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船で鎮西から南海道へといたる道程にある。
元亀元年というのは、これまで上り調子で来た織田信長の前に数々の苦難が立ちふさがった年だ。姉川の役で浅井、朝倉を破ったものの決定的な痛手を与えることはできなかった。一方で、三好三人衆をはじめ信長上洛によって追い出された旧勢力もまた反抗に転じたことから畿内一帯が騒然とした状況に陥っている。
だが、今の在昌はとてもでなないが彼を心配する状態にはない。蒼白な顔で船べりに体をあずけ脱力していた。剣の業前においてはなかなかのものを持つ彼だが、船酔いの前ではそんなものは意味をなさない。
もっとも、勘解由小路氏に生気がないのはなにも船酔いだけではなかろうが――。
この年、在昌にとっては色々と大きな出来事があった。
まずもっとも重大なのは彼の師、ヴィレラが天竺送りになったことだ。熱心に布教するあまり、体力の限界を無視して働きついに倒れるにいたった。これを心配した布教長トルレスは彼を天竺に送ることにしたのだ。日の本にいては何をどういったところで無理にでも動いてしまうため、それを防ぐための処置だった。過剰とも思えるが、京で切支丹追放令が出ても畿内をはなれず堺で布教をつづけるなどの孤軍奮闘に近い行為におよんでいたことを考えればかならずしも過ぎた対応ではないだろう。
あの御仁は物静かながら苛烈な魂を持っておられた――それが仁右衛門のヴィレラ評だ。
しかし、そんなヴィレラを気づかった老トルレスもまた世を去った。ザビエルと共に日本へと布教へとやって来た日の本における最古参が逝去したことはけっしてちいさな出来事ではない。
その後、カブラルという司祭(パードレ)があらたな布教長として来日している。これがまたどうしようもない難物だ。
元亀元年というのは、これまで上り調子で来た織田信長の前に数々の苦難が立ちふさがった年だ。姉川の役で浅井、朝倉を破ったものの決定的な痛手を与えることはできなかった。一方で、三好三人衆をはじめ信長上洛によって追い出された旧勢力もまた反抗に転じたことから畿内一帯が騒然とした状況に陥っている。
だが、今の在昌はとてもでなないが彼を心配する状態にはない。蒼白な顔で船べりに体をあずけ脱力していた。剣の業前においてはなかなかのものを持つ彼だが、船酔いの前ではそんなものは意味をなさない。
もっとも、勘解由小路氏に生気がないのはなにも船酔いだけではなかろうが――。
この年、在昌にとっては色々と大きな出来事があった。
まずもっとも重大なのは彼の師、ヴィレラが天竺送りになったことだ。熱心に布教するあまり、体力の限界を無視して働きついに倒れるにいたった。これを心配した布教長トルレスは彼を天竺に送ることにしたのだ。日の本にいては何をどういったところで無理にでも動いてしまうため、それを防ぐための処置だった。過剰とも思えるが、京で切支丹追放令が出ても畿内をはなれず堺で布教をつづけるなどの孤軍奮闘に近い行為におよんでいたことを考えればかならずしも過ぎた対応ではないだろう。
あの御仁は物静かながら苛烈な魂を持っておられた――それが仁右衛門のヴィレラ評だ。
しかし、そんなヴィレラを気づかった老トルレスもまた世を去った。ザビエルと共に日本へと布教へとやって来た日の本における最古参が逝去したことはけっしてちいさな出来事ではない。
その後、カブラルという司祭(パードレ)があらたな布教長として来日している。これがまたどうしようもない難物だ。
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