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1巻
1-2
そして我に返ると、ここにきたときは正常だった視界のふちが真っ赤になったり歪んだりしていて、あきらかな異常事態を知らせているのに気がついた。
原因はどうやら《空腹》と《不眠》というバッドステータスらしい。
一度気づいてしまうと、体の不調を一気に自覚してきた。視界は波打ったように歪んでいるし、身体もフラフラとして制御がしづらい。どう考えても体調は大丈夫ではない。
そうして自分の状態を確認していると、ギルド職員の女性が困ったように頬に手をあてて視線を彷徨わせた。
「ど、どうしましょう! 今は異人さんがたくさんいて大通りの宿屋はいっぱいだし、まだ夜明け前なので空いている食堂もないし……」
「だ、大丈夫です。食事は携帯食料があるので……ご迷惑かもしれませんが、そこのすみで仮眠をとらせてもらえればそれで……」
確か最初から持っているアイテムに携帯食料があったと記憶しているので、あとは《不眠》をどうにかすれば問題ないだろう。そう思いギルド職員の女性に提案すると――
「そんなのはダメです!」
「えっ」
食い気味にたしなめられた。思いのほか強めの勢いに驚いて肩が跳ねる。
それによく見たら、声をかけてくれた女性はギルド登録のときに受付をしてくれた女性だった。
彼女は勢いのままに僕に迫る。
「そんな今にも倒れそうな顔色で粗末な食料と寝床なんて、よけいに体調が悪化します! 少し遠いのは申し訳ないですが、ギルド裏から外壁に向かう途中にある宿屋なら、この時間でも食事をだしてくれますし部屋も空いているはずです。そこの女将さんに私、『カーラ』に紹介されたと伝えればお世話をしてくれると思うので、すぐに向かってください!」
「えっ。その……そこまでしてもらわなくても……」
回復したらすぐに読書を再開したいと思っていたので、つい断ろうとしたが……
「すぐに! 向かってください!」
「は、はい! ご迷惑をおかけして申し訳ありません、お世話になります!」
ギルド職員の女性、あらためカーラさんのあまりの剣幕に、宿屋の紹介を受けてしまった。
いやまぁ、ものすごくありがたい厚意なので断るほうが失礼だったんだが。本当につい……
ということで、いまいち制御の利かない身体を引きずってなんとかギルドの外にでると、ギルド内からこぼれる光といくつかの民家に灯った淡い光、そして空に瞬く星くらいしか明かりがなく、かなり暗かった。そういえばカーラさんも夜明け前とかいっていたな。
「私はまだ仕事があるので付き添えないのですが、おひとりで大丈夫ですか? ちゃんとたどり着けそうですか?」
「はい、移動はできそうなので大丈夫です。お手数をおかけしてすみません、ホント……」
この数分のやり取りですっかりカーラさんに「ダメそうな子」認定されてしまったようで、彼女の僕を見る目が、心配な生徒を見守る小学校の先生のようなものになっている。
カーラさんに見送られ、僕は紹介された宿屋のほうへ足を踏みだした。
いつの間にかミニマップに新たなマーカーが現れている。カーラさんに紹介されたことで、自動で目的の宿屋にマーカーがついたらしい。これで迷わずにいけそうだ。
身体がフラつくので、慎重にゆっくりと移動する。
ギルドの入口に面した大通りは、こんな暗い時間帯にもかかわらずプレイヤーらしき人たちが活発に行き交っていたが、少し通りを外れると途端に人どおりが失せ、物音ひとつしない静けさに包まれた。
夜のひんやりと冷えた空気を大きく吸いこむと、フラつく身体やぼやけた視界がいくぶんマシになった気がして気分がいい。
……思い返すと、一日以上飲まず食わずによる空腹も、不眠も、現実で体験したことは一度もなかったかもしれない。いや、絶対にない。
当たり前だ。平均的な家庭の十歳はまずそんな状況にならない。小学校では給食がでるし、夜ふかしをしようとすれば親か保護者がとめる。
こんな状態になってからは生命維持機能の一貫で、決まった時間に強制入眠するようになっているし、栄養も身体につながれた管から補給されているので食事を自主的にとることはない。
ちなみに強制入眠時間まではまだ余裕はある。ダイジョブ、ダイジョブ。
「……ふふっ」
なんだか妙に楽しくなってきて、笑みがこぼれた。これが徹夜テンションというやつだろうか。踏みしめる地面の感触も心なしかふわふわしてくる。
さっきまで、とてもダルかったのになんとも不思議だ。
脳内物質によってこういうことが起こると知ってはいても、体験できるなんて思わなかった。あらためてものすごい技術だなぁとぼんやりと思う。
徹夜テンションを楽しみながらも、歩行だけは慎重に進めることしばらく。
前方に明かりの灯った建物が見え、そこからなんともおいしそうな匂いがただよってきた。
ミニマップを確認すると、あの建物が目的地で間違いなさそうだ。
なんだかホッとする雰囲気があるなぁ、とあまり働かない頭で考えながら扉に手をかけるが……
「……開かない」
押しても引いても開かない。引き戸の要領でもダメだった。
まだやっていると思ったが、もう店じまいしてしまったのだろうか?
