『スプラッシュ・サマー・キス♡』〜アイドル達の夏と恋と″ホラー″〜

『スプラッシュ・サマー・ラブソング♡ 〜この夏、キミに出会えてよかった〜』

エピローグ①「アンコールは、未来のために」

「アンコール！ アンコール！ アンコール！」



嵐のような手拍子と歓声が、会場を揺らしていた。

照明は落ち、真っ暗なステージ。けれど、その闇さえも観客の熱で染まっていく。



舞台袖。

5人の少女たちは、ぎゅっと円を組んで手を重ね合った。



「……よし、いくよ。最後まで、最高の夏にしよ？」



春風ももかの声に、みんなが頷く。

さっきまでの汗と涙がまだ頬に残るけれど、それさえも今は光って見える。



ステージ中央に光が射す。



――タンッ。



水無月あおいが一歩、音を刻むように床を蹴った。



続いて、幽谷しずくの銀の髪がふわりと舞う。

白鐘ここねのシュシュが、柔らかく揺れる。

黒咲りりあが、クイッとツインドリルを整えて、ウィンク。



そして5人が並び、声を重ねた。



「せーのっ！」



『SPLASH☆SUGAR、ラストサマーパフォーマンス――はじめますっ♡』



大歓声が爆発した。



イントロが流れ出す。

この日のために書き下ろされた新曲《Future♡Drop》。



（未来は、まだ見えないけど――きっと、ここにある）



ももかのステップは軽やかで、けれど力強い。

彼女の視線の先には、もう一度めぐり逢えた“彼”の姿が焼き付いている。



（怖がらないでいい。わたしは、誰かを信じる強さを手に入れた）



あおいはセンターで拳を突き上げる。

瞳はまっすぐ、遠くの観客席へ。…いや、それ以上の“どこか”へ向けて。



（鏡の中の恋も、時を越えた出会いも、すべては本物だった）



しずくはフリルの裾を翻して、まるで宙を舞う精霊のように踊る。

儚げな笑みをたたえながら、ひときわ強くスポットライトを受け止めた。



（また、きみに会えた。きみがいてくれる未来を、生きてみたくなった）



ここねはステージを駆けるように、光の海を渡っていく。

ほんの一瞬、観客席に手を振るその仕草が、とても愛おしい。



（もう、隠さない。大好きって、何度でも言える。だって……）



りりあはラストサビでセンターに飛び込むと、ドンと両足で着地し、

ハートのポーズを決めた。



『#みんなの未来、最高にキラキラさせてあげるっ♡』



それが、彼女たち全員の想いだった。



巨大スクリーンに映し出される5人の笑顔と、輝く文字。



「This was our… SPLASH☆SUMMER☆KISS！」

「and this is just the beginning.」



最後のポーズで、全員がピースを空に掲げる。

まるで、夏空に向けて誓いを立てるかのように。



ステージは、静寂に包まれた――。



けれど、その静けさを破ったのは、

あたたかく、果てしない拍手の音だった。



鳴りやまない、鳴りやまない。

それはまるで、観客の“ありがとう”が音になったみたいで――



その中で、5人は見つめ合う。



「これからも、一緒に進もうね。」



未来への第一歩を、もう踏み出していた。