【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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架向--1

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リビングでくつろいでいると、父さんが声をかけてきた
架向かなた、ちょっといいか」

問題集から顔をあげると、二人掛けのソファーに親父と父さんが腰かけていた。
父さんは沈痛な面持ちで、親父は…父さんの手を握れているのだ、言うまでもなくデレているが、表情には表れていない。いつでも父さんに触れていたい親父と、その辺の機微がわからない父さん
「…………二人目?」
避妊失敗?父さんをこれ以上奪われたくないから二人目は作らないって親父言ってなかったっけ?
「違う!」
父さんが真っ赤になって否定した。
そうか、違うのか。まぁ、親父が失敗をするなんてことはありえないしな。いや、父さんの事ではそうとも言い切れないか。
とはいえ、離婚…だけはあり得ないし。そうなった日には俺がこんな風に過ごせているわけないし。

架向かなた、俺の名前は親父がつけた。
父さんが妊娠するといくつもいくつも候補の名前を列挙したらしい。
父さんは根負けして、その中から選んだ。

『人と人の架け橋、その向こう側の景色って思いだよ。地画もいいんだよ。温厚で明るくって気配りもできるから人気者になれる名前だぞ~~』

…それ、絶対違う。
架っていうのは架け橋というやつだ。親父が考えているのは『子はかすがい』。鎹という漢字が名前に使えなかったからの苦肉の策だ。架、この文字を使うことで、子供に自覚を促しているのだ。お前は私の道具だと。陸が私から離れないための道具としての自覚を持てと。

俺は京極の長男だから、父さんを見せたくない親父が代替え手段として俺をいろいろな所に駆り出す。いわゆる上流階級のパーティーってやつ。かなり上のαとも出会うが…親父より上位と思われる人とは出会ったことがない。
そんな化け物に道具であり続けろと言われたら、従うしかない。

「あ、あの、な、架向かなた、落ち着いて聞いてくれよ?ゆう君が転校することになったんだ」

「あ、そうなんだ。」

「え?え?そ、それだけ…???」

「え?いや寂しいけれど?」

父さんが、目を白黒させている。

「だから大丈夫だと言っただろう、陸。」

親父がギュッと父さんの手を握った。

「けど……。」

父さんが俺を心配そうに見つめる。辛くないか?無謀なことに走らないか?

親父が父さんの太ももをトントンと軽く叩いた。慰めるという意図しか感じ取れないそんな触り方だったけれど、正面に座っている俺には、親父の目が邪になっているのが分かった。陸の太ももに触れれた。陸の視線を独占するな。…この人、二重人格だ。番への性欲爆裂させつつ息子を脅す

納得がいかない父さんに親父が言う。

架向かなたはゆう君にそれほど思い入れがないんだよ。淡い初恋は親御さんの離婚とともに砕け散ったからな。その程度の想いさ。その程度では…」

そこで親父は言葉を切った。大して執着してないならビッチングは不可能だ、そう言わずして父さんにそう思わせる。親父は嘘は言っていない。最愛の番に嘘は言っていない。もしも知られても陸がそう思い込んでいただけだという逃げ道を確保している。

架向かなた、もう、ゆう君の事はいいのか??」

父さんが探るように聞く

「うん」

ゆう君の事が好きだと思っていた。
両親のことを嬉しそうに話すときのその声を。
夏休みに両親と出かけるのを楽しみにしているその顔を。

でも…
『うちの親、離婚するんだ…』
悲しみに暮れるゆう君の顔を見て冷めたのだ

俺は…ゆう君が好きだと思ってた。
けれど…違ったのだ。
ゆうくんの家庭に憧れていたのだ。両親に愛されるゆうくんに。優という名前に深い意味がないというゆうくんに。無条件に両親に愛されるゆうくんに。

「ゆうくんのことはもう何とも思ってないんだ。友達だから少しは寂しいけれど。」

「ほらな、陸は心配すぎなんだ。少しは私の言うことも信じてくれ。」

父さんはまだまだ心配なのか、心ここにあらずという感じで。親父に手を弄ばれていても気が付いていないようだ。内股もそわそわされているのに…

「…私は少し席をはずす」

親父が突然ソファから立ち上がった。

「へ?まだ話は済んでないのに、なん………。…………」

さいてーだ。父さんがぶつぶつとつぶやく。
あ~、うん。俺も最低だと思うよ。

「あ~、架向かなたは大丈夫なんだな?」

「うん」

「…………」

父さんが居た堪れなさそうにしている。
そりゃぁそうだろう。思春期の息子の前で夫が自分に欲情してトイレに行ったのだから。

「あ、あのさ、紅茶おかわりいるか?」

「うん。おねがいします」
……逃げたな。
父さんがそそくさとキッチンに向かう。

5LDKの京極にしては小さな家。
建築家に依頼して父さんの理想をすべて埋め込んだリビング階段な家。
キッチンに行くにも寝室に行くのも風呂に行くのもこのリビングを通るしかない。
そして父さんは家にいるとき、大半の時間をここで過ごす。
当然ながら親父も、そしてなんとなく俺も。
そんな俺たちを見て父さんは穏やかな顔をしている。

暖かい家庭のゆう君に惚れた。俺にはないものだと思っていたから。
でも違った。
ゆうくんちだっっていろいろあって、うちだってこうやってリビングに集まって…こうして父さんは俺を心配してくれる。そして、なんだかんだ言っても親父も俺の事を大事にしてくれている。親父はおれのゆう君に対する執着の度合いを分かっていた。だから、あの時の警告も簡易なものだった。そう、なんだかんだ言って、親父もまた俺を見てくれているのだ。

「陸、私にもくれ」
トイレから戻ってきた親父が言う。
「………わかった」
父さんが目をそらしながら答えた

………
いや、父さん!
リビング階段は失敗だろう!
こんな卑猥物を通過させなきゃいけないどこにも行けない間取りってどうなんだよ!


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