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彼と二人っきり… (ごほうびばーじょん)
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走る。
走る走る。
ミチルはアニーに手を引かれながら走り続けた。
もう、危険なエネルギーも感じない。悲鳴も聞こえない。
走る走る走る。
こんなに走っているのに、息も乱れない。
きっとこれは夢の続き。アニーの体温がやけにリアルに感じるけれど、甘い夢の疼き。
「ミチル、着いたよ」
「着いた……って?」
アニーが立ち止まると、ピンク色の空間が一気に晴れていく。
青い空、白い砂浜、聞こえる波音。そこは二人だけの楽園。
まるでリゾートアイランド。誰もいないからこその美しい浜辺が、二人をお出迎え。
パラソルにビーチチェアが二つ配置され、その奥にはウッドデッキ付きのコテージが。
そう、ここはまさにリゾートホテルのスイートコテージ!! に見える。
「……向こうに見たことない建物があるけど、誰か住んでるのかな?」
スイートコテージを見つけたアニーが不思議そうに言った。
なるほど! ミチルは気づいてしまった。
こんな〇〇リゾートって感じの景色、中世から近世の文化で生きる異世界ファンタジーの住人に想像できるはずがない。
これは、現代地球の知識に基づいた光景。つまり。
この夢はオレが見ている! 間違いない!
ミチルはその結論に、目眩がしてきた。
という事は、ミモザが散々披露したセクハラ発言の数々は自分の願望かもしれないのだ。
「おあああ……ッ!」
膝を折って恥ずかしさに悶絶するミチルの顔を、アニーは心配そうに覗き込んだ。
「ミチル? 大丈夫?」
「……」
だいぶ懐かしい表現にはなりますが。
キラキラ輝くアニースマイル!
それは国民的彼氏級!!
「ぐふぅっ!」
長らく大勢でドタバタやってきたので、イケメン単体から浴びるオーラの威力がえぐい。
防御を忘れていたミチルは、アニーのラブ光線をモロに受けたのだ!
「だ、大丈夫。これは夢だから。オレの都合のいい夢なんだからっ!」
「え? どういうこと?」
ミチルの言葉にアニーはますます首を傾げる。
上手い言葉で誤魔化せる頭がオレにあるわけない。何より、イケメンに偽りを申し上げるなど最低の罪!
ミチルは己の考察をアニーに説明した。このロケーションはミチルだけが知っているものだから、ピンク色の空間から全部、今も夢の中なんだってことを。
「ははあ、なるほど。そういうこと……」
それを聞いたアニーは喜んでいるようだった。
「つまり、ここに俺だけがいるってことはさ、ミチルは夢の中──無意識のうちに、俺を選んでくれたってことだよね?」
「ふえっ?」
「ミチルが、あいつらよりも俺と一緒にいたいって思ってくれたなんて、最高ッ!」
(注 人気投票で一位だったからです)
そう言ってアニーはがばちょとミチルに抱きついた。久しぶりにいい匂いがMAX!
「にゃぁあ!」
アニーとのマンツーマンの触れ合いにミチルが悶絶している隙に、ほっぺに濃厚なキッスが!
むっちゅうぅ……♡
「はあぁん!」
それでミチルはなんだか精神のたがが外れてしまった。
夢なら、楽しんだっていいよね!
