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『スプラッシュ・サマー・ラブソング♡ 〜この夏、キミに出会えてよかった〜』
黒咲りりあ『#好きって、言える私になったから』
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「りりあちゃん、出番です!」
スタッフの声が聞こえた瞬間、心臓が跳ねた。
なのに、わたしの足はすごく軽かった。
だって、もう迷ってなんか、いないから。
ステージ袖の暗がりから一歩踏み出した瞬間、会場を埋め尽くすペンライトが、まるで星空みたいに広がった。
黒と碧のカラー。りりあの色。わたしの色。
(わたし、アイドルだから。カワイイが仕事だし、ツンもデレも全部演じてきた。
でもあの日、“あの海”で出会ったキミの前では、なにも隠せなかった)
「――みんなっ! 今日は、ありがと♡ 最後まで、ちゃんと“見ててよね”?」
軽くウインクを投げてから、音が始まる。
重低音のビートに乗せて、指先をツイストしながらターンを決める。
曲名は《#Like_U》。
(あの夜、SNSで繋がった奇妙な世界で、わたしだけを見てくれた“澪”。
言葉じゃなくて、視線だけで通じ合った。最初はこわかった。でも、気づいたの。
わたし、ずっと“誰かに本気で好きって言ってほしかった”だけなんだって)
ドレスの裾がひらりと舞う。
ゴシック調のフリルも、今日の光に包まれて、ちょっとだけ柔らかく見える。
(“好き”って言われて、“本気”だって信じられたの、生まれて初めてだった)
サビに入ると、背後のモニターに、りりあの加工済み自撮りがどんどん流れていく。
だけど最後に映ったのは、メイクもしてない、澪が撮ってくれた笑顔のりりあ。
「……あっは♡ それ、映すなんて聞いてないしっ!」
わざと怒ったようなツン顔を作って、会場の笑いを誘う。
でも、目は潤んでる。ほんとは、すごく嬉しかったから。
(あのライブ配信で、わたしは“死ぬまでに好きって言って”って投稿してた。
冗談のつもりだった。でも、キミはそれに、本気で応えてくれた)
ラストのフレーズ。踊りを止めて、まっすぐ前を見据える。
口元には、もうツンも照れもない。ただ“本当のわたし”がいる。
「澪、わたし……本当に、好きになっちゃったから。これからも――ちゃんと見ててよね?」
会場がしん……と静まり返る。
そして一拍遅れて、割れるような拍手と歓声。
(あの夏の夜、澪と交わしたキス。魂と魂が繋がったような気がした。
それは夢だったかもしれない。でも、今日ここで歌ってる私は、その奇跡の証)
瞳に滲んだ涙を、そっと指で拭ってから――
「#それが、わたしの“スプラッシュ・サマー・キス”♡」
ラストポーズは、胸に手をあてて、瞼を閉じて。
ステージの照明がゆっくり落ちる中、
りりあの笑顔だけが、いつまでも輝いていた。
スタッフの声が聞こえた瞬間、心臓が跳ねた。
なのに、わたしの足はすごく軽かった。
だって、もう迷ってなんか、いないから。
ステージ袖の暗がりから一歩踏み出した瞬間、会場を埋め尽くすペンライトが、まるで星空みたいに広がった。
黒と碧のカラー。りりあの色。わたしの色。
(わたし、アイドルだから。カワイイが仕事だし、ツンもデレも全部演じてきた。
でもあの日、“あの海”で出会ったキミの前では、なにも隠せなかった)
「――みんなっ! 今日は、ありがと♡ 最後まで、ちゃんと“見ててよね”?」
軽くウインクを投げてから、音が始まる。
重低音のビートに乗せて、指先をツイストしながらターンを決める。
曲名は《#Like_U》。
(あの夜、SNSで繋がった奇妙な世界で、わたしだけを見てくれた“澪”。
言葉じゃなくて、視線だけで通じ合った。最初はこわかった。でも、気づいたの。
わたし、ずっと“誰かに本気で好きって言ってほしかった”だけなんだって)
ドレスの裾がひらりと舞う。
ゴシック調のフリルも、今日の光に包まれて、ちょっとだけ柔らかく見える。
(“好き”って言われて、“本気”だって信じられたの、生まれて初めてだった)
サビに入ると、背後のモニターに、りりあの加工済み自撮りがどんどん流れていく。
だけど最後に映ったのは、メイクもしてない、澪が撮ってくれた笑顔のりりあ。
「……あっは♡ それ、映すなんて聞いてないしっ!」
わざと怒ったようなツン顔を作って、会場の笑いを誘う。
でも、目は潤んでる。ほんとは、すごく嬉しかったから。
(あのライブ配信で、わたしは“死ぬまでに好きって言って”って投稿してた。
冗談のつもりだった。でも、キミはそれに、本気で応えてくれた)
ラストのフレーズ。踊りを止めて、まっすぐ前を見据える。
口元には、もうツンも照れもない。ただ“本当のわたし”がいる。
「澪、わたし……本当に、好きになっちゃったから。これからも――ちゃんと見ててよね?」
会場がしん……と静まり返る。
そして一拍遅れて、割れるような拍手と歓声。
(あの夏の夜、澪と交わしたキス。魂と魂が繋がったような気がした。
それは夢だったかもしれない。でも、今日ここで歌ってる私は、その奇跡の証)
瞳に滲んだ涙を、そっと指で拭ってから――
「#それが、わたしの“スプラッシュ・サマー・キス”♡」
ラストポーズは、胸に手をあてて、瞼を閉じて。
ステージの照明がゆっくり落ちる中、
りりあの笑顔だけが、いつまでも輝いていた。
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