『スプラッシュ・サマー・キス♡』〜アイドル達の夏と恋と″ホラー″〜

のびすけ。

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『スプラッシュ・サマー・ラブソング♡ 〜この夏、キミに出会えてよかった〜』

白鐘ここね『きみと何度でも恋をして、やっと未来で結ばれた』

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パステルピンクの照明がステージを優しく包む。

会場全体が、まるで夢の中にいるような雰囲気に包まれていく。



ゆっくりと歩み出る少女。

栗色のウェーブヘアを揺らし、シュシュを結んだ白鐘ここねは、いつも通りのふわふわ笑顔――だけど、その目だけは、まっすぐに何かを見つめていた。



(あの日からずっと、わたしは同じ一日をくりかえしてた。

 水たまりを踏むたび、また朝がきて、またあの子に出会って、また――好きになって。

 でも、何度恋しても、次の日にはきみがいなくなっちゃうの)



イントロが流れ始める。

ピアノの旋律が、水面に落ちた涙のように静かに響いた。



曲名は《Re:One Day》。



(わたしだけが、覚えてる。

 きみの声、きみの手、きみの優しさ。

 でも、きみはいつも“はじめまして”って笑うの。

 くやしくて、さみしくて、それでも――きみが、好きだった)



スポットライトがここねを包み込み、彼女の唇から繊細な歌声がこぼれる。



♪また 朝がきて きみに出会うの

 だけど きみは わたしを知らない♪



(何回目かの朝で、やっと気づいたんだ。

 これがきっと、“さよなら”に向かう恋なんだって。

 それでも、わたしはきみに伝えたかった。何度でも。何回目でも――)



サビで手を大きく広げて、観客に向かって微笑む。



その姿はまるで、未来の“誰か”を信じて待っている女の子のようだった。



(そして、ライブの日。

 時が動いて、リツくんが現れてくれた。もう、消えたりしない“本物のリツくん”。

 きっと、あの繰り返しの日々は、未来で彼に会うための、準備だったんだ)



照明が揺れ、ステージ全体に水面の反射のような模様が映る。

水に映った“記憶”のように、淡く儚い光。



(今日、こうして歌ってるわたしを、あの夏のわたしが見たら、きっとびっくりするだろうな。

 だって、“はじめて恋をした日”から、ずっと泣いてばっかりだったんだもん)



間奏でここねは手を胸に当てて、そっと目を閉じる。



(でも、今は違うよ。

 わたしは未来を信じてる。リツくんと、ちゃんと明日を生きてる。

 だからこのステージも、きみのために歌うの)



後半の歌詞に入ると、ここねの声はどこまでも澄んでいて、優しかった。



♪未来あしたで やっと きみと笑える

 “はじめて”じゃない でも いちばん大切な日♪



(わたし、やっと未来に辿りつけたんだ。

 もう、あの水たまりに戻る必要なんてない。だって、きみが隣にいるから)



ラストのフレーズ、観客に向けて、まっすぐなまなざしで言葉を放つ。



「それが、わたしの――《スプラッシュ・サマー・キス♡》」



照明がゆっくりと落ちていく。

だけどその目には、はっきりと“明日”が映っていた。
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