扉を叩けばなかの人に気づいてもらえるだろうか――と考えたところで、突然ガコッと大きな音がして視界に光があふれた。まぶしくて目をつぶる。
「なにやってんだ、お前」
頭上後方から、不機嫌そうな低い声が降ってきた。
声のするほうを緩慢に見あげると、とてもたくましく体格のいい鎧姿の男性が立っていた。頭をすべて覆うタイプの兜をかぶっていて顔は見えない。
その男性が後ろから腕を伸ばして扉を開けていて、ほとんど覆いかぶさられているような体勢だ。
……なんとなくお互い見あっていると、扉の向こうから快活そうな女性の声が大きく響いた。
「あら、アンタ今日はもどってきたの。……おや? 見かけない子もいるねぇ。……まさか! アンタどっかからさらってきたんじゃないだろうね!?」
「俺だって知るか。ここに突っ立ってたんだ。……邪魔だ。入らないならどけ」
そういうと鎧の男は僕のわきをすり抜けてさっさと奥へ入っていく。
背中に背負った僕の身の丈はありそうな大きい剣が印象的だった。
「突っ立ってたって? ……ああ! 扉の建てつけが悪くて、少し強めに押しこまないと開かないのよ! ここには粗野な野郎どもしか泊まらないからすっかり忘れてたよぉ!」
この宿の女将と思われる、エプロンをつけた恰幅のいい女性は、そういうとほがらかに笑った。
……扉が開かなかったのは単純に僕のパワー不足だったらしい。
「さ、入んな!」
女将さんにうながされて宿のなかへ入ると、広々とした食堂にとおされた。今は先に入っていった鎧の男しかいないらしく、がらんとしている。
「このとおり今はほとんど客がいないから、好きな席に座りなねぇ」
僕はうなずいて窓際のひとり用の席に腰をおろした。
少しして席にやってきた女将さんが、不思議そうな顔をして僕を見る。
「もしかしてアンタ、異人さんかい? アンタたち、こっちの通りに入ってこられるようになったんだね?」
「はい、僕は異人です。ほかの異人は……ほとんど入ってこられないと思います。僕がここにくることができたのは、ギルドに勤めているカーラさんに紹介されたからかもしれません」
あまり働かない頭で少し考えてからそう答える。
資料室で町の情報を手に入れたことで、どこの建物がなんであるかの情報は結構埋まったのだが、立ち入り可能エリアはほとんど拡張されなかった。
しかし、この宿はその立ち入り不可エリアのなかにある。ミニマップを確認してみると、大通りからこの宿に向かう道だけ立ち入り可能エリアになっていた。
そして、この宿のある道に入ってからはプレイヤーらしき人物を一切見かけなかったので、今のところ全員に開放されているわけではないと推測する。
となれば、僕とほかのプレイヤーの違いは、カーラさんにこの宿を紹介されたか否かだ。
「まぁ! アンタあの子の紹介でここにきたのかい! カーラはアタシの娘なのよぉ。アンタはあれかい、あの子といい感じなのかい?」
途端に女将さんが喜色をあらわにする。なるほど……いろいろと納得した。
とりあえずカーラさんの名誉のためにも、きっぱりと否定しておこう。
「いえ、そういう関係ではないです。ギルド内で倒れそうになったところを助けていただき……」
「えっ、なんだって?」
そうして、僕はこの宿を紹介されるに至った経緯を説明した。
《不眠》のせいで口がうまくまわらず、いつもよりゆっくりと話したせいでそれなりに長くかかってしまった。
「アンタ、そんな満身創痍だったんだね……気がつかなくてゴメンよぉ。すぐにお腹にやさしいもんを持ってくるから。食べ終わったら上の部屋でゆっくりしていっておくれ」
「ありがとうございます……」
ここまでの経緯を説明し終えると、女将さんからも心配な子を身守る母親のような目で見られてしまった。女将さんとカーラさんとの血の繋がりを強く感じる。
食事を用意するために、女将さんはカウンターの奥にある厨房へ引っこんでいった。
なんとなく鎧の男のほうに目を向けると、革鎧をベースにところどころ金属で補強された鎧に身を包み、傍らにはあの大きな剣を立てかけていた。
そして全体的に赤茶けているというか、赤黒く汚れていた。
……もしかしなくても、なにかの生物の血液だろうか。全体的に赤黒いということは全身に血液をかぶったことになる。……いったいなにと相対して、なにを屠ってきたのだろう。
「うっ……?」
不意に、ピリッとした感覚が身体を駆け抜ける。
この感覚はなんだろうと首をひねっていると、僕が目を向けていることに気づいたのか、鎧の男がじっとこちらに顔を向けていた。
兜越しに視線が交わった気がしたつぎの瞬間、静電気で強く弾かれるかのようなビリビリとした感覚が僕を襲う。
兜をかぶっているので彼の表情も視線もよくわからないが、たぶん僕をにらんでいるんじゃないだろうか。そして僕は彼からのなんらかの圧力を感じているのだと思う。
現実をふくめても初めて体験する感覚にしばし身を浸す。身体が勝手に緊張して硬直するこの感覚、緊張感で萎縮するというのはこういうことなのか。
初めて体験するものではあるが、少し似たものを前にも感じたことがあるような……
「ちょっと! 今にも倒れそうな坊やに威嚇なんて、大人気ないことしてんじゃないよ! 叩きだすよ!」
「……チッ」
ぼんやりと思考の海に沈んでいると、奥の厨房から女将さんの喝が飛んでくる。
舌打ちのような音の直後に、全身を覆っていたビリビリとした感覚が消えたので、女将さんのいう彼の威嚇? が緊張感の原因だったようだ。
僕が不躾にながめていたので、彼の癇に障ったのかもしれない。
「不快だったなら、すみません。気をつけます」
鎧の男のほうに向かって頭をさげる。それ以降はそちらに視線を向けないようにした。
彼の反応はとくにない。これ以上関心を向けられたくないだろうから気にしないことにする。
「アンタ大丈夫だったかい? うちの客は行儀がなってないからいけないよ」
女将さんがやれやれといった様子で、お皿の載ったお盆を持って厨房からでてきた。
「いや、僕も不躾にみていて、気を悪くさせてしまったかもしれないので」
「気を使えていい子だねぇ……。ほら、豆と野菜のスープだよ。今日のところはこれで身体をあたためて、明日になったらもっと精のつくものを食べな」
「ありがとうございます。おいしそうです」
「ふふっ、ゆっくり食べなねぇ」
そういって女将さんは去っていった。
直後に、鎧の男が座っているほうからバコンッとなかなかすごい音がしたが、そっちに視線を向けないようにしているのでなにが起こったのかはわからなかった。
目の前の湯気を立てたスープに視線を移し、木製のスプーンを手にとる。
そして、自然と両の手をあわせ……
「いただきます」
当たり前の習慣なのに、ひどく久しぶりのような不思議な感覚を覚えながら食前の礼を口にした。
スープをひとつすくい口へ運ぶと、口の中に、やさしい味とあたたかさがゆるやかに広がる。
「……っ!」
そのスープはなにもかもやさしいものでしかできていないはずなのに、頬が、胸が、全身が燃えるように熱くなり、〝なにか〟がとんでもない激しさで身体中を駆けめぐったようだった。
その感覚にのたうちまわりそうになるのを必死で抑える。
しばらくその激流を堪え、ようやく落ち着いてスープ本来の穏やかなあたたかさだけを感じられるようになったころ、身体に残った最後の激しい熱を吐きだすように、ほぅっと息をついた。
――生きてる。
それからは、スープを最後の一滴までゆっくりと丁寧に味わった。
食事を終えると、女将さんに案内されて空き部屋にとおされた。
