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アフターストーリー『ディズニー♡プリンセスナイト』
プロローグ「秋風に誘われて、夢の国へ」
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金木犀が香る十月の風に乗って、SPLASH☆SUGARの5人がやってきたのは――夢と魔法の王国、ディズニーランドだった。
「はーいカット!今のすっごく良かったですっ!」
スタッフの声が飛ぶたび、ももかがにこっ、と笑って手を振る。栗色のツインお団子が揺れて、ピンクのチュチュが光を弾く。ステージではなく、パレードルートでのレポートなのに、彼女の笑顔は100%アイドルだった。
「ももかちゃん、そのままミニーちゃんともう一カットいいですか?」
「もっちろんですっ♡」
撮影用のラベンダーピンクのミニードレスをひらりと翻して駆け出したももかを見て、後ろであおいが小さくため息を漏らす。
「…派手すぎじゃない…?」
そう口では言いつつも、あおいはさっきからずっと、さりげなくカメラを気にしていた。ミッキーの帽子をちょこんと被って、白いシャツとネイビースカートでシンプルながらも清楚なコーデ。長い黒髪が光を帯びて、彼女らしい静かな華やかさがそこにあった。
「――あの、もうちょっと寄っていいですか?今の目線、すごくいいです」
カメラマンのその言葉に、あおいは小さくうなずいて、目線を外す。ふと、どこか遠くを見ていた。
(明日、来てくれるよね……)
その視線の先に、誰かの姿を思い描いて。
「しずくちゃん、背景と衣装の色味がぴったりで素敵です!」
「ん。森の中に帰ってきたみたい……ふふ。ここには、何かがいるよ」
ファンタジーランドでの撮影中、しずくは深緑のドレスに身を包み、魔女の杖を手にしていた。ほんのりとした微笑み、紫の瞳――まるで本物の童話から抜け出したような空気。
「やだ~しずくちゃん、またそういう怖いこと言ってるぅ」
「……怖くないよ。好きな人となら、どこでも楽しい。ね?」
小声で囁いたそのひとことに、スタッフが「えっ、何て?」と聞き返す前に、彼女はくすくすと笑っていた。
「ここねちゃん、ハニーハントでのナレーションお願いしまーす!」
「はい、がんばりますぅ~!」
ほんわかした笑顔で応えるここねは、淡いピンクのワンピースに、首元のピンクシュシュを揺らしていた。衣装もカメラも、彼女のふんわりとしたオーラに包まれて、みんながつられて笑顔になる。
(……あの人にも、見てもらえたらいいな)
ほんの少しだけ真顔になるその瞬間、いつもの天然とは違う“大人びた少女”の横顔が、レンズの奥に焼きつけられた。
「さあ、りりあちゃんのソロパートでーす!」
「はぁ!?最初から最後までセンターなの当然でしょ?カメラ、もっとこっち寄りなさい!」
ゴシックロリータドレスの裾をひるがえしながら、りりあは堂々と撮影エリアに踏み込んだ。その碧い瞳はキラキラと光を湛え、ツインドリルが風を孕むたび、観客のざわめきすら巻き込んでいく。
「りりあ様、可愛さ爆発ですぅ♡」
スタッフの歓声に、満足げに微笑みながらも、彼女はさりげなくスマホをチェックした。
(既読、ついてる。……なら、来るよね?)
