強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬

文字の大きさ
4 / 17

sideレオンハルト

しおりを挟む
ルイスと初めて出会ったのは、とても寒い雪の日だった。

パンを買って、紙袋を抱えて歩いていた時に視界に入った。

今は使われない店の屋根の下で小さくなって雨宿りしている子供がいた。
こんな雪の中で、貧しい家がない子供か?

そういう子供は裏路地に集まっているという噂を聞いていた。
だから見た事はなかった、ここは裏路地の子供を嫌っている貴族が多い場所だ。

知らせるだけ知らせて帰ろうと思った。

少年の前に立ち、裏路地の子供ではないと気付いた。
身なりはちゃんとしている、膝を曲げて大きなカバンを抱えていた。

「君、こんなところで何をしているんだ?」

「…っ、家出…」

俺の顔を見て、何故か驚いていて小さく呟いた。

その時、腹が大きく鳴り響いて少年の顔がみるみる赤く色付いていく。
腹が減っているのか、俺の手元にはパンしかない。

紙袋からパンを取り、少年に差し出すと呆然とした顔になった。

恐る恐るパンを両手で包み込んで「ありがとう」と微笑んだ。

その瞳が、今まで見た中で一番キラキラと輝いていた。

地面に座るのは初めてだが、ここは屋根があるから雪は積もっていない。

少年の名前はルイス・ナイトフロウと言う。
ナイトフロウといえば、あまりいい噂を聞かない子爵家か。
あんな家だと、家出したくなるのも頷ける。

すぐにルイスを探しに来たメイドにより、連れていかれた。

俺とルイスの関係はそれだけでは当然終わらない。

同じ街に住んでいるんだ、数日後再会する事になった。

もう一度会いたくて、俺がルイスを探していたからだ。
ルイスは何度か家出をしていて、俺が自分の家の庭にルイスを招待した。

家の中に入れようとしたが、ルイスは庭の隅っこでいいと離れなかった。
ならばせめて風除けは必要だとテントを張って一緒に暮らした。

ほんの数日の話ではあるが、一分一秒大切な時間だった。
俺も子供だけど、こんなに子供っぽい事をした記憶はない。

ルイスが見つかったのは、ルイスと同じ歳くらいの少女だった。
偶然テントから顔を出すと「レイラ!?」と声を上げていた。

知り合いか…でもなんで庭にいるのか謎だ。

レイラと呼ばれた少女は父親の仕事で偶然ここに来たようだった。
ルイスを連れ戻しに来たわけではないのに「迷惑は掛けられないから」と帰る事にした。

何故帰るんだ?ずっとここに居ればいいのに…

どうすればルイスは帰らなくなるのだろうか。

父親の仕事で頻繁に家に訪れるレイラを見つめて考える。
一生懸命話題を振るが、俺は空返事しかしなかった。

何故、ここにいるのがルイスではないのか。

ルイスとは時々街で出会うが、家出はもう止めてしまったみたいだ。
目が合うと挨拶をしてくれるが、それだけの関係に戻ってしまった。

俺が学園に通ってから会う日も減り、俺が卒業するとルイスが入学してすれ違いが続いた。

これほどまでに寄宿舎に恨みを感じた事はない。

20歳を迎えて、俺ははっきりとこの気持ちが分かった。

「ナイトフロウ子爵家から婚約の申し込みがありました」

「婚約…?」

「貴方の好きにしていいわ」

母はそう言って、俺は即答で申し込みを受けた。

兄弟がいるとか考えずに、俺はルイスからの申し込みかと思っていた。
俺はルイスが好きなんだ、ルイスの綺麗な瞳に俺を映してほしかった。

しかし、顔合わせに来たのは全く知らない人間だった。

彼女には悪いが、俺はすぐに婚約破棄をした。

ルイス以外なんて考えられない、ルイスを…ルイスだけしか愛せない。

好きだと自覚しても、どうしたらいいのか分からない。
ルイスに素直に伝えて、好きになってくれるのか?

