《完結》『沈黙の騎士と秘密の代筆屋』
誰も知らない場所に、小さな部屋がある。
細い路地の奥、苔むした石畳の先。
看板もなく、扉も古びていて、まるで“見つけられないように”そこにあるかのようだった。
中には、魔法書が積み重なった本棚と、灯りの弱いランプ。
湿った紙と古いインクの匂いが、ほのかに漂っている。
この部屋で言葉を書き、生きている少年がひとり。
──代筆屋。
そう名乗ってはいるけれど、依頼人はそう多くない。
彼の書く手紙は、時に優しすぎて、時に痛々しいほど正確で。
それを必要とする者は、この町ではほんのわずかだった。
けれどそれでもいいと、少年は思っていた。
誰にも気づかれなくていい。
見つけた人だけが、ここに来ればいい。
そうして今日もまた、少年はインク壺の前に座り、静かにページを開く。
そして──
その扉が、初めて“沈黙”によって叩かれる。
振り返ると、雨の匂いを纏った男が、扉の外に立っていた。
言葉を持たない、ひとりの騎士だった。
本編17話/番外編5話予定
ゆるゆる更新
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そして──
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番外編
後日譚
新婚旅行編
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