「ねえ、ミチル。こんなに綺麗な海があるんだし、『つかまえてごらんなさい、ダーリン』『待ってくれよ、ハニー』でキャッキャウフフしない?」
「アニー、何そのベタなやつ……是非やろう!」
ミチルはすっかりノリノリだった。だが、はたと自分たちのいつもの服装に気づく。
「仕方ない、全裸でいいかっ♡」
ノリ過ぎのアニー。さすがのミチルも防衛本能が働く。
「するわけないだろぉ! 多分、コテージに行けば着替えくらい置いてあるんじゃないかな?」
夢ならなんでもあるはず。ミチルはアニーとともにコテージへと歩いた。
その中は、ミチルが想像した通り。お昼のテレビでよく紹介される豪華な内装のコテージで、何でも揃っていた。
大理石の床、石造りの壁、広間にはふかふか絨毯に高級木材のテーブルや椅子が並んでいる。
開放感たっぷりのウッドデッキから海風が吹き込んで、潮の匂いがコテージ内を満たしている。
奥のベッドルーム。ダブルベッドにドキドキしつつ、その上に何故か海パンが二枚置いてあった。
ご都合主義? そんなのは知らん。だって夢だから。
「わおー! 気持ちいいー!」
久しぶりに海パン一丁になったミチルは解放感で飛び上がった。
海なんて、何年ぶりだろう。きっと子どもの時以来だ。
「アニー! 早く海いこう!」
ミチルが振り返ると、アニーは呆然とした顔で鼻から一筋の赤い血を流している。
「ミチルくん……それは、ヤバいな……」
「どど、どうした!?」
鼻血を垂らすアニーにミチルが驚いていると、アニーはクローゼットを漁ってTシャツを一枚渡す。
「頼む、ミチル! これを着てくれ、俺の理性がもつうちにっ!」
「ええー……?」
「俺がそのピンクのち×びにしゃぶりつく、その前に……ッ!」
そうしてミチルは強引にTシャツを着させられるのだった。
まあ、日焼けしなそうだからいいけど。
という訳で、ミチルとアニーは燦々と降りそそぐ日差しの海辺で、キャッキャウフフで戯れた。
ミチルは海に濡れてTシャツが透けていき、結局ピンクのあれがイヤンしてしまい、アニーはまた鼻血を出していた。
ちょっと疲れたなと思って、パラソルの方を見ると、何故かトロピカルなジュースが置かれていたりして。
至れり尽くせりの夢サービスの中、夕方まで遊んでしまった。
サンセットビーチほど、ムード満点のロケーションはあるまい。
目の前の光景を見たミチルはそう思った。
「ミチル」
アニーが熱っぽい目でミチルを見つめる。
「な、なに?」
夕焼けの海をバックにしたイケメンほど、美しいものはない。
ミチルはドキドキ心臓が高鳴る中、そう思った。
「好きだよ」
「!」
ド直球のアニーの言葉がミチルを射抜く。
だが、ミチルは明確な答えをまだ出せなかった。
「前も言ったけど、君がいない人生はもう考えられない」
「あ、あの……えっと……」
こういう時どうしたらいいんだろう。
何もかも未経験のミチルはただオロオロするばかりだった。
「ねえ、ミチル」
「ふえっ」
いつもならミチルの気持ちを尊重して優しく待ってくれるアニーなのに、今日は随分とグイグイ来る。
ミチルの手を取ってそのまま抱きしめた。
「ミチル……好き」
「あ、アニー……」
耳元で甘く囁く声に、ミチルは力が抜けて、何も考えられなくなっていた。
「ねえ、今夜、いつかの続きをしても……いい?」
「えっ」
それってまさか。ミチルはあの夜を思い出してますます胸が跳ねる。
『今夜は俺が温めてあげるよ、たっぷりと……ね』
そう言っていたアニーの美しい顔が、フラッシュバックしていた。
「とりあえず、お腹すいたね!」
「ふえ……」
戸惑うミチルの返答を待たず、アニーはミチルを離して爽やかに笑った。
夜の帷–めくるめく愛の応酬-が訪れる予感……
コテージに戻ると、何ということでしょう。ご馳走がずらっと並んでいた。
なんて優秀なホテルマン。一切の気配もさせずにサービスを提供するなんて。
見たこともない、ミチルの世界のご馳走をアニーは大喜びで頬張った。
その様子が無邪気で可愛くて、ミチルも楽しんで食事をすることができた。
「ミチル、先にシャワー浴びておいで」
「う、うん」
おい待て。何故アニーはシャワーという単語を知ってるんだ?
しかしながら、ここは夢。きっとオレが言われたい願望があったんだろう。
そんな結論に達したミチルは、もう自分がそういう盛り上がりになっていることに驚いた。
ミチルがバスルームを出ると、入れ替わりにアニーが入っていった。
ベッドに座って髪をタオルで拭きながら、ミチルはすでに心臓がドッキドキだった。
オレはこれからアニーと♡♡♡しちゃうの……?