一瞬見せた不安げな表情は、ほんのコンマ数秒。誰にも見せたくない、本当の“恋する乙女”の顔だった。
そして、撮影終了の合図とともに、マネージャーがスタッフ陣と何やら話し込んだ後、メンバー全員に声をかけた。
「みんな、今日も最高だったよ!実はね――スポンサーさんからサプライズ!」
「……え?」
「明日、完全オフにしていいって!その代わり……今夜と明日、ミラコスタに二泊、プレゼントだって♡」
「えええええええええええええええええええっっっっ!?!?」
ももかの絶叫がパーク中に響いた。すぐに他のメンバーも絶叫級の歓声を上げて、手を取り合って跳ねる跳ねる。ミニーの耳が吹き飛びそうな勢いで。
「ミラコスタぁ!?ヤバッ!え、しずくちゃん、今日って夢じゃないよね!?ね!?」
「……夢だけど、起きなくていい夢、だと思う」
「もう、どうしよう……パジャマとか用意してないよぉ~♡」
ここねがほわほわ泣き笑いしながらスーツケースを押していると、りりあがツンと鼻を鳴らした。
「ま、当然の待遇でしょ。りりあ様たちは国民的アイドルなんだから!」
でも、口元はちゃんと、緩んでいた。
ミラコスタ――
その名を聞いただけで、胸が跳ねるような憧れの空間。
チェックインを終え、5人はそれぞれの部屋に案内された。
大理石のエントランス、開放的な吹き抜け、ロビーに流れるクラシックの音色。
どこもかしこも美しくて、魔法の世界の延長にいるみたいだった。
「ちょ、見てこれベッドふっかふか~!絶対一生寝れるぅ~!」
「このお風呂、温泉かと思った……」
「でも……本番は、明日なんだよね」
ぽつりと、あおいが言った。
誰もが、言葉にはしないけれど心の奥で思っていたこと。
明日――“彼”が来る。
そう信じているから、今夜はちょっとだけ……ガールズトークが止まらなかった。
「――でね! あの時、“食べる?”って言われて、うんって頷いたら、ラムネアイスをそのまま口に入れられて……」
水無月あおいが、ベッドに頬を埋めながらも珍しく表情をほころばせると、
それだけで、部屋にいた他の4人はワーッと盛り上がる。
「それって、実質キスじゃん! 口に入れられるの反則すぎるよーっ!」
黒咲りりあがツインドリルを揺らして叫ぶ。もふもふのパジャマに、ちょっぴり上気した頬。
「んー……まあ、あれは“前戯”ってやつ? うふん♥」
「りりあちゃん、ちょっと黙ろうか」
幽谷しずくが、持っていたホラーノートを閉じながらツッコミを入れる。が、本人の声があまりに無表情すぎて、なぜか全員が余計に笑ってしまう。
「じゃ、順番にいこっか? 今夜は“キスした場所”発表会♡」
春風ももかが、ぱちんと手を叩いた。
大きめのリボンのナイトキャップに、ふわっと巻かれた髪。アイドル仕様のネイルを外した手が、なんだか急に“ふつうの女の子”っぽい。
「じゃあ、わたしからね?」
ももかがそっと笑う。
「……あのね。プールの裏手にある倉庫の中。雷が鳴ってて、ふたりで手を繋いでたとき――
『だいじょうぶ、ぼくがいるよ』って言われて……そのまま……ちゅって。ね?」
「うわああ、ももかちゃんらしすぎて……エモエモ!」
「いいなあ……でも、倉庫って湿っぽくない?」
「しずくちゃん、それ言わない!」
そうして、順番は――白鐘ここねへ。
「……わたしはね。学校の音楽室、だったの」
みんなが少し静かになる。
「誰もいない放課後、ピアノの前でふたりきりになって……
心配だったこと、わたしが全部話したあと――彼が、そっと近づいてきて……
『もう、繰り返さなくていいよ』って……抱きしめられて」
ここねの声がふるふると震える。
「……それから、ピアノの椅子の上で……おでこがくっついて、そのまま、キスしたの。
……なんだか、時間が止まったみたいで、すごく……静かで、やさしくて、涙出そうになった」
全員、胸を押さえてうっとりしてしまう。
「尊い……」「アニメみたい……」「ここねちゃん、すごすぎ……」
しずくは、少し口を開いて黙っていたが、やがて小さく呟くように口を開いた。
「……わたしは……神社の裏の水場、かな」
「えっ、また怖い話じゃないよね?」
「ちがうよ、すごく静かで……あの子、もうすぐ消えるかもしれないってときに……
『きみに会えて、よかった』って言って、ぎゅって……
……そして、鏡みたいな水の上で、唇がふれたの。まるで夢みたいに」
その言葉に、また全員がしん……として、そしてぽわっと顔を赤くする。
そして、最後はりりあ。
「……わたしも、あるよ」
少し拗ねたような声で、けれど胸を張って言う。
「海辺のライブ配信中、みんなが見てる前で……
誰にも見えてなかった、あの子とだけ、世界が繋がって。
……『大好きだよ』って言われて、それから……わたしから……しちゃったの」
わずかに照れながらも、りりあの碧眼が誇らしげに輝いた。
「……じゃあさ」
ももかが、小さく囁く。
「みんな、明日はもっとすごいこと、起こるかもね?
