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法龍が死んで、自分だけが悲しんでいるような心境に陥っていた。
だが、そんなことはなかったのだ。考えてみれば当たり前のことに気づかされる。
「仲直りの品」
やや呆然と、むめは視線をさげ“それら”を見つめた。
その内訳は、簪に手鏡というものだ。上品でいて華やかな意匠、色使いの品だった。
「それを見れば、お前さんにどのように生きてほしかったか、わかろう」
伊兵衛の横に座している智徳がここではじめて口を開く。やかわらかな口調だが、その視線にはどこか哀愁がただよっていた。
ここにも師の死を悼む者がいる。
むめは“独り”ではない。
智徳がほほ笑みながら告げる。
「死しても、人はつながるのだ。“思い”や“記憶”というものでな。法龍が伊兵衛を気づかう思いが、わしとの出会いをつないだ」
「思い、に記憶」
むめは今、重い鎧兜を脱ぎ捨てたような心地になっている。
確かに鎧兜は身を守ってくれる。軍立場で命を守るには必要なものだ。だが、常日頃から四六時中、そんなものをまとっていればどうなるか。
人間は疲れて果ててしまう。
だから、どこかで無防備になれる場所が必要なのだ。
「だがな、時にそれらは重荷となることもある。吐き出すことも必要となるのだ」
「されど、それは“独り”では叶わない」
訥々と語る両者を前に、むめは泣き出したいような気持ちになっていた。
「なにを今さら、繰言を」
それでも、彼女の心に“根ざしたもの”がふたりをふりはらおうとする。
だが、そんなことはなかったのだ。考えてみれば当たり前のことに気づかされる。
「仲直りの品」
やや呆然と、むめは視線をさげ“それら”を見つめた。
その内訳は、簪に手鏡というものだ。上品でいて華やかな意匠、色使いの品だった。
「それを見れば、お前さんにどのように生きてほしかったか、わかろう」
伊兵衛の横に座している智徳がここではじめて口を開く。やかわらかな口調だが、その視線にはどこか哀愁がただよっていた。
ここにも師の死を悼む者がいる。
むめは“独り”ではない。
智徳がほほ笑みながら告げる。
「死しても、人はつながるのだ。“思い”や“記憶”というものでな。法龍が伊兵衛を気づかう思いが、わしとの出会いをつないだ」
「思い、に記憶」
むめは今、重い鎧兜を脱ぎ捨てたような心地になっている。
確かに鎧兜は身を守ってくれる。軍立場で命を守るには必要なものだ。だが、常日頃から四六時中、そんなものをまとっていればどうなるか。
人間は疲れて果ててしまう。
だから、どこかで無防備になれる場所が必要なのだ。
「だがな、時にそれらは重荷となることもある。吐き出すことも必要となるのだ」
「されど、それは“独り”では叶わない」
訥々と語る両者を前に、むめは泣き出したいような気持ちになっていた。
「なにを今さら、繰言を」
それでも、彼女の心に“根ざしたもの”がふたりをふりはらおうとする。
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