ミチルが悶々とそんなことを考えていると、アニーがバスルームから出てくる。
「ミチル」
軽く呼ばれただけで、全身がゾクゾクした。
お風呂上がりで、蒸気する濡れたイケメンの、絵にも描けない美しさ。
「ねえ、ミチル、天井見て」
「うん?」
ベッドルームの上は透き通った天井で、満点の星空が見えた。
「わ……」
ミチルが綺麗と思った次の瞬間には、さらに綺麗なアニーの顔がその視界を奪った。
「んん……」
真っ直ぐ降りてきた口付けは、流れ星なのかもしれない。
もうミチルの心も体も、アニーを感じるだけのものになっていた。
「ミチル……」
「あ、アニー……」
アニーがミチルの全てを撫でる。
「ミチル、好き……」
「あ……」
アニーがミチルの全てを愛おしむ。
「ミチル、星明かりよりも綺麗だ……」
「アニぃ……」
星空の下で、ひとつになろう。
♡♡♡……
「……チル」
ううーん、やだあ♡
「……ミチル」
ああーん、もっとぉ♡
「ミチル! 起きて、ミチル!」
「ふあっ!?」
ミチルが目を覚ますと、アニーが自分を揺すっていた。
そこはラーウス。ループス邸の一室。
「もう夕方なのに、こんなところでうたた寝したら風邪引くよ」
「えっ、あれ? 海は? 星空は?」
「ふふっ、夢見てたんでしょ。可愛く笑ってたよ」
そんなイケてる顔で微笑まないで!
思い出して疼いちゃうのぉ!
ミチルは現実に戻されて溜息をついた。
夢だって知ってたけど、知ってたけどぉおお。
「さ、行こう。あっちで皆待ってる」
「うん……」
ミチルは差し出されたアニーの手を取った。
あれは夢。
そしてひとつの可能性?
いつか答えを出さなくちゃならないのかな?
その時、オレはどんな答えを出すんだろう。
籠の中の模倣品
【最愛】を探す
世界の真実の中に、その身を捧げて──
走る走る。
ミチルはアニーに手を引かれながら走り続けた。
もう、危険なエネルギーも感じない。悲鳴も聞こえない。
走る走る走る。
こんなに走っているのに、息も乱れない。
きっとこれは夢の続き。アニーの体温がやけにリアルに感じるけれど、甘い夢の疼き。
「ミチル、着いたよ」
「着いた……って?」
アニーが立ち止まると、ピンク色の空間が一気に晴れていく。
青い空、白い砂浜、聞こえる波音。そこは二人だけの楽園。
まるでリゾートアイランド。誰もいないからこその美しい浜辺が、二人をお出迎え。
パラソルにビーチチェアが二つ配置され、その奥にはウッドデッキ付きのコテージが。
そう、ここはまさにリゾートホテルのスイートコテージ!! に見える。
「……向こうに見たことない建物があるけど、誰か住んでるのかな?」
スイートコテージを見つけたアニーが不思議そうに言った。
なるほど! ミチルは気づいてしまった。
こんな〇〇リゾートって感じの景色、中世から近世の文化で生きる異世界ファンタジーの住人に想像できるはずがない。
これは、現代地球の知識に基づいた光景。つまり。
この夢はオレが見ている! 間違いない!
ミチルはその結論に、目眩がしてきた。
という事は、ミモザが散々披露したセクハラ発言の数々は自分の願望かもしれないのだ。
「おあああ……ッ!」
膝を折って恥ずかしさに悶絶するミチルの顔を、アニーは心配そうに覗き込んだ。
「ミチル? 大丈夫?」
「……」
だいぶ懐かしい表現にはなりますが。
キラキラ輝くアニースマイル!
それは国民的彼氏級!!
「ぐふぅっ!」
長らく大勢でドタバタやってきたので、イケメン単体から浴びるオーラの威力がえぐい。
防御を忘れていたミチルは、アニーのラブ光線をモロに受けたのだ!
