年の鬼はリチャードだから、ガンガンぶつけちゃってよ」
「「「はぁーい」」」
「……いや、あの、その……流石に不敬では?」
「えー?いいのよー、別に。ていうか、今年は違うけど、陛下が鬼の年もあるし」
「はいっ!?」
「厄払いも兼ねた身内の遊びですもの。細かいことはいいのよ」
「は、はぁ……」
「あ、食べるピーナッツの数は肉体年齢の数ね。実年齢の分食べてたら大変だもの。はい。皆、升にピーナッツ入れてー」
「「「はぁーい」」」
「ほら、ナイル君も」
「あ、はい」
「他の人達もすぐに来るから。鬼の仮面を着けたリチャードが入ってきたら、全力でピーナッツを投げてぶつけてね。『鬼はー外ー。福はー内ー』って言いながら。リチャードは丈夫だから、思いっきり投げても大丈夫よ」
「は、はぁ……」
「終わったらお昼ご飯よ。恵方巻き代わりにクレープ作ってあるの。海苔を未だに見つけられてないのよねぇ。海辺の地域でも食べられてないみたいで。自分で探しに行けたらいいんだけど、私、神子の務め上、基本的にサンガレアから動けないし」
「海苔?」
「海草?みたいなやつ。乾燥させてシート状にしたやつを使ってお寿司を作るのよ。うちの領地に海があればいいんだけど、内陸地なのよねぇ。寒天は水の宗主国にあったから、海苔もあってもいいと思うのだけど」
「はぁ……」
「そういや、ばあ様。何でサンガレアから出たら駄目な訳?」
「ん?土の神子の務めって基本的に大きく2つあるのよ。1つは土の聖域である土竜の森で地面の下にある地脈の流れを整えるってので、もう1つは子供を産んだり産ませたりってのね。土の神子という媒体を通して地脈に土の神の祝福を流して大陸中に届けることで、世界が実り豊かになるの。それに土の神子が子供を産んだり、産ませたりすると、獣や人の出生率が上がるのよ」
「「へぇー」」
「だいぶ戻ってきたけど、全盛期に比べれば、まだまだ出生率は低いのよねぇ。食糧事情その他を考えると、無計画に出生率を上げる訳にもいかなくて。生まれてくる多くの子供を受け入れられる下地がしっかりしてないと、育てられなかったりとかで、結局死なせちゃうってことになりかねないし。まぁ難しいところなのよー」
「2000年くらい土の神子が不在だったじゃん」
「えぇ。当時の火の神子に殺されたからね。お気に入りの神子を殺されて土の神が拗ねてたせいか、ほぼ2000年ぶりの土の神子が私なのよ。お陰で苦労するわー」
「出生率ってどんくらい下がってんの?」
「私が神子になった時はそれ以前の半分以下ね。今は多少上がってるけど。人だけじゃなくて、動植物も緩やかに減っていってたのよ。医療が発展している水の宗主国が男同士でも子供をつくれる設備と技術を開発したのだって、減少し続ける人口をなんとかしようとしたからだもの」
「なるほど」
「さ、小難しい話はここでおしまい。豆をガンガンまくわよー」
「「「おー!」」」
他の家族達がやって来たので、豆まき開始である。
ピーナッツが山盛りの升を片手に、マーサ様手作りの鬼の仮面をつけた何故か半裸のリチャード様に向かってピーナッツを投げる。ナイルはかるーく投げた。
ディリオや子供達は思いっきりリチャード様にピーナッツを投げつけている。
「「鬼はー外ー!福はー内ー!」」
「地味に痛いっ!」
「それ、鬼はー外ー!うりゃっ!」
「マーサ!乳首を狙うな!」
「半裸でいる方が悪いわよ。ていっ!ていうか何で脱いでんのよ。うりゃっ!」
「気分だ!いてっ!いてっ!だから全員、乳首を狙うんじゃありません!」
「鬼はー外ー!福はー内ー!鬼の弱点は乳首よー!」
「「鬼はー外ー!福はー内ー!」」
ナイルは楽しそうにリチャード様の乳首を目掛けて全力でピーナッツを投げつけているディリオに、こそっと話しかけた。
「鬼の弱点って乳首なのか?」
「さぁ?じい様の弱点は乳首らしいけど」
クックッと笑うディリオはとても楽しそうである。ナイルは升に半分以上残っていたピーナッツを、空になったディリオの升に全部入れた。
「乳首が腫れて大きくなっちゃうだろ!!」
「それはそれで私は楽しい」
「マーサのイジメっ子!」
「全員!リチャードの乳首に集中砲火!」
「「「はぁーい!鬼はー外ー!福はー内ー!」」」
「いっってぇぇぇ!!」
思いっきり乳首目掛けてピーナッツを投げつけられたリチャード様が両手で胸を押さえながら、『やーらーれーたー』と言いつつ、居間から出ていった。
マーサ様達は『鬼に勝ったぞー!』と盛り上がっている。何だこれ。ナイルは、変な家に嫁いじゃったなぁ……と、今更なことをぼんやり思った。
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