だって、“その人”と――今度は、ディズニーでデートだよ?」
その瞬間、部屋の温度がふっと一度上がった気がした。
「えっ、お風呂一緒に入るってこと?」「ミラコスタの夜景、ヤバくない?」「朝まで一緒……とか?」
お互いの目を見合わせて、全員がくすくす笑い出す。
そう信じているから、今夜はちょっとだけ……ガールズトークが止まらなかった。
「はーいカット!今のすっごく良かったですっ!」
スタッフの声が飛ぶたび、ももかがにこっ、と笑って手を振る。栗色のツインお団子が揺れて、ピンクのチュチュが光を弾く。ステージではなく、パレードルートでのレポートなのに、彼女の笑顔は100%アイドルだった。
「ももかちゃん、そのままミニーちゃんともう一カットいいですか?」
「もっちろんですっ♡」
撮影用のラベンダーピンクのミニードレスをひらりと翻して駆け出したももかを見て、後ろであおいが小さくため息を漏らす。
「…派手すぎじゃない…?」
そう口では言いつつも、あおいはさっきからずっと、さりげなくカメラを気にしていた。ミッキーの帽子をちょこんと被って、白いシャツとネイビースカートでシンプルながらも清楚なコーデ。長い黒髪が光を帯びて、彼女らしい静かな華やかさがそこにあった。
「――あの、もうちょっと寄っていいですか?今の目線、すごくいいです」
カメラマンのその言葉に、あおいは小さくうなずいて、目線を外す。ふと、どこか遠くを見ていた。
(明日、来てくれるよね……)
その視線の先に、誰かの姿を思い描いて。
「しずくちゃん、背景と衣装の色味がぴったりで素敵です!」
「ん。森の中に帰ってきたみたい……ふふ。ここには、何かがいるよ」
ファンタジーランドでの撮影中、しずくは深緑のドレスに身を包み、魔女の杖を手にしていた。ほんのりとした微笑み、紫の瞳――まるで本物の童話から抜け出したような空気。
「やだ~しずくちゃん、またそういう怖いこと言ってるぅ」
「……怖くないよ。好きな人となら、どこでも楽しい。ね?」
小声で囁いたそのひとことに、スタッフが「えっ、何て?」と聞き返す前に、彼女はくすくすと笑っていた。
「ここねちゃん、ハニーハントでのナレーションお願いしまーす!」
「はい、がんばりますぅ~!」
ほんわかした笑顔で応えるここねは、淡いピンクのワンピースに、首元のピンクシュシュを揺らしていた。衣装もカメラも、彼女のふんわりとしたオーラに包まれて、みんながつられて笑顔になる。
(……あの人にも、見てもらえたらいいな)
ほんの少しだけ真顔になるその瞬間、いつもの天然とは違う“大人びた少女”の横顔が、レンズの奥に焼きつけられた。
「さあ、りりあちゃんのソロパートでーす!」
「はぁ!?最初から最後までセンターなの当然でしょ?カメラ、もっとこっち寄りなさい!」
ゴシックロリータドレスの裾をひるがえしながら、りりあは堂々と撮影エリアに踏み込んだ。その碧い瞳はキラキラと光を湛え、ツインドリルが風を孕むたび、観客のざわめきすら巻き込んでいく。
「りりあ様、可愛さ爆発ですぅ♡」
スタッフの歓声に、満足げに微笑みながらも、彼女はさりげなくスマホをチェックした。
(既読、ついてる。……なら、来るよね?)