宿泊部屋は意外と広いものの大きなベッドが部屋の半分くらいを占めていて、残りは小ぢんまりとした机と椅子がおいてあるだけの飾り気のない簡素な部屋だった。
パッと見ても掃除は行き届いているし布団も清潔そうで、この宿屋全体に流れる雰囲気と同じでどこか安心する部屋だな、と思った。
女将さんは「狭くてごめんねぇ」などと笑っていたが、十分広いと思う。
なんならベッドはもう半分くらい小さくてもいいくらいだ。……まぁ、あの鎧の男くらい身体が大きかったら、このベッドでちょうどいいのかもしれないが。
いよいよこの身体の体力の限界と現実の強制入眠時間が迫ってきたため、さっさと布団に潜ってログアウトをする。
こうして、僕のアルストプレイ一日目は幕を閉じた――
◆ ◇ ◆
つぎの日、僕はゲームにログインする前に、ネットでアルストについて調べてみた。
すでに大手攻略サイトのいくつかが我先にと攻略情報をアップしている。
僕がギルドの資料室で読書に没頭しているあいだに、つぎの町へ進出したプレイヤーもいるようだ。それが早いことなのか普通のことなのかは、よくわからないが。
現在判明している職業一覧も見てみた。予想はしていたが、僕の職業は記載されていなかった。
まぁ、こういうものは自己申告だろうから、網羅されるのはまだまだ先だろう。
技能一覧のほうには《分析》だけ載っていた。
どうやら『◯◯学者見習い』というような学者系の職業に就くと、デフォルトでついてくる技能のようだ。『◯◯学』は植物学に鉱物学、動物学など、ほかにもいろいろあるらしい。
その職業の人にはぜひそれぞれの分野を究めてもらって、研究成果を文書に残したあかつきには僕に読ませてほしい。
《記録》も学者系の職業の初期技能につきそうなものだが、なかったのだろうか? まぁ、そのうち嫌でも習得できそうだし、些細なことだろうか。
そして、昨日僕についたバッドステータスの《空腹》と《不眠》についても調べてみた。
《空腹》はスタミナの回復量が減り、徐々にLPを侵食し始める、というところまではヘルプにも記載があったと記憶している。
このLPとは『ライフポイント』の略で、いわゆるプレイヤーの生命力やほかのゲームでのHPにあたる。
そしてここからは有志によって検証された内容だが、これらのバッドステータスを放っておくと、そのままLPがゼロになって死亡してしまうらしい。身体操作も重りがついたように鈍くなるようだ。
……死ぬまで待ってみたのか。
それなりに放置したバッドステータスを経験した身からすれば、もしレーティングや設定まわりを全解放していてあの飢餓感を味わうのは、なかなかつらいものがあると思う。これがライトノベルでもよく見かける検証班の執念か……。頭がさがる。
ちなみに《空腹》の解消方法は単純で、満腹度がプラスになるまで食べ物を食べることだ。
つぎに《不眠》だが、こちらはゲーム内時間で十五時間以上眠らずにいると蓄積が始まり、LPの回復量が減り、時間経過にしたがって視界の歪みや狭まりといった症状がでてくる。
やがて身体のコントロールが利かなくなり、最終的には《錯乱》や《幻覚》などの状態異常がランダムに発生するようになっていく。
状態異常を解除しても《不眠》を解消しないかぎり、すぐに状態異常が発生してしまうようだ。
解消方法はログアウトをするか、〈睡眠〉というコマンドでゲーム内で二時間ほど眠ったことにすることで解消するらしい。これも単純でお手軽だ。
ただし、〈睡眠〉はログアウトをしているわけではないため、一日の連続ログイン時間の上限に達すると、再度ログインするためには必ず現実で六時間空けないといけなくなる。
連続ログイン上限的に、ゲーム内換算三日の徹夜が限界で、これ以上《不眠》を続けるとどうなるのかは今のところ検証する術がないそうだ。
……普通に死ぬんじゃないだろうか。状態異常の内容が妙にリアルだし。
ちなみに《不眠》でわかるように、バッドステータスと状態異常は別もので、バッドステータスにはほかに《欠損》などがあり、こうしてみると身体の不調状態を表しているようだ。
僕の《不眠》は状態異常が発生するほどではなかったようだが、さすがにこれからは集中しすぎそうなときはアラームをかけるようにしようと思う。
サポートAIにもなるべく死なないほうがいいといわれているし。
なにより、仮想空間では容易に味わえなかった食事のおいしさ、あたたかさをもっと得てみたい。
さて、ひととおり攻略サイトめぐりを終えたので、そろそろログインしよう。
◆ ◇ ◆
昨夜泊まった宿屋の一室で目を覚ます。
ログアウト前のダルさや視界不良が嘘のように、クリアな視界と身体感覚だ。
気分爽快とはこのことだろう。現在はログアウトから一日半をすぎたころだろうか。昼と夕方のあいだの時間帯だ。
まず行動ログを確認してみる。
……《空腹》によってLPが半分くらい減っていたらしい。本当に気をつけよう。
あとは宿屋での宿泊や食事など、いくつかのチュートリアルクエストをクリアしていたので、さくっと内容と報酬を確認してログを閉じた。
ほとんど必要のない身支度をして一階の食堂におりると、女将さんがにこやかに迎えてくれ、時間的にがっつりとしたものは難しいが軽食を用意する、といってくれた。
昨日と同じ席に座って待っていると、お盆を手にした女将さんが僕のもとへやってきた。
「はいよ、パンとホットミルク。アンタが一日経っても起きてこないもんだからずいぶん心配したんだけど、大通りで異人を泊めてる仲間にきいたら〝異人の眠り〟ってのはそんなもんなんだってねぇ。慣れてないからあわてちまったよぉ!」
食事を僕の前におきながら女将さんが話す。
『異人の眠り』……ログアウト中のプレイヤーのことを指しているのだろう。
「ご心配おかけしました……。そうですね、二日ほどはほとんど休まず活動できますが、そのあと一度深く眠ると一日から二日、あるいはもっと長く起きないこともあるかもしれません」
「はぁー、同じ人系種族に見えて、やっぱりいろいろとアタシらとは違うんだねぇ」
こちらの世界と現実の時差のせいで、女将さんにいらぬ心配をかけてしまったらしい。
だがプレイヤーを相手に商売をしている人は、早くも「そういうもん」扱いで順応しているようだ。たくましい。
というところで、女将さんは清掃へもどり、僕はパンをかじってホットミルクで喉をうるおす。
うん、今日の食事もあたたかくておいしい。
「あ、そうだ。うちの娘が、アンタが起きたらギルドに顔をだしてほしいっていってたよ。あの子も心配してたから、元気な顔を見せてやんな」
「そうですか……わかりました、そうします」
僕が食べ終わったころを見計らって女将さんが声をかけてきた。カーラさんにはすごくお世話になったので、ちゃんとお礼をいわないとと思っていたのでちょうどいい。
さっそくギルドへ向かおうと、空の食器の載ったお盆を女将さんに持っていく。
「ご馳走さまでした。今日の食事もおいしかったです」
「あら、どうもねぇ! そうだ、宿はもう引き払うかい? まだこの町にいるんなら連泊のほうが安くなるんだけど」
「本当ですか。払えそうならぜひ連泊したいです」
「そうかいそうかい! うちの子によりゃあアンタはまだこの町で一銭も使ってないはずだから、連泊代を払えるはずだっていってたよぉ!」
「……確かに一銭も使ってないですね」
……カーラさんの洞察力がちょっと怖い。ギルドで異人には慣れてるし、実家の宿屋で人間観察を経験したたまものだろうか。しかも、ちゃっかり実家の顧客も増やしているな?
