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むろん、仁右衛門の働きは大きい。透波として火遁、火薬の扱いに通じ、あらかじめ掘っておいた彗星の“落下跡”へと正確に火矢を飛ばし、放った矢を誰にも見られることなく先回りして回収するという手並みは尋常のものではない。
「かの変事の吉兆を知りたい」「吉兆、どちらにも転じるものでございます」
慎重な口調で告げる宗麟に在昌は自信を持って応じるが、それは出鱈目だ。
結句のところ、陰陽師の卜占を依頼者が信じるかどうかも陰陽師自身の態度に左右される部分が大きい。自信なさげに告げれば信用されず、確信を持ってつたえれば信を置く、京では散々にそういう出来事に遭遇しており経験として彼は知っている。
そのため、彗星自体が自演であることなどおくびにも出さない。露見すれば信用を失うどころか家族にも累が及ぶことも充分に考えられるため全身全霊で臨んでいた。
「どちらにも転じる」
聞き返す宗麟の声が緊張を帯びた。もともと“なにかにすがりたい”という思いの強い人間なのだ。家族や重臣に裏切られた過去が、既知の人や宗門以外で信用に足るものを彼に求めさせる。
「さよう。されど、このまま手立てを施さぬままであれば確実に彗星は凶兆となりまする」
「手立てとな。いかがすればよい」
いっさい疑う気配もなく、すがるような口調で宗麟が言葉をかさねる。
「かの変事の吉兆を知りたい」「吉兆、どちらにも転じるものでございます」
慎重な口調で告げる宗麟に在昌は自信を持って応じるが、それは出鱈目だ。
結句のところ、陰陽師の卜占を依頼者が信じるかどうかも陰陽師自身の態度に左右される部分が大きい。自信なさげに告げれば信用されず、確信を持ってつたえれば信を置く、京では散々にそういう出来事に遭遇しており経験として彼は知っている。
そのため、彗星自体が自演であることなどおくびにも出さない。露見すれば信用を失うどころか家族にも累が及ぶことも充分に考えられるため全身全霊で臨んでいた。
「どちらにも転じる」
聞き返す宗麟の声が緊張を帯びた。もともと“なにかにすがりたい”という思いの強い人間なのだ。家族や重臣に裏切られた過去が、既知の人や宗門以外で信用に足るものを彼に求めさせる。
「さよう。されど、このまま手立てを施さぬままであれば確実に彗星は凶兆となりまする」
「手立てとな。いかがすればよい」
いっさい疑う気配もなく、すがるような口調で宗麟が言葉をかさねる。
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