「だ、大丈夫。これは夢だから。オレの都合のいい夢なんだからっ!」
「え? どういうこと?」
ミチルの言葉にアニーはますます首を傾げる。
上手い言葉で誤魔化せる頭がオレにあるわけない。何より、イケメンに偽りを申し上げるなど最低の罪!
ミチルは己の考察をアニーに説明した。このロケーションはミチルだけが知っているものだから、ピンク色の空間から全部、今も夢の中なんだってことを。
「ははあ、なるほど。そういうこと……」
それを聞いたアニーは喜んでいるようだった。
「つまり、ここに俺だけがいるってことはさ、ミチルは夢の中──無意識のうちに、俺を選んでくれたってことだよね?」
「ふえっ?」
「ミチルが、あいつらよりも俺と一緒にいたいって思ってくれたなんて、最高ッ!」
(注 人気投票で一位だったからです)
そう言ってアニーはがばちょとミチルに抱きついた。久しぶりにいい匂いがMAX!
「にゃぁあ!」
アニーとのマンツーマンの触れ合いにミチルが悶絶している隙に、ほっぺに濃厚なキッスが!
むっちゅうぅ……♡
「はあぁん!」
それでミチルはなんだか精神のたがが外れてしまった。
夢なら、楽しんだっていいよね!
「ねえ、ミチル。こんなに綺麗な海があるんだし、『つかまえてごらんなさい、ダーリン』『待ってくれよ、ハニー』でキャッキャウフフしない?」
「アニー、何そのベタなやつ……是非やろう!」
ミチルはすっかりノリノリだった。だが、はたと自分たちのいつもの服装に気づく。
「仕方ない、全裸でいいかっ♡」
ノリ過ぎのアニー。さすがのミチルも防衛本能が働く。
「するわけないだろぉ! 多分、コテージに行けば着替えくらい置いてあるんじゃないかな?」
夢ならなんでもあるはず。ミチルはアニーとともにコテージへと歩いた。
その中は、ミチルが想像した通り。お昼のテレビでよく紹介される豪華な内装のコテージで、何でも揃っていた。
大理石の床、石造りの壁、広間にはふかふか絨毯に高級木材のテーブルや椅子が並んでいる。
開放感たっぷりのウッドデッキから海風が吹き込んで、潮の匂いがコテージ内を満たしている。
奥のベッドルーム。ダブルベッドにドキドキしつつ、その上に何故か海パンが二枚置いてあった。
ご都合主義? そんなのは知らん。だって夢だから。
「わおー! 気持ちいいー!」
久しぶりに海パン一丁になったミチルは解放感で飛び上がった。
海なんて、何年ぶりだろう。きっと子どもの時以来だ。
「アニー! 早く海いこう!」
ミチルが振り返ると、アニーは呆然とした顔で鼻から一筋の赤い血を流している。
「ミチルくん……それは、ヤバいな……」
「どど、どうした!?」
鼻血を垂らすアニーにミチルが驚いていると、アニーはクローゼットを漁ってTシャツを一枚渡す。
「頼む、ミチル! これを着てくれ、俺の理性がもつうちにっ!」
「ええー……?」
「俺がそのピンクのち×びにしゃぶりつく、その前に……ッ!」
そうしてミチルは強引にTシャツを着させられるのだった。
まあ、日焼けしなそうだからいいけど。
という訳で、ミチルとアニーは燦々と降りそそぐ日差しの海辺で、キャッキャウフフで戯れた。
ミチルは海に濡れてTシャツが透けていき、結局ピンクのあれがイヤンしてしまい、アニーはまた鼻血を出していた。
ちょっと疲れたなと思って、パラソルの方を見ると、何故かトロピカルなジュースが置かれていたりして。
至れり尽くせりの夢サービスの中、夕方まで遊んでしまった。
サンセットビーチほど、ムード満点のロケーションはあるまい。
目の前の光景を見たミチルはそう思った。
「ミチル」
アニーが熱っぽい目でミチルを見つめる。
「な、なに?」
夕焼けの海をバックにしたイケメンほど、美しいものはない。
ミチルはドキドキ心臓が高鳴る中、そう思った。
「好きだよ」
「!」