まぁ、この宿屋のあたたかくて落ち着く雰囲気がすっかり気に入っているので、連泊できるのなら僕としてもとてもありがたいのだが。
女将さんに連泊代を支払い、サービス内容や注意事項をあらためて説明してもらった。
「うちは傭兵や冒険者が泊まることが多いから、一昨日のやつみたいなむさっ苦しいのしかいないんだけど、そこはごめんねぇ。粗暴だけど気のいい奴らばかりだから」
「はい。とくに気にならないので大丈夫です」
「よし、いい子だ! そういやまだ名前をきいてなかったねぇ。アタシはローザってんだ、よろしくねぇ! アンタは?」
女将さんの言葉に、そういえば名乗っていなかったなと気づく。
「僕はトウノといいます。よろしくお願いします」
「トウノね! なんだか不思議な響きだねぇ。あとアタシにもここの奴らにも丁寧な言葉づかいはいらないよ! それが流儀ってもんさ! ほら!」
「えっと……わかった」
ローザにうながされて、戸惑いつつも敬語をはずしてみる。
うーん……年上の人にタメ口をきくのはなんだか据わりが悪い……
「あっはっはっ! 徐々に慣れなねぇ! ほら、娘んとこにいってきな!」
ぎこちないままの僕を、ローザは快活に笑いながら送りだしてくれた。
宿をでた僕は、あらためて宿の外観を観察した。
入るときは暗かったし視界も歪んでいてよくわからなかったが、見た目は少し大きいくらいの普通の民家にしか見えない。
看板は宿屋共通と思われる意匠の看板しかかけられていないし、マップの表記も「宿屋」としか書かれていなかった。
ふぅむ……勝手に『ローザの宿屋』と呼ばせてもらおうか。
外観を確認したところで、さっそくギルドへ向かおう。
だがギルドまでの道があやふやだったので、マップを開いてギルドの場所を確認してから進む。といっても、ギルドへ向かう道以外はほとんど立ち入り不可なので、ある意味わかりやすかった。
行きは真っ暗でほとんど見えなかった町並みが今はよく見える。大通りとくらべると人が暮らしている生活感が随所からにじみでている印象だ。
大通りはゲームプレイに必要な施設へのアクセスがよく、逆にいえば必要最低限の施設しかない『ザ・始まりの町』という印象だった。
しかし、こうしてプレイヤーと住民の生活範囲をわけることで、プレイヤーが大量に流れこむことによるトラブルを未然に防いでいるようにも見える。観光地と居住区の住みわけといったイメージだろうか。
そんなことをつらつらと考えているうちに、昨日行き倒れかけた職業ギルドに到着したので、なかに入って目的の人物を探す。
「あ! トウノさん!」
ふと名前を呼ばれてそちらを見ると、資料を抱えたカーラさんがいた。
「一昨日は大変お世話になりました。いい宿も紹介していただいて……」
「いいんですよ、顔色もよくなったようで安心しました」
礼を伝えると、カーラさんは朗らかな笑顔で応じてくれた。
「なにかお礼ができないかと思っていたんですが、僕にできることってありますか?」
プレイを始めたばかりの僕になにができるかわからないが、雑用でもなんでもいいのでお礼をしたい。
するとカーラさんは目をキラリと光らせた。
「実のところ、その言葉を待っておりました! トウノさんにぜひやっていただきたいことがあるんです!」
「そうなんですか。なんでしょう?」
「こんなところで話すのもなんですので、あちらのカウンターへどうぞ。あ、それとこの世界では平民同士ならだれに対しても丁寧な言葉づかいはいりません。私たち受付担当の者は面倒ごとの回避でこの言葉づかいにしているだけですので」
「さっきローザさ……ローザにもそういわれた。善処し、する……」
「ふふ、すぐ慣れますよ。さあ、こちらです」
デジャヴかな? というやりとりをしながら、カーラの案内でカウンターへ移動する。
「ではさっそく、当ギルドからトウノさんへ指名依頼をさせていただきたいのですが、指名依頼の説明は必要ですか?」
……通常のクエストもまだ受けたことがないのに、どうして僕に指名依頼を?
そんな疑問が浮かびつつも、こくりとうなずく。
「ギルド登録をしたときにカーラが説明してくれたから大丈夫だと思う。強制ではないがなるべく受けてほしいこと、通常の依頼に比べて報酬や評価が上乗せされる、だったかな」
「そういえばトウノさんのギルド登録は私が対応いたしましたね。はい、その認識で大丈夫です。では依頼内容についてですが、トウノさんにはこのギルドに集まった情報をまとめて、資料にしていただきたいんです」
「ほぅ」
カーラがいうには、この数日急激に増加した異人と活発な依頼消化によって、ギルドに報告される情報が激増した。それ自体はよろこばしいことなのだが、その情報をまとめる人手が圧倒的に不足しているのだという。
ギルドとしては、この数日の環境変化を一刻も早く把握したいが、あまりうまくいっていないとのこと。
「ふぅむ……依頼内容とギルドの切迫感は理解できたが、それでなぜ僕に指名依頼を?」
「それは、トウノさんがこの問題の解決に必要な技能を有しているからです。《分析》と《筆記》か《記録》をお持ちじゃないと、つらい物量になると思いますので」
「なるほど……」
確かに僕は《分析》と《記録》を持っている。まだ使用したことはないが。
気になることといえば……これらの技能がないとつらい物量とは? ……まぁ、この短期間に流れこんだプレイヤーの人数を考えると〝お察し〟というやつなのだろうか。
「実のところ、トウノさんの職業でもある『編纂士』という職業をまったくきいたことがなかったのですが、ギルドの記録をひっくり返してみると記載があったんです。ギルド創立時に、そういうギルドの記録や情報なんかをまとめる仕事をしていたのが『編纂士』なんだそうです! これはもうアークトゥリアのお導きなんじゃないかと思ってトウノさんにお声がけしました!」
「そ、そうなんですか」
僕の職業がギルド創立まで遡らないと確認できないほど稀有な職業だということが、さらっと判明した。レア職業だろうなとは思っていたが、それほどとは。
まぁ、それはともかくとして……
「まだ『下級』で『見習い』なんだが、それは……」
「必要な技能があれば、そうむずかしい依頼ではないので大丈夫ですよ。経験値がおいしい仕事とでも思ってください。……あ! あとゴールドの報酬も多めにだしますので、宿屋にももっと長く泊まれますよ!」
「ふっ、それなら否やはないな」
そもそも読みものにたくさん触れられそうだから、力不足でなければ断る気はなかったのだが、カーラはこちらのモチベーションを的確にあげてきた。
仕事の問題解決と同時にこちらの満足感をあげながら実家の継続利用顧客を増やすこの手腕。かなりのやり手のようだ。
「ふふふ! それではよろしくお願いしますね」
カーラがそういうと、視界のすみに通知が流れた。
〈職業ギルド指名クエストを受注しました〉
〈チュートリアルクエスト【職業ギルドでクエストを受注してみよう】をクリアしました〉
────────────
【職業ギルド指名クエスト】
ギルドに集められた情報をまとめて資料を作成し、ギルドへ提出しよう。