一瞬見せた不安げな表情は、ほんのコンマ数秒。誰にも見せたくない、本当の“恋する乙女”の顔だった。
そして、撮影終了の合図とともに、マネージャーがスタッフ陣と何やら話し込んだ後、メンバー全員に声をかけた。
「みんな、今日も最高だったよ!実はね――スポンサーさんからサプライズ!」
「……え?」
「明日、完全オフにしていいって!その代わり……今夜と明日、ミラコスタに二泊、プレゼントだって♡」
「えええええええええええええええええええっっっっ!?!?」
ももかの絶叫がパーク中に響いた。すぐに他のメンバーも絶叫級の歓声を上げて、手を取り合って跳ねる跳ねる。ミニーの耳が吹き飛びそうな勢いで。
「ミラコスタぁ!?ヤバッ!え、しずくちゃん、今日って夢じゃないよね!?ね!?」
「……夢だけど、起きなくていい夢、だと思う」
「もう、どうしよう……パジャマとか用意してないよぉ~♡」
ここねがほわほわ泣き笑いしながらスーツケースを押していると、りりあがツンと鼻を鳴らした。
「ま、当然の待遇でしょ。りりあ様たちは国民的アイドルなんだから!」
でも、口元はちゃんと、緩んでいた。
ミラコスタ――
その名を聞いただけで、胸が跳ねるような憧れの空間。
チェックインを終え、5人はそれぞれの部屋に案内された。
大理石のエントランス、開放的な吹き抜け、ロビーに流れるクラシックの音色。
どこもかしこも美しくて、魔法の世界の延長にいるみたいだった。
「ちょ、見てこれベッドふっかふか~!絶対一生寝れるぅ~!」
「このお風呂、温泉かと思った……」
「でも……本番は、明日なんだよね」
ぽつりと、あおいが言った。
誰もが、言葉にはしないけれど心の奥で思っていたこと。
明日――“彼”が来る。
そう信じているから、今夜はちょっとだけ……ガールズトークが止まらなかった。
「――でね! あの時、“食べる?”って言われて、うんって頷いたら、ラムネアイスをそのまま口に入れられて……」
水無月あおいが、ベッドに頬を埋めながらも珍しく表情をほころばせると、
それだけで、部屋にいた他の4人はワーッと盛り上がる。
「それって、実質キスじゃん! 口に入れられるの反則すぎるよーっ!」
黒咲りりあがツインドリルを揺らして叫ぶ。もふもふのパジャマに、ちょっぴり上気した頬。
「んー……まあ、あれは“前戯”ってやつ? うふん♥」
「りりあちゃん、ちょっと黙ろうか」
幽谷しずくが、持っていたホラーノートを閉じながらツッコミを入れる。が、本人の声があまりに無表情すぎて、なぜか全員が余計に笑ってしまう。
「じゃ、順番にいこっか? 今夜は“キスした場所”発表会♡」
春風ももかが、ぱちんと手を叩いた。
大きめのリボンのナイトキャップに、ふわっと巻かれた髪。アイドル仕様のネイルを外した手が、なんだか急に“ふつうの女の子”っぽい。
「じゃあ、わたしからね?」
ももかがそっと笑う。
「……あのね。プールの裏手にある倉庫の中。雷が鳴ってて、ふたりで手を繋いでたとき――
『だいじょうぶ、ぼくがいるよ』って言われて……そのまま……ちゅって。ね?」
「うわああ、ももかちゃんらしすぎて……エモエモ!」
「いいなあ……でも、倉庫って湿っぽくない?」
「しずくちゃん、それ言わない!」
そうして、順番は――白鐘ここねへ。
「……わたしはね。学校の音楽室、だったの」
みんなが少し静かになる。
「誰もいない放課後、ピアノの前でふたりきりになって……
心配だったこと、わたしが全部話したあと――彼が、そっと近づいてきて……
『もう、繰り返さなくていいよ』って……抱きしめられて」
ここねの声がふるふると震える。
「……それから、ピアノの椅子の上で……おでこがくっついて、そのまま、キスしたの。
……なんだか、時間が止まったみたいで、すごく……静かで、やさしくて、涙出そうになった」
全員、胸を押さえてうっとりしてしまう。
「尊い……」「アニメみたい……」「ここねちゃん、すごすぎ……」
しずくは、少し口を開いて黙っていたが、やがて小さく呟くように口を開いた。
「……わたしは……神社の裏の水場、かな」
「えっ、また怖い話じゃないよね?」
「ちがうよ、すごく静かで……あの子、もうすぐ消えるかもしれないってときに……
『きみに会えて、よかった』って言って、ぎゅって……
……そして、鏡みたいな水の上で、唇がふれたの。まるで夢みたいに」
その言葉に、また全員がしん……として、そしてぽわっと顔を赤くする。
そして、最後はりりあ。
「……わたしも、あるよ」
少し拗ねたような声で、けれど胸を張って言う。
「海辺のライブ配信中、みんなが見てる前で……
誰にも見えてなかった、あの子とだけ、世界が繋がって。
……『大好きだよ』って言われて、それから……わたしから……しちゃったの」
わずかに照れながらも、りりあの碧眼が誇らしげに輝いた。
「……じゃあさ」
ももかが、小さく囁く。
「みんな、明日はもっとすごいこと、起こるかもね?
だって、“その人”と――今度は、ディズニーでデートだよ?」
その瞬間、部屋の温度がふっと一度上がった気がした。
「えっ、お風呂一緒に入るってこと?」「ミラコスタの夜景、ヤバくない?」「朝まで一緒……とか?」
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