学校七不思議

藍澤風樹

文字の大きさ
上 下
8 / 10
花子さんの章

三番目のトイレ

しおりを挟む
休み時間無しの、五・六時限目ぶっ通しの化学の実験が終わった後、恵理子はトイレへ駆け込んだ。
実験室のある北棟は文字通り北にあるから日当たりが悪く、お陰で暗くて寒い。
トイレも例外ではなく、暗くてじめじめしていてあまり行きたくはなかったけれど、本館のトイレに行くまで我慢は出来なかった。
お昼休みにジュース飲み過ぎちゃったかな……。

用を足して一安心しつつ手を洗っていると、背後でぎぃっと木の軋む物音がした。

「?!」

驚いて振り向くと、四つ並んだ個室トイレの三番目のドアがゆっくりと開いて、中から生徒が出て来るところだった。

何だ、私だけかと思ってたら、他にも入っている人いたんだ。
そう思って、流しっぱなしにしていた蛇口を止めて振り向くと、さっき個室から出てきた生徒がすぐ側に居た。

「こんにちは」

そう言って、にっこり笑い掛けてくる。

「こ、こんにちは…?」

反射的に答えた後、恵理子は首を傾げた。

誰?
この人、同じクラスじゃないし……。

腰まである綺麗な黒髪。
恵理子の様にウェストで折り曲げてミニスカートに仕立てた制服とルーズソックスではなく、通常のロングスカートと足首までのスクールソックスという、校則の見本のような女生徒だ。

挨拶を交わした後、教室へ戻るべくトイレのドアを開けようとした恵理子を、その生徒が呼び止めた。

「ねぇ、霊感あるって本当?」

これまで何度と無く尋ねられた問いかけ。
そして何度と無く口にした、その返答。

「ええ」
「へぇ。そうなの。じゃあ、御祓いも?」
「一応はね」

いつも通り優越感を持ちながら答えると、女生徒が笑った。
そして、その笑顔のまま、

「じゃあ、これも見えるよね」

声と同時に、ざわっと空気が騒いだ。
文字通り。

「え?」

そしてタイル張りであるはずのトイレの床が変化した。
無数の手がその床から生えて、恵理子の足へ絡みついてきた。
しおりを挟む