依頼者:始まりの町『ユヌ』の職業ギルド 進行度:0% 期限:残り7日
報酬:1000G、職業ギルドランク上昇、ユヌの防衛力上昇(微)、ユヌ近郊安全度上昇(微)、資料室所蔵資料の限定的貸出許可
────────────
クエスト受注の意志を示したことで、クエスト受注中を示すアイコンとともにクエストの詳細な内容が表示された。
……最後のとってつけたような報酬は、僕以外に喜ぶやつがいるのだろうか? いや、これは指名依頼だから、僕が喜ぶような報酬が追加されているのかもしれない。
職業ギルド、というかカーラに完全にツボを押さえられている。一昨日の件で、いろいろと察したのだろう。
ほかの報酬内容についても、通常の依頼よりも割がいいように思う。もらえるゴールドだけを見ても、攻略サイトに載っていた初期に受注できるどのクエストよりも金額が高い。
あとはこのプレイヤーが最初に放りこまれる始まりの町『ユヌ』の安全度もあがるらしい。あがるということはさがることもあるのだろうか。そして現状の安全度はどの程度なのだろうか。
まぁ、安全度があがるに越したことはないから、それはいいか。
当然、僕としては待望の報酬『資料室所蔵資料の限定的貸出許可』を得るために、しっかり依頼をこなすつもりだ。
原因はどうやら《空腹》と《不眠》というバッドステータスらしい。
一度気づいてしまうと、体の不調を一気に自覚してきた。視界は波打ったように歪んでいるし、身体もフラフラとして制御がしづらい。どう考えても体調は大丈夫ではない。
そうして自分の状態を確認していると、ギルド職員の女性が困ったように頬に手をあてて視線を彷徨わせた。
「ど、どうしましょう! 今は異人さんがたくさんいて大通りの宿屋はいっぱいだし、まだ夜明け前なので空いている食堂もないし……」
「だ、大丈夫です。食事は携帯食料があるので……ご迷惑かもしれませんが、そこのすみで仮眠をとらせてもらえればそれで……」
確か最初から持っているアイテムに携帯食料があったと記憶しているので、あとは《不眠》をどうにかすれば問題ないだろう。そう思いギルド職員の女性に提案すると――
「そんなのはダメです!」
「えっ」
食い気味にたしなめられた。思いのほか強めの勢いに驚いて肩が跳ねる。
それによく見たら、声をかけてくれた女性はギルド登録のときに受付をしてくれた女性だった。
彼女は勢いのままに僕に迫る。
「そんな今にも倒れそうな顔色で粗末な食料と寝床なんて、よけいに体調が悪化します! 少し遠いのは申し訳ないですが、ギルド裏から外壁に向かう途中にある宿屋なら、この時間でも食事をだしてくれますし部屋も空いているはずです。そこの女将さんに私、『カーラ』に紹介されたと伝えればお世話をしてくれると思うので、すぐに向かってください!」
「えっ。その……そこまでしてもらわなくても……」
回復したらすぐに読書を再開したいと思っていたので、つい断ろうとしたが……
「すぐに! 向かってください!」
「は、はい! ご迷惑をおかけして申し訳ありません、お世話になります!」
ギルド職員の女性、あらためカーラさんのあまりの剣幕に、宿屋の紹介を受けてしまった。
いやまぁ、ものすごくありがたい厚意なので断るほうが失礼だったんだが。本当につい……
ということで、いまいち制御の利かない身体を引きずってなんとかギルドの外にでると、ギルド内からこぼれる光といくつかの民家に灯った淡い光、そして空に瞬く星くらいしか明かりがなく、かなり暗かった。そういえばカーラさんも夜明け前とかいっていたな。
「私はまだ仕事があるので付き添えないのですが、おひとりで大丈夫ですか? ちゃんとたどり着けそうですか?」
「はい、移動はできそうなので大丈夫です。お手数をおかけしてすみません、ホント……」
この数分のやり取りですっかりカーラさんに「ダメそうな子」認定されてしまったようで、彼女の僕を見る目が、心配な生徒を見守る小学校の先生のようなものになっている。
カーラさんに見送られ、僕は紹介された宿屋のほうへ足を踏みだした。
いつの間にかミニマップに新たなマーカーが現れている。カーラさんに紹介されたことで、自動で目的の宿屋にマーカーがついたらしい。これで迷わずにいけそうだ。
身体がフラつくので、慎重にゆっくりと移動する。
ギルドの入口に面した大通りは、こんな暗い時間帯にもかかわらずプレイヤーらしき人たちが活発に行き交っていたが、少し通りを外れると途端に人どおりが失せ、物音ひとつしない静けさに包まれた。
夜のひんやりと冷えた空気を大きく吸いこむと、フラつく身体やぼやけた視界がいくぶんマシになった気がして気分がいい。
……思い返すと、一日以上飲まず食わずによる空腹も、不眠も、現実で体験したことは一度もなかったかもしれない。いや、絶対にない。
当たり前だ。平均的な家庭の十歳はまずそんな状況にならない。小学校では給食がでるし、夜ふかしをしようとすれば親か保護者がとめる。
こんな状態になってからは生命維持機能の一貫で、決まった時間に強制入眠するようになっているし、栄養も身体につながれた管から補給されているので食事を自主的にとることはない。
ちなみに強制入眠時間まではまだ余裕はある。ダイジョブ、ダイジョブ。
「……ふふっ」
なんだか妙に楽しくなってきて、笑みがこぼれた。これが徹夜テンションというやつだろうか。踏みしめる地面の感触も心なしかふわふわしてくる。
さっきまで、とてもダルかったのになんとも不思議だ。
脳内物質によってこういうことが起こると知ってはいても、体験できるなんて思わなかった。あらためてものすごい技術だなぁとぼんやりと思う。
徹夜テンションを楽しみながらも、歩行だけは慎重に進めることしばらく。
前方に明かりの灯った建物が見え、そこからなんともおいしそうな匂いがただよってきた。
ミニマップを確認すると、あの建物が目的地で間違いなさそうだ。
なんだかホッとする雰囲気があるなぁ、とあまり働かない頭で考えながら扉に手をかけるが……
「……開かない」
押しても引いても開かない。引き戸の要領でもダメだった。
まだやっていると思ったが、もう店じまいしてしまったのだろうか?
扉を叩けばなかの人に気づいてもらえるだろうか――と考えたところで、突然ガコッと大きな音がして視界に光があふれた。まぶしくて目をつぶる。
「なにやってんだ、お前」
頭上後方から、不機嫌そうな低い声が降ってきた。
声のするほうを緩慢に見あげると、とてもたくましく体格のいい鎧姿の男性が立っていた。頭をすべて覆うタイプの兜をかぶっていて顔は見えない。
その男性が後ろから腕を伸ばして扉を開けていて、ほとんど覆いかぶさられているような体勢だ。
……なんとなくお互い見あっていると、扉の向こうから快活そうな女性の声が大きく響いた。
「あら、アンタ今日はもどってきたの。……おや? 見かけない子もいるねぇ。……まさか! アンタどっかからさらってきたんじゃないだろうね!?」
「俺だって知るか。ここに突っ立ってたんだ。……邪魔だ。入らないならどけ」