ド直球のアニーの言葉がミチルを射抜く。
だが、ミチルは明確な答えをまだ出せなかった。
「前も言ったけど、君がいない人生はもう考えられない」
「あ、あの……えっと……」
こういう時どうしたらいいんだろう。
何もかも未経験のミチルはただオロオロするばかりだった。
「ねえ、ミチル」
「ふえっ」
いつもならミチルの気持ちを尊重して優しく待ってくれるアニーなのに、今日は随分とグイグイ来る。
ミチルの手を取ってそのまま抱きしめた。
「ミチル……好き」
「あ、アニー……」
耳元で甘く囁く声に、ミチルは力が抜けて、何も考えられなくなっていた。
「ねえ、今夜、いつかの続きをしても……いい?」
「えっ」
それってまさか。ミチルはあの夜を思い出してますます胸が跳ねる。
『今夜は俺が温めてあげるよ、たっぷりと……ね』
そう言っていたアニーの美しい顔が、フラッシュバックしていた。
「とりあえず、お腹すいたね!」
「ふえ……」
戸惑うミチルの返答を待たず、アニーはミチルを離して爽やかに笑った。
夜の帷–めくるめく愛の応酬-が訪れる予感……
コテージに戻ると、何ということでしょう。ご馳走がずらっと並んでいた。
なんて優秀なホテルマン。一切の気配もさせずにサービスを提供するなんて。
見たこともない、ミチルの世界のご馳走をアニーは大喜びで頬張った。
その様子が無邪気で可愛くて、ミチルも楽しんで食事をすることができた。
「ミチル、先にシャワー浴びておいで」
「う、うん」
おい待て。何故アニーはシャワーという単語を知ってるんだ?
しかしながら、ここは夢。きっとオレが言われたい願望があったんだろう。
そんな結論に達したミチルは、もう自分がそういう盛り上がりになっていることに驚いた。
ミチルがバスルームを出ると、入れ替わりにアニーが入っていった。
ベッドに座って髪をタオルで拭きながら、ミチルはすでに心臓がドッキドキだった。
オレはこれからアニーと♡♡♡しちゃうの……?
ミチルが悶々とそんなことを考えていると、アニーがバスルームから出てくる。
「ミチル」
軽く呼ばれただけで、全身がゾクゾクした。
お風呂上がりで、蒸気する濡れたイケメンの、絵にも描けない美しさ。
「ねえ、ミチル、天井見て」
「うん?」
ベッドルームの上は透き通った天井で、満点の星空が見えた。
「わ……」
ミチルが綺麗と思った次の瞬間には、さらに綺麗なアニーの顔がその視界を奪った。
「んん……」
真っ直ぐ降りてきた口付けは、流れ星なのかもしれない。
もうミチルの心も体も、アニーを感じるだけのものになっていた。
「ミチル……」
「あ、アニー……」
アニーがミチルの全てを撫でる。
「ミチル、好き……」
「あ……」
アニーがミチルの全てを愛おしむ。
「ミチル、星明かりよりも綺麗だ……」
「アニぃ……」
星空の下で、ひとつになろう。
♡♡♡……
「……チル」
ううーん、やだあ♡
「……ミチル」
ああーん、もっとぉ♡
「ミチル! 起きて、ミチル!」
「ふあっ!?」
ミチルが目を覚ますと、アニーが自分を揺すっていた。
そこはラーウス。ループス邸の一室。
「もう夕方なのに、こんなところでうたた寝したら風邪引くよ」
「えっ、あれ? 海は? 星空は?」
「ふふっ、夢見てたんでしょ。可愛く笑ってたよ」
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思い出して疼いちゃうのぉ!
ミチルは現実に戻されて溜息をついた。
夢だって知ってたけど、知ってたけどぉおお。
「さ、行こう。あっちで皆待ってる」
「うん……」
ミチルは差し出されたアニーの手を取った。
あれは夢。
そしてひとつの可能性?
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