俺の欲望を見て、怯えさせるかもしれない。

ルイスに拒絶されたら、俺は生きる希望がなくなる。

あの手紙が来るまで、本気でそう思っていた。







ーーー

「…ぅ」

「お目覚めですか?レオンハルト様」

目が覚めると、真っ白な天井と薬品のにおいがした。
横を見ると、医者の男は笑みを浮かべていた。

ここは病院か、頭が微かに痛くて触れると包帯の感触がした。

確かあの日、俺に呼び出しの手紙が届いたんだ。
知らない名前の人物だったが、筆跡は知っている。

ルイスが家出で俺の家の庭で過ごした時、勉強を教えていた。
あの時から、ずっとここにはいられないと分かっていたのかもしれない。

呼び出す手紙は普通とは違い、想いが込もっていた。

俺と同じ気持ち?恥ずかしがり屋なルイスならあり得る。

ルイスに呼ばれたところに向かい、まさか後ろから誰かに襲撃されるとは思わなかった。

すぐに剣を手の中に出現させて、振り下ろすが意識はなくなった。

薄暗い中目を覚ましたらルイスの声が聞こえた。
顔が見たかったのに、ルイスはまた何処かに行こうとしていた。

「ここから出すから、落ち着いて付いて来て」

出す?出る?何処から行くんだ?ここでもいいだろ。
何故いつもルイスはいなくなってしまうんだ、俺が繋ぎ止めなくては…

ルイスが何処かに行く気が起きないように、抱くつもりだった。
口では嫌だと言ってもちゃんと反応してくれた。

俺の興奮も高まっていき、そのせいで本番前に倒れた。

興奮で気絶なんて恥ずかしい…ルイスにこんな情けない姿は見せられない。

それに急ぎすぎていたかもしれない、あんなに大切にしようと思ったのに。

両想いでも怖い思いをしたかもしれないから、謝りたい。

やはりこういうのは、ちゃんと告白してからだ。

安静の期間が終わり、ルイスに会いに家に向かった。
今の時期は学園が休みだから、実家に居るはずだ。
俺を出迎えたのはメイドで、ベアトリーゼの元婚約者が来て驚いていた。

俺が用があるのはルイスだけだが、ベアトリーゼが来たら面倒だ。
今すぐにベアトリーゼを呼びに行こうとしたから引き止めた。

「俺はルイスに会いに来たんです」

「ルイス…様?ルイス様ならお部屋に…」

「ありがとう」

ルイスの部屋まで案内しようとするメイドを断り、歩き出した。
外からルイスの家を見つめた時、偶然ルイスの姿が窓から見えた。
これは偶然ではなく、運命だと俺は思っている。

ルイスの部屋の前でドアをノックしようとしたら、大きな物音が聞こえた。

慌ててルイスの部屋のドアを開けて、呼びかけた。
ルイスになにかあったのではないかと心配で胸が張り裂けそうだった。

ルイスは驚いた顔で「れ、レオンハルト!?なんでここに?」と驚いていた。
何故、下半身に何も身につけていないのだろうか。

口元を押さえて、衝動に耐えようと必死に落ち着かせようとした。

少しは我慢しようとしていたのに…あぁ、めちゃくちゃにして抱きたい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~

トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。 しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。 貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。 虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。 そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる? エブリスタにも掲載しています。

超絶悪役当て馬転生、強制力に抗う方法は×××

笹餅
BL
乙女ゲームのクズ悪役ストーカーに転生した少年。 17歳のゲーム開始前日から、物語は大きく変わった。 ゲーム通りに進めば、ゾンビになってしまうからゲームの激つよ強制力から必死に逃げるしかない。 ゾンビ回避の近道は攻略キャラクター達と仲良くする事。 勝手に友情ストーリーを目指していたら、別の好感度が上がっている事に気付かなかった。 気付いた頃には裏ルートが始まっていた。 10人の攻略キャラクター×強制力に抗う悪役令息

転生したら本でした~スパダリ御主人様の溺愛っぷりがすごいんです~

トモモト ヨシユキ
BL
10000回の善行を知らないうちに積んでいた俺は、SSSクラスの魂として転生することになってしまったのだが、気がつくと本だった‼️ なんだ、それ! せめて、人にしてくれよ‼️ しかも、御主人様に愛されまくりってどうよ⁉️ エブリスタ、ノベリズムにも掲載しています。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

何故か男の俺が王子の閨係に選ばれてしまった

まんまる
BL
貧乏男爵家の次男アルザスは、ある日父親から呼ばれ、王太子の閨係に選ばれたと言われる。 なぜ男の自分が?と戸惑いながらも、覚悟を決めて殿下の元へ行く。 しかし、殿下はただベッドに横たわり何もしてこない。 殿下には何か思いがあるようで。 《何故か男の僕が王子の閨係に選ばれました》の攻×受が立場的に逆転したお話です。 登場人物、設定は全く違います。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...