そういうと鎧の男は僕のわきをすり抜けてさっさと奥へ入っていく。
背中に背負った僕の身の丈はありそうな大きい剣が印象的だった。
「突っ立ってたって? ……ああ! 扉の建てつけが悪くて、少し強めに押しこまないと開かないのよ! ここには粗野な野郎どもしか泊まらないからすっかり忘れてたよぉ!」
この宿の女将と思われる、エプロンをつけた恰幅のいい女性は、そういうとほがらかに笑った。
……扉が開かなかったのは単純に僕のパワー不足だったらしい。
「さ、入んな!」
女将さんにうながされて宿のなかへ入ると、広々とした食堂にとおされた。今は先に入っていった鎧の男しかいないらしく、がらんとしている。
「このとおり今はほとんど客がいないから、好きな席に座りなねぇ」
僕はうなずいて窓際のひとり用の席に腰をおろした。
少しして席にやってきた女将さんが、不思議そうな顔をして僕を見る。
「もしかしてアンタ、異人さんかい? アンタたち、こっちの通りに入ってこられるようになったんだね?」
「はい、僕は異人です。ほかの異人は……ほとんど入ってこられないと思います。僕がここにくることができたのは、ギルドに勤めているカーラさんに紹介されたからかもしれません」
あまり働かない頭で少し考えてからそう答える。
資料室で町の情報を手に入れたことで、どこの建物がなんであるかの情報は結構埋まったのだが、立ち入り可能エリアはほとんど拡張されなかった。
しかし、この宿はその立ち入り不可エリアのなかにある。ミニマップを確認してみると、大通りからこの宿に向かう道だけ立ち入り可能エリアになっていた。
そして、この宿のある道に入ってからはプレイヤーらしき人物を一切見かけなかったので、今のところ全員に開放されているわけではないと推測する。
となれば、僕とほかのプレイヤーの違いは、カーラさんにこの宿を紹介されたか否かだ。
「まぁ! アンタあの子の紹介でここにきたのかい! カーラはアタシの娘なのよぉ。アンタはあれかい、あの子といい感じなのかい?」
途端に女将さんが喜色をあらわにする。なるほど……いろいろと納得した。
とりあえずカーラさんの名誉のためにも、きっぱりと否定しておこう。
「いえ、そういう関係ではないです。ギルド内で倒れそうになったところを助けていただき……」
「えっ、なんだって?」
そうして、僕はこの宿を紹介されるに至った経緯を説明した。
《不眠》のせいで口がうまくまわらず、いつもよりゆっくりと話したせいでそれなりに長くかかってしまった。
「アンタ、そんな満身創痍だったんだね……気がつかなくてゴメンよぉ。すぐにお腹にやさしいもんを持ってくるから。食べ終わったら上の部屋でゆっくりしていっておくれ」
「ありがとうございます……」
ここまでの経緯を説明し終えると、女将さんからも心配な子を身守る母親のような目で見られてしまった。女将さんとカーラさんとの血の繋がりを強く感じる。
食事を用意するために、女将さんはカウンターの奥にある厨房へ引っこんでいった。
なんとなく鎧の男のほうに目を向けると、革鎧をベースにところどころ金属で補強された鎧に身を包み、傍らにはあの大きな剣を立てかけていた。
そして全体的に赤茶けているというか、赤黒く汚れていた。
……もしかしなくても、なにかの生物の血液だろうか。全体的に赤黒いということは全身に血液をかぶったことになる。……いったいなにと相対して、なにを屠ってきたのだろう。
「うっ……?」
不意に、ピリッとした感覚が身体を駆け抜ける。
この感覚はなんだろうと首をひねっていると、僕が目を向けていることに気づいたのか、鎧の男がじっとこちらに顔を向けていた。
兜越しに視線が交わった気がしたつぎの瞬間、静電気で強く弾かれるかのようなビリビリとした感覚が僕を襲う。
兜をかぶっているので彼の表情も視線もよくわからないが、たぶん僕をにらんでいるんじゃないだろうか。そして僕は彼からのなんらかの圧力を感じているのだと思う。
現実をふくめても初めて体験する感覚にしばし身を浸す。身体が勝手に緊張して硬直するこの感覚、緊張感で萎縮するというのはこういうことなのか。
初めて体験するものではあるが、少し似たものを前にも感じたことがあるような……
「ちょっと! 今にも倒れそうな坊やに威嚇なんて、大人気ないことしてんじゃないよ! 叩きだすよ!」
「……チッ」
ぼんやりと思考の海に沈んでいると、奥の厨房から女将さんの喝が飛んでくる。
舌打ちのような音の直後に、全身を覆っていたビリビリとした感覚が消えたので、女将さんのいう彼の威嚇? が緊張感の原因だったようだ。
僕が不躾にながめていたので、彼の癇に障ったのかもしれない。
「不快だったなら、すみません。気をつけます」
鎧の男のほうに向かって頭をさげる。それ以降はそちらに視線を向けないようにした。
彼の反応はとくにない。これ以上関心を向けられたくないだろうから気にしないことにする。
「アンタ大丈夫だったかい? うちの客は行儀がなってないからいけないよ」
女将さんがやれやれといった様子で、お皿の載ったお盆を持って厨房からでてきた。
「いや、僕も不躾にみていて、気を悪くさせてしまったかもしれないので」
「気を使えていい子だねぇ……。ほら、豆と野菜のスープだよ。今日のところはこれで身体をあたためて、明日になったらもっと精のつくものを食べな」
「ありがとうございます。おいしそうです」
「ふふっ、ゆっくり食べなねぇ」
そういって女将さんは去っていった。
直後に、鎧の男が座っているほうからバコンッとなかなかすごい音がしたが、そっちに視線を向けないようにしているのでなにが起こったのかはわからなかった。
目の前の湯気を立てたスープに視線を移し、木製のスプーンを手にとる。
そして、自然と両の手をあわせ……
「いただきます」
当たり前の習慣なのに、ひどく久しぶりのような不思議な感覚を覚えながら食前の礼を口にした。
スープをひとつすくい口へ運ぶと、口の中に、やさしい味とあたたかさがゆるやかに広がる。
「……っ!」
そのスープはなにもかもやさしいものでしかできていないはずなのに、頬が、胸が、全身が燃えるように熱くなり、〝なにか〟がとんでもない激しさで身体中を駆けめぐったようだった。
その感覚にのたうちまわりそうになるのを必死で抑える。
しばらくその激流を堪え、ようやく落ち着いてスープ本来の穏やかなあたたかさだけを感じられるようになったころ、身体に残った最後の激しい熱を吐きだすように、ほぅっと息をついた。
――生きてる。
それからは、スープを最後の一滴までゆっくりと丁寧に味わった。
食事を終えると、女将さんに案内されて空き部屋にとおされた。
宿泊部屋は意外と広いものの大きなベッドが部屋の半分くらいを占めていて、残りは小ぢんまりとした机と椅子がおいてあるだけの飾り気のない簡素な部屋だった。
パッと見ても掃除は行き届いているし布団も清潔そうで、この宿屋全体に流れる雰囲気と同じでどこか安心する部屋だな、と思った。
女将さんは「狭くてごめんねぇ」などと笑っていたが、十分広いと思う。
