『スプラッシュ・サマー・キス♡』〜アイドル達の夏と恋と″ホラー″〜

アフターストーリー『ディズニー♡プリンセスナイト』

中幕「夢の終わりじゃなく、始まりの夜へ」

ミッキーの笑顔とともに、夜のディズニーランドに光が満ちる。

それぞれが恋人と過ごした夢の時間――
でも、約束どおり、五人の少女たちは再び集まった。

「お待たせーっ！　……って、みんなめっちゃいい顔してない？ にやにやしすぎ！」

ももかが両手をぶんぶん振って走ってくると、
そのあとから照れくさそうに歩く男子の姿がぞろぞろと。

「やっぱさぁ……ディズニーって恋の魔法、かかるよねっ！」

「……うん。たしかに“特別な日”って、こういうことだよね」
あおいがやわらかく笑うと、しずくも「ふふ」と頷く。

そして――

「うぅ、手、離したくない……。もっとくっついてたい……」
りりあはもう、完全に“デレ期MAX”で澪の腕にしがみついたままだ。

ここねは、隣を歩く少年とさりげなく指先を重ねながら、そっと呟いた。
「今日のきらきら、ずっと忘れないよ……」

カラフルなパレードが始まり、キャラクターたちが光の海を進んでいく。
音楽が胸を打ち、光が夜空を染めて――

「わぁ……きれい……！」

歓声と一緒に、空へ花火が打ち上がった。
ぽん、ぽん、と光が弾けるたび、
誰もが自然と、恋人の手をぎゅっと強く握る。

「ねぇ……こういうとき、チューするの、あり？」

「う、うん……。その、今なら、たぶん、いいかな……」

花火の音に紛れて、そっと唇を重ねるカップルもちらほら。

それぞれが見ているのは、夜空じゃなかった。
――隣にいる“たったひとり”。

パレードが終わる頃には、五人と五人の恋人たちは
すっかり“恋人モード”の空気になっていた。

ミラコスタへと戻るバスの中、
ちょっとだけ眠そうに、でもどこか興奮気味に揺られて。

ロビーに入ると、きらびやかな吹き抜けとシャンデリアが出迎えてくれる。

「……すごい、これが本物のホテルなんだぁ……」

しずくが小さく感嘆すると、
「うん、まるでお姫さまになった気分だね」
とここねが囁いた。

夕食は、ミラコスタ自慢の豪華ビュッフェ。

蟹のグラタン、ローストビーフ、トリュフのリゾット、
見たことないようなデザートプレートに、みんなの目が輝く。

「ヤバい、ヤバい……絶対一日じゃ食べきれないって！」

「だからさ、ふたりで分けっこしよ？」
澪が言えば、りりあは「……うん♡」と即答。

ももかは彼とスイーツの取り合いになりながら、
「ほらー！ いちごショートはももかの♡」と笑い合い、
あおいは少し照れくさそうに小声で「……あーんして？」とお願いしていた。

最後の一口まで、たっぷり堪能したあと――

テーブルに残るのは、笑顔と少しの緊張。

「じゃあ……そろそろ、お部屋、行こっか」

誰かのその一言に、
五組のカップルたちは自然と目を合わせる。

“今夜”は、まだ終わらない。
むしろ――

ここからが、ふたりの“本当の時間”。

「……じゃ、じゃあねっ、また明日の朝ビュッフェでっ！」

「あっ、えっ、ちょ、しずく、そんなに急がなくても……！」

「うわー、ここねも走ってった！」

「じゃ、じゃあ、ボクらも……えへへへっ♡」

照れたような、期待に満ちたような。
カップルたちは、次々にそれぞれの部屋へと姿を消していく――
ドアの向こうに、静かで甘い夜が待っていると知って。