異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ

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王都防御壁の通行門

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乱暴に馬車の扉が開かれる。

兵士としては意識して乱暴にしているわけではない。
手入れをされていない古い馬車で、罪人等を運ぶためにたまに使われるだけなので、建て付けが悪いのだ。

「降りろ」

葛葉愛は城を出発してからここに到着するまで、馬車内の壁にぐるりと備え付けられている箱型の椅子に座ることなく床に居座ったまま、恨みがましい目で清泉と鈴木有人を睨みつけていた。

扉の前の床に居座る葛葉愛が動かないと、清泉も鈴木有人も外に出ることができない。

「おい女!お前が降りなければ、男たちが降りられないだろう!引きずり降ろされたいのか!!」

兵士の一人に罵倒されて、やっと葛葉愛が動き始めた。
何を考えているのか、メガネを外して三つ編みを解き、ゆっくりと立ち上がる。
扉に掴まりながら馬車を降りた途端、よろめいたフリをして兵士に抱き着いた。

「あ…ごめんなさい。馬車の中で座らせてもらえなかったから、足が痺れてしまって…」

兵士は兜を被っていてその表情は見えないが、明らかに葛葉愛に視線を移すことなく、御者を見た。

「兵士さん、その女の言ってることは嘘ですよ。ちゃんと監視してました。その女は男たちが何度座れと言っても座らず、床から動かずに男2人に悪態ついてましたよ」

「やはりな…この女を連れてきた者たちの様子が変だったのは…」

葛葉愛に抱き着かれた兵士は、決して視線を葛葉愛に向けることなく一度頷き、馬車の周りにいる兵士全員に聞こえるように声を張った。

「王命が下るまで、3人は別々のに入れる!詳細が分かり次第、スキル封印の刻印を押す処置をすることになるだろう!このまま追放するか国境まで護送するかは、刻印が押されるまでに決める!連れていけ!」

(スキル封印の刻印を押す?)

その言葉の意味を清泉は必死で考えた。

(スキルを封印されたら、こいつらからもこの国からも逃げることができなくなる。時間が無い。すぐにでも逃げ出さなければ)

そんなことを考える清泉のすぐ横で、鈴木有人が召喚されてから見せていなかった表情を見せ始めていることに、清泉は気付いていなかった。

葛葉愛は城から追い出されるとき以上の反抗を見せるも、屈強な兵士たちの力には敵わず、真っ先に通行門の方へ連れて行かれた。

「お前たちも降りろ」

清泉のシャツをしっかりと握りしめながら清泉の胸に顔を埋めていた鈴木有人が顔を上げる。

『あれ?今だったら、振り切れる?』

今の今まで震えていたのが嘘のように、のほほんと鈴木有人が言う。

『この数の兵士相手に逃亡は無理じゃないか?』

『さすがダメなパターンの召喚…』

清泉は鈴木有人を支えながら、ゆっくりと馬車を降りる。
子どもの頃のトラウマが蘇り、まだ鈴木有人は冷静になることができないように見えた。

そんな2人に、先ほど葛葉愛に抱き着かれた兵士が近付いてきた。
まるで会話を他の兵士に聞かれたくないとでもいう程、近くに。

「遠隔でも馬車内の会話は聞いていた」

聞かれてヤバそうなこと燭台と収納については日本語で話して良かったと胸を撫で下ろす清泉だった。

自分の過去を聞かれたと知った鈴木有人が目を見開いて兵士を見ると、声のボリュームをぎりぎり聞き取れるくらいまで抑えた兵士が話し始めた。

「スキルではなく魔道具だ。本来この馬車は罪人に使われるため、馬車内で逃亡の計画を立てていないか、犯した罪を隠していないか等を探るために使われる、聞き耳の魔道具というのがあるのだ。あの女が加害者で、お前は被害者なんだな?」

「…はい」

鈴木有人が消え入りそうな声で答える。
「男が女に襲われるなんて」という好奇の目に曝された過去が蘇ってきて、体が冷たくなっていくのと同時に、鈴木有人の

「あの女と、一緒に行動する気は、ないな?」

「「ありません!」」

清泉と鈴木有人の声が重なる。

「どのような王命が下っても、あの女がお前たちとここから同行できないようには、配慮してやる。といっても、俺の権限では時間差で出発できるよう手配するくらいしかできないがな」

「あ、ありがとうございます。あの…」

スキル封印について尋ねようとした清泉の言葉を遮り、心遣いをみせてくれた兵士は他の兵士たちに、清泉と鈴木有人を通用門に連れて行くように指示を出した。
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