なんならベッドはもう半分くらい小さくてもいいくらいだ。……まぁ、あの鎧の男くらい身体が大きかったら、このベッドでちょうどいいのかもしれないが。
いよいよこの身体の体力の限界と現実の強制入眠時間が迫ってきたため、さっさと布団に潜ってログアウトをする。
こうして、僕のアルストプレイ一日目は幕を閉じた――
◆ ◇ ◆
つぎの日、僕はゲームにログインする前に、ネットでアルストについて調べてみた。
すでに大手攻略サイトのいくつかが我先にと攻略情報をアップしている。
僕がギルドの資料室で読書に没頭しているあいだに、つぎの町へ進出したプレイヤーもいるようだ。それが早いことなのか普通のことなのかは、よくわからないが。
現在判明している職業一覧も見てみた。予想はしていたが、僕の職業は記載されていなかった。
まぁ、こういうものは自己申告だろうから、網羅されるのはまだまだ先だろう。
技能一覧のほうには《分析》だけ載っていた。
どうやら『◯◯学者見習い』というような学者系の職業に就くと、デフォルトでついてくる技能のようだ。『◯◯学』は植物学に鉱物学、動物学など、ほかにもいろいろあるらしい。
その職業の人にはぜひそれぞれの分野を究めてもらって、研究成果を文書に残したあかつきには僕に読ませてほしい。
《記録》も学者系の職業の初期技能につきそうなものだが、なかったのだろうか? まぁ、そのうち嫌でも習得できそうだし、些細なことだろうか。
そして、昨日僕についたバッドステータスの《空腹》と《不眠》についても調べてみた。
《空腹》はスタミナの回復量が減り、徐々にLPを侵食し始める、というところまではヘルプにも記載があったと記憶している。
このLPとは『ライフポイント』の略で、いわゆるプレイヤーの生命力やほかのゲームでのHPにあたる。
そしてここからは有志によって検証された内容だが、これらのバッドステータスを放っておくと、そのままLPがゼロになって死亡してしまうらしい。身体操作も重りがついたように鈍くなるようだ。
……死ぬまで待ってみたのか。
それなりに放置したバッドステータスを経験した身からすれば、もしレーティングや設定まわりを全解放していてあの飢餓感を味わうのは、なかなかつらいものがあると思う。これがライトノベルでもよく見かける検証班の執念か……。頭がさがる。
ちなみに《空腹》の解消方法は単純で、満腹度がプラスになるまで食べ物を食べることだ。
つぎに《不眠》だが、こちらはゲーム内時間で十五時間以上眠らずにいると蓄積が始まり、LPの回復量が減り、時間経過にしたがって視界の歪みや狭まりといった症状がでてくる。
やがて身体のコントロールが利かなくなり、最終的には《錯乱》や《幻覚》などの状態異常がランダムに発生するようになっていく。
状態異常を解除しても《不眠》を解消しないかぎり、すぐに状態異常が発生してしまうようだ。
解消方法はログアウトをするか、〈睡眠〉というコマンドでゲーム内で二時間ほど眠ったことにすることで解消するらしい。これも単純でお手軽だ。
ただし、〈睡眠〉はログアウトをしているわけではないため、一日の連続ログイン時間の上限に達すると、再度ログインするためには必ず現実で六時間空けないといけなくなる。
連続ログイン上限的に、ゲーム内換算三日の徹夜が限界で、これ以上《不眠》を続けるとどうなるのかは今のところ検証する術がないそうだ。
……普通に死ぬんじゃないだろうか。状態異常の内容が妙にリアルだし。
ちなみに《不眠》でわかるように、バッドステータスと状態異常は別もので、バッドステータスにはほかに《欠損》などがあり、こうしてみると身体の不調状態を表しているようだ。
僕の《不眠》は状態異常が発生するほどではなかったようだが、さすがにこれからは集中しすぎそうなときはアラームをかけるようにしようと思う。
サポートAIにもなるべく死なないほうがいいといわれているし。
なにより、仮想空間では容易に味わえなかった食事のおいしさ、あたたかさをもっと得てみたい。
さて、ひととおり攻略サイトめぐりを終えたので、そろそろログインしよう。
◆ ◇ ◆
昨夜泊まった宿屋の一室で目を覚ます。
ログアウト前のダルさや視界不良が嘘のように、クリアな視界と身体感覚だ。
気分爽快とはこのことだろう。現在はログアウトから一日半をすぎたころだろうか。昼と夕方のあいだの時間帯だ。
まず行動ログを確認してみる。
……《空腹》によってLPが半分くらい減っていたらしい。本当に気をつけよう。
あとは宿屋での宿泊や食事など、いくつかのチュートリアルクエストをクリアしていたので、さくっと内容と報酬を確認してログを閉じた。
ほとんど必要のない身支度をして一階の食堂におりると、女将さんがにこやかに迎えてくれ、時間的にがっつりとしたものは難しいが軽食を用意する、といってくれた。
昨日と同じ席に座って待っていると、お盆を手にした女将さんが僕のもとへやってきた。
「はいよ、パンとホットミルク。アンタが一日経っても起きてこないもんだからずいぶん心配したんだけど、大通りで異人を泊めてる仲間にきいたら〝異人の眠り〟ってのはそんなもんなんだってねぇ。慣れてないからあわてちまったよぉ!」
食事を僕の前におきながら女将さんが話す。
『異人の眠り』……ログアウト中のプレイヤーのことを指しているのだろう。
「ご心配おかけしました……。そうですね、二日ほどはほとんど休まず活動できますが、そのあと一度深く眠ると一日から二日、あるいはもっと長く起きないこともあるかもしれません」
「はぁー、同じ人系種族に見えて、やっぱりいろいろとアタシらとは違うんだねぇ」
こちらの世界と現実の時差のせいで、女将さんにいらぬ心配をかけてしまったらしい。
だがプレイヤーを相手に商売をしている人は、早くも「そういうもん」扱いで順応しているようだ。たくましい。
というところで、女将さんは清掃へもどり、僕はパンをかじってホットミルクで喉をうるおす。
うん、今日の食事もあたたかくておいしい。
「あ、そうだ。うちの娘が、アンタが起きたらギルドに顔をだしてほしいっていってたよ。あの子も心配してたから、元気な顔を見せてやんな」
「そうですか……わかりました、そうします」
僕が食べ終わったころを見計らって女将さんが声をかけてきた。カーラさんにはすごくお世話になったので、ちゃんとお礼をいわないとと思っていたのでちょうどいい。
さっそくギルドへ向かおうと、空の食器の載ったお盆を女将さんに持っていく。
「ご馳走さまでした。今日の食事もおいしかったです」
「あら、どうもねぇ! そうだ、宿はもう引き払うかい? まだこの町にいるんなら連泊のほうが安くなるんだけど」
「本当ですか。払えそうならぜひ連泊したいです」
「そうかいそうかい! うちの子によりゃあアンタはまだこの町で一銭も使ってないはずだから、連泊代を払えるはずだっていってたよぉ!」
「……確かに一銭も使ってないですね」
……カーラさんの洞察力がちょっと怖い。ギルドで異人には慣れてるし、実家の宿屋で人間観察を経験したたまものだろうか。しかも、ちゃっかり実家の顧客も増やしているな?
