異世界転生しても武は無視できません。~異世界格闘ファンタジー(?)~

ベンゼン

文字の大きさ
6 / 12
異世界にて……

6.人体急所<金的>(前)

しおりを挟む
   私が泊まることになった道場の名前は、「全国空手道連盟捻転流」というものの本部だった。
   道場主はおよそ強者とは思えない体つきであったが、その雰囲気は圧倒的だった。
「ようこそ。私は金精 捻蔵」
「私は大石植原剛達だ」
「聞かない名前だが、旅のものか?  まぁ、数日は好きに休めばいい」
   金精はなれたように言った。

   食事等も提供してもらい、八日程たつと、私は怪我も治りすっかりよくなった。
   そして、私がよくなったのを確認した金精が私を道場に呼び出した。
「君は、旅のものだろう?  それなりには腕がたつようだが、すぐに出ていきなさい」
  彼は 威圧するようにそういいはなった。
「私の実力では不十分ですか?」
「君の戦った木村は、闘技者fighterの中でも実力は下の下だといっていいだろう。そして彼の柔道は本気ではなかった事はいうまでもないだろう?  君では不十分なのは明白だ」
   私は武道家だ。
   齢十七の若輩者ではあるが、これまでで自らを武道家と自負するだけの鍛練は積んできたつもりだ。
「私は、もっと強くなる。今でも強い」
   はっきりと言った。
「ならば、我々の会話はここまでだ。後はそうするしかないだろう……」
   金精はそう言うと、ゆったりと立ち上がり、構えた。
   身体を前屈させ、拳を構える……見たことのない構えだ。
   私は後屈立ちを選択した。

『構えとは、その者が使うものを如実に表す。ボクサーがグラップラーのクラウチングスタイルをとることはまずないだろう。では、見たことのない構えに出くわしたらどうするだろうか?  構えにはいくつかのポイントがあるが、ここでは制空権と重心について考えよう。まず制空権であるが、単純に言うと、手の位置である。ボクシングのように身体に手を密着させれば制空権は狭く(グローブで弾いたりすることができ、避けることが主体であるため)、空手の前羽の構えのように手を前に出せば、自分と相手の間に一枚壁を作り、制空権を広げる(実践の裸拳顔面ありを想定しているため、しっかりと相手の拳のベクトルをずらす、いなすといったことが必要。裸拳は大きさも小さく、グローブがついていないため当たると痛いので、受けるにもこつがいる)ことができる。これを見てわかるのは(必ずしもそうとは限らないが)相手が攻撃主体か防御主体かである。一般に攻撃主体であると手技の出しやすい制空権の狭い構えになる。逆に防御主体の構えであると小さい動きで相手の攻撃を捌く、また相手に攻撃をしにくくさせるため制空権は広くなる。そして、重心であるが、これは単純に前ならば攻撃主体、後ろならば防御主体と言えるだろう。右の場合、大石植原剛達は相手を攻撃だと判断し、見たことのない構えだったため危険と判断し、防御の後屈立ちを選択したといえる。』

「せやぁ」
   気合いと共に拳が飛んでくる。
   内受け、外受け、上げ受け、手刀受け、あらゆる受けで攻撃を受ける。
   主に人体急所を狙ったそのラッシュはカジュケンボを彷彿させた。
   私は、ファーストコンタクトを全て受けきった。
   その慢心もあったのだろうか。私は地獄を見た。
「フッシ、ュ」
   呼吸と共に再び攻撃が来る。
   いきなりの右ストレート……上げ受けで受けた後、重心移動を使った渾身の逆突き……
「ギャアッ」
   突然、私は激痛に襲われた……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

処理中です...