『スプラッシュ・サマー・キス♡』〜アイドル達の夏と恋と″ホラー″〜

プロローグ 〜忘れられない夏の始まり〜

《SPLASH☆SUGAR》サマーライブ！

午後五時、海沿いの野外ステージに、きらめくライトと歓声が満ちていた。

焼けたアスファルトの匂い、遠くに聞こえる波の音、そして――



「せーのっ！ SPLASH☆SUGAR、サマーライブ、開☆演っ！」



五つの声が重なった瞬間、爆発するような拍手と歓声がステージを揺らした。

会場はこの夏最大のアイドルイベント《SUNSUN★フェス》。そのトリを飾るのが、いま最も注目されている小学生アイドルユニット――《SPLASH☆SUGAR》だった。



その人気はすさまじく、チケットは数分で完売。最年少センターのりりあを筆頭に、全員がSNSでもトレンド入りする美少女たち。だがただ可愛いだけじゃない。ダンスも歌もMCも、全力で“届ける”ことに命をかける彼女たちのステージは、見る者の心を奪う。



ステージ中央、マイクを握ったももかが笑顔で叫ぶ。



「みんなーっ！　今日のためにいっぱい練習してきたから、最後まで楽しんでいってねっ！」



それに続くのはクール系ビューティー、あおい。



「汗と涙のリハ、ムダにしない。全部出し切って、最後に勝つのは私たちだから」



後ろで踊るしずくが、ふわりとした声で囁くように笑う。



「水の音、聴こえる？　きっと、ここにいるみんなの想いが波になってるの……ふふ」



その横で、柔らかな笑顔のここねが客席を見渡す。



「えへへ……会えるって、嬉しいよね……。うん、今日もキミがいてくれて、ほんとに、よかった……！」



そして、センターでツインドリルを揺らしながら、りりあがキメる。



「アタシたちが、今年の夏をいっちばんキラキラにしてあげる♡　最後まで、ぜーったい目、離しちゃダメだよっ！」



イントロが流れる。ステージに色とりどりのライトが交差し、観客のボルテージが一気に跳ね上がる。



『スプラッシュ・サマー・キス♡』

『ラブ×ウォーター×メモリーズ』

『きみに、濡れてもいいですか？』



この夏の新曲3連発が、海風に乗って夜空に響く。

少女たちは、汗と涙と笑顔をすべて振りまいて、誰よりも眩しい光となった。



──そして、ライブは大成功のうちに幕を閉じた。



「……つっかれたぁ～～～っっ！！」



ライブが終わった直後の楽屋。

ふかふかのソファにダイブしたのは、センターの黒咲りりあ。黒のツインドリルが跳ねて、派手なヘアアクセが床に転がった。



「りりあちゃん、まだ衣装なのにっ！」

慌てて抱きとめたのは、ふんわりした空気をまとう白鐘ここねだった。



「……うぅー……しぬほど汗かいたー。でも盛れた！ 今日のライブ、ぜったいバズる♡」

りりあが満足そうにウィンクすると、鏡の前のメンバーがくすっと笑う。



⭐️黒咲 りりあ⭐️12歳とは思えぬ華やかさで、碧い瞳に吸い込まれそうになる“ゴシック小悪魔”。

身長146cm、体重36kg、スリーサイズはB70・W52・H74。スタイルも顔立ちもアイドル映え抜群で、

今もっともフォロワー数が伸びている。自撮りと加工アプリには目がなく、

最近のブームはミントチョコアイスと“映えるショート動画の研究”。



「でも、#夏の夜にキスしたら戻れない…って、都市伝説知ってる？ この町、けっこうやばいらしいよ」



「え、ちょっとやめてよ～……。怖い話は、眠れなくなるよぉ……」

ここねが涙目でりりあの袖を引く。ふわふわのウェーブヘアが揺れ、肩のリボンがちょこんと揺れた。



⭐️白鐘ここね⭐️身長149cm、体重36kg。スリーサイズはB71・W53・H74。

絵本から飛び出したような柔らかい雰囲気と、桜色のシュシュがよく似合う。

性格は天然でおっとりだけど、芯は強くて、誰よりも「人の気持ちに敏感」な子だ。

趣味は日記がわりのカメラ撮影、好きな食べ物は桃の缶詰。

最近は「時間をテーマにした小説」にどハマりしているらしい。



「昨日と同じことが、また起こった気がして…変かな？ なんだか、ずっとぐるぐるしてる感じ……」



「……鏡って、向こう側から誰かが見てる気がするの…ふふっ」

その呟きに、楽屋がすっと静まり返った。



鏡台の前、紫の瞳でゆっくりとまばたきしているのは幽谷しずく。

銀髪のロングストレートに、白いワンピースのような衣装が映えて、まるで幽霊そのもの。



⭐️幽谷しずく⭐️身長144cm、体重35kg、スリーサイズはB69・W51・H72。細身のシルエットと透き通るような肌に、

ミステリアスな微笑みが特徴的。

怪談と星空が大好きで、好きな食べ物は冷やし白玉ぜんざい。最近は心霊スポットの配信にもハマっている。



「……七つ目のナゾは、まだ、誰も解いてないんだよ」



「お、おばけとかやめてって！　現実的じゃないの、そういうの！」



ぴしっと座り直したのは、スポーティーな黒髪ボブの水無月あおいだった。



⭐️水無月あおい⭐️身長151cm、体重38kg。スリーサイズはB72・W54・H75。すらりと伸びた手足に、

アイドルというよりアスリートのような風格がある。



普段は無口で感情を出さないが、仲間のことになると誰よりも熱い。

登山、サバゲー、ホラー映画をこよなく愛し、最近はサバイバル系のゲーム実況に夢中。

好きな食べ物はラムネアイス。ライブの前には必ず食べて“スイッチ”を入れるのがルーティンだ。



「無人島ロケって聞いたけど…夜は絶対外出禁止らしいよ。ま、気の緩みは命取り、ってこと」



「え～でもあたし、そういうとこ好きかも。ねえねえ、自由時間あるかなー？」



最年長でリーダーの春風ももかが、汗を拭きながら笑う。

桃色のツインテールがきらきらと揺れ、誰よりも“アイドルらしい”華やかさを振りまいていた。



⭐️春風ももか⭐️身長147cm、体重37kg、スリーサイズはB70・W52・H73。

瞳が大きくて、表情が豊かで、どこにいても視線をさらってしまう存在。

性格は元気でリーダーシップに満ちているが、実は涙もろくて感受性が強い。

趣味はクロスワードと日記。好きな食べ物はもちろん、いちごパフェ。

いま一番気になってるのは、海辺にあるという“閉館された図書館”。



「この町の古い図書館、ちょっと気になってるの。なんか、呼ばれてる気がするんだよね……」



「それ、完全にフラグじゃん！」

「行っちゃダメなやつだよね」

「でも……面白そう」



笑い声が交錯する。けれど、誰も気づかなかった。

窓の外――夜の海に、波間から何かがこちらを見ていたことに。



その夜。少女たちはまだ知らない。

それぞれが出会う「この夏だけの物語」は、ただの青春じゃない。

それは、命が揺らぐほどの恐怖と、

心と身体の深い結びつきを描く、

かけがえのない――恋の始まりだった。