まぁ、この宿屋のあたたかくて落ち着く雰囲気がすっかり気に入っているので、連泊できるのなら僕としてもとてもありがたいのだが。
女将さんに連泊代を支払い、サービス内容や注意事項をあらためて説明してもらった。
「うちは傭兵や冒険者が泊まることが多いから、一昨日のやつみたいなむさっ苦しいのしかいないんだけど、そこはごめんねぇ。粗暴だけど気のいい奴らばかりだから」
「はい。とくに気にならないので大丈夫です」
「よし、いい子だ! そういやまだ名前をきいてなかったねぇ。アタシはローザってんだ、よろしくねぇ! アンタは?」
女将さんの言葉に、そういえば名乗っていなかったなと気づく。
「僕はトウノといいます。よろしくお願いします」
「トウノね! なんだか不思議な響きだねぇ。あとアタシにもここの奴らにも丁寧な言葉づかいはいらないよ! それが流儀ってもんさ! ほら!」
「えっと……わかった」
ローザにうながされて、戸惑いつつも敬語をはずしてみる。
うーん……年上の人にタメ口をきくのはなんだか据わりが悪い……
「あっはっはっ! 徐々に慣れなねぇ! ほら、娘んとこにいってきな!」
ぎこちないままの僕を、ローザは快活に笑いながら送りだしてくれた。
宿をでた僕は、あらためて宿の外観を観察した。
入るときは暗かったし視界も歪んでいてよくわからなかったが、見た目は少し大きいくらいの普通の民家にしか見えない。
看板は宿屋共通と思われる意匠の看板しかかけられていないし、マップの表記も「宿屋」としか書かれていなかった。
ふぅむ……勝手に『ローザの宿屋』と呼ばせてもらおうか。
外観を確認したところで、さっそくギルドへ向かおう。
だがギルドまでの道があやふやだったので、マップを開いてギルドの場所を確認してから進む。といっても、ギルドへ向かう道以外はほとんど立ち入り不可なので、ある意味わかりやすかった。
行きは真っ暗でほとんど見えなかった町並みが今はよく見える。大通りとくらべると人が暮らしている生活感が随所からにじみでている印象だ。
大通りはゲームプレイに必要な施設へのアクセスがよく、逆にいえば必要最低限の施設しかない『ザ・始まりの町』という印象だった。
しかし、こうしてプレイヤーと住民の生活範囲をわけることで、プレイヤーが大量に流れこむことによるトラブルを未然に防いでいるようにも見える。観光地と居住区の住みわけといったイメージだろうか。
そんなことをつらつらと考えているうちに、昨日行き倒れかけた職業ギルドに到着したので、なかに入って目的の人物を探す。
「あ! トウノさん!」
ふと名前を呼ばれてそちらを見ると、資料を抱えたカーラさんがいた。
「一昨日は大変お世話になりました。いい宿も紹介していただいて……」
「いいんですよ、顔色もよくなったようで安心しました」
礼を伝えると、カーラさんは朗らかな笑顔で応じてくれた。
「なにかお礼ができないかと思っていたんですが、僕にできることってありますか?」
プレイを始めたばかりの僕になにができるかわからないが、雑用でもなんでもいいのでお礼をしたい。
するとカーラさんは目をキラリと光らせた。
「実のところ、その言葉を待っておりました! トウノさんにぜひやっていただきたいことがあるんです!」
「そうなんですか。なんでしょう?」
「こんなところで話すのもなんですので、あちらのカウンターへどうぞ。あ、それとこの世界では平民同士ならだれに対しても丁寧な言葉づかいはいりません。私たち受付担当の者は面倒ごとの回避でこの言葉づかいにしているだけですので」
「さっきローザさ……ローザにもそういわれた。善処し、する……」
「ふふ、すぐ慣れますよ。さあ、こちらです」
デジャヴかな? というやりとりをしながら、カーラの案内でカウンターへ移動する。
「ではさっそく、当ギルドからトウノさんへ指名依頼をさせていただきたいのですが、指名依頼の説明は必要ですか?」
……通常のクエストもまだ受けたことがないのに、どうして僕に指名依頼を?
そんな疑問が浮かびつつも、こくりとうなずく。
「ギルド登録をしたときにカーラが説明してくれたから大丈夫だと思う。強制ではないがなるべく受けてほしいこと、通常の依頼に比べて報酬や評価が上乗せされる、だったかな」
「そういえばトウノさんのギルド登録は私が対応いたしましたね。はい、その認識で大丈夫です。では依頼内容についてですが、トウノさんにはこのギルドに集まった情報をまとめて、資料にしていただきたいんです」
「ほぅ」
カーラがいうには、この数日急激に増加した異人と活発な依頼消化によって、ギルドに報告される情報が激増した。それ自体はよろこばしいことなのだが、その情報をまとめる人手が圧倒的に不足しているのだという。
ギルドとしては、この数日の環境変化を一刻も早く把握したいが、あまりうまくいっていないとのこと。
「ふぅむ……依頼内容とギルドの切迫感は理解できたが、それでなぜ僕に指名依頼を?」
「それは、トウノさんがこの問題の解決に必要な技能を有しているからです。《分析》と《筆記》か《記録》をお持ちじゃないと、つらい物量になると思いますので」
「なるほど……」
確かに僕は《分析》と《記録》を持っている。まだ使用したことはないが。
気になることといえば……これらの技能がないとつらい物量とは? ……まぁ、この短期間に流れこんだプレイヤーの人数を考えると〝お察し〟というやつなのだろうか。
「実のところ、トウノさんの職業でもある『編纂士』という職業をまったくきいたことがなかったのですが、ギルドの記録をひっくり返してみると記載があったんです。ギルド創立時に、そういうギルドの記録や情報なんかをまとめる仕事をしていたのが『編纂士』なんだそうです! これはもうアークトゥリアのお導きなんじゃないかと思ってトウノさんにお声がけしました!」
「そ、そうなんですか」
僕の職業がギルド創立まで遡らないと確認できないほど稀有な職業だということが、さらっと判明した。レア職業だろうなとは思っていたが、それほどとは。
まぁ、それはともかくとして……
「まだ『下級』で『見習い』なんだが、それは……」
「必要な技能があれば、そうむずかしい依頼ではないので大丈夫ですよ。経験値がおいしい仕事とでも思ってください。……あ! あとゴールドの報酬も多めにだしますので、宿屋にももっと長く泊まれますよ!」
「ふっ、それなら否やはないな」
そもそも読みものにたくさん触れられそうだから、力不足でなければ断る気はなかったのだが、カーラはこちらのモチベーションを的確にあげてきた。
仕事の問題解決と同時にこちらの満足感をあげながら実家の継続利用顧客を増やすこの手腕。かなりのやり手のようだ。
「ふふふ! それではよろしくお願いしますね」
カーラがそういうと、視界のすみに通知が流れた。
〈職業ギルド指名クエストを受注しました〉
〈チュートリアルクエスト【職業ギルドでクエストを受注してみよう】をクリアしました〉
────────────
【職業ギルド指名クエスト】
ギルドに集められた情報をまとめて資料を作成し、ギルドへ提出しよう。
依頼者:始まりの町『ユヌ』の職業ギルド 進行度:0% 期限:残り7日
報酬:1000G、職業ギルドランク上昇、ユヌの防衛力上昇(微)、ユヌ近郊安全度上昇(微)、資料室所蔵資料の限定的貸出許可
────────────
クエスト受注の意志を示したことで、クエスト受注中を示すアイコンとともにクエストの詳細な内容が表示された。
……最後のとってつけたような報酬は、僕以外に喜ぶやつがいるのだろうか? いや、これは指名依頼だから、僕が喜ぶような報酬が追加されているのかもしれない。
職業ギルド、というかカーラに完全にツボを押さえられている。一昨日の件で、いろいろと察したのだろう。
ほかの報酬内容についても、通常の依頼よりも割がいいように思う。もらえるゴールドだけを見ても、攻略サイトに載っていた初期に受注できるどのクエストよりも金額が高い。
あとはこのプレイヤーが最初に放りこまれる始まりの町『ユヌ』の安全度もあがるらしい。あがるということはさがることもあるのだろうか。そして現状の安全度はどの程度なのだろうか。
まぁ、安全度があがるに越したことはないから、それはいいか。
当然、僕としては待望の報酬『資料室所蔵資料の限定的貸出許可』を得るために、しっかり依頼をこなすつもりだ。
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◾️AI活用
・表紙(AIイラスト)
・会話テンポの調整と文章校正
・タイトル案、概要案など
◾️各話リスト
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5 勇者一行、来村
6 モブ、勇者に喧嘩を売る
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