第二王子の僕は総受けってやつらしい

もずく

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冒険の始まり

獣人さんは可愛い

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「ん、んんっ…んむぅ…っ…!」


ユース!アルくん!と声を出そうとするけどウルフにキスをされていて上手く声が出せない。


「…きもちいい、ですか?」


唇を離してそう問いかけてきたウルフが僕の方に微笑んで、僕も笑いかけようとしたとき、ブンッ!と音がしてウルフが視界から消える。


「うがァッ!!!」


視界にユースの足があることからユースがウルフを蹴り飛ばしたのが分かる。

慌ててウルフを見ると、ウルフは木の幹に吹き飛ばされ、ぶつかって下にズリ落ち地面に蹲っている。


「ウルフ!?…ユースなんでこんなことっ!!」


僕がウルフくんのとこに行こうとすると、後ろからアルくんに抱きしめられる。


「なんでって、好きな人が襲われてたら、そりゃ守るよ。」


「え、襲われ…?」



僕が首を傾げているとユースがウルフの胸ぐらを掴み持ち上げている。


「ネムに手を出すな…!」

「ぐぅ…!」


ウルフは首が締まってしまったのか、ユースの手を外そうと苦しそうに藻掻いている。


「ユース!!!!」


僕はアルくんを引き剥がし、ユースとウルフの間に入る。


「手を放して!!」


僕が必死に叫び、ユースの手を剥がそうとするとユースは眉間にしわを寄せながらも手を放した。


「ゲホッ…ゴホッ…!」

「…大丈夫…?」


ウルフの背中を擦りながら声を掛けると苦しそうにしながらも胸に抱きついてきたので、よしよしと頭を撫でる。


「…なんで、何でそいつをかばうんだ…。」


目を泳がせながら混乱した目でユースは僕を見つめる。


「いや、だって僕をスライムから助けてくれたし…。」

「は?スライム?」


ユースはぽかんとした顔で首を傾けている。


「ねえねえ、ウルフ?だっけ、ネムちゃんのことスライムから助けてくれたの?」


アルくんが僕達の目の前まで歩いてくるとウルフの目線に合わせるようにしゃがみ問いかける。

ウルフはガルルルル…と尻尾を立て警戒していて返事をする気はないようだ。


「ありゃりゃ、これは俺達、彼に嫌われちゃったみたいだね。」


アルくんは諦めたように立ち上がり、ユースの肩に手を乗せてニヤニヤと笑っている。


「こいつに嫌われようが関係ねぇ。…おい、ネム…早くこの森抜けるぞ。」


こっちに来いとばかりに手を広げられるが、僕はぷいっ!とそっぽを向く。


「ネ、ネム…?」

「…ユースが謝らなきゃ、僕ここ動かないから!」

「ネム、すまん。」

「僕じゃなくてウルフにだよ!!」

「ウルフ…すまなかった…。」


ユースがウルフに謝るとウルフは不機嫌な顔はしているが威嚇はやめたみたいだ。


「ウルフ、…ユース達のこと許してくれないかな。彼らは僕の大事な人達なんだ。」


僕が頭を撫でるとウルフは嬉しそうに尻尾を揺らしている。


「ネムの大事な人達なんだね。…わかった許すよ。…俺も調子乗ってやりすぎたのもあるし…。」


最後の方はよく聞こえなかったけど、ユースたちのこと許してくれるみたいだ。


「それより行くぞ…。ただでさえ迷ってウロウロしたんだ、夜になってもおかしくない。」


ユースがそう言って僕の手を握って立ち上がらせる。

するとウルフがこちらを見て首を傾げている。

ん?どうしたんだろう。


「もしかして道に迷ってたんですか?俺、ここの森詳しいので案内できますけど…。」

「えっ本当!?」

「は、はい。」

「ぜひ!ぜひお願いします!」


僕が頭を下げると、ユースもアルくんも道に迷うのは嫌だったのか、頭を下げていた。



「いやぁ…ウルフに会えて良かったよ!…じゃなきゃこの森で僕ら3人野垂れ死んでたかも…。」

「の、のたれ…!?…ネムが無事で良かったです。」


僕が冗談でそう言うと真に受けたのか顔を青くした後、ホッとした顔で抱きしめられる。

暫く抱きしめられたままでいると、ベリッとユースとアルくんに剥がされる。


「こらこら、そこイチャつくな~。…それにしてもなんでウルフはこの森に?」

「あ、俺はギルドの依頼で来てたんです…。なんだか、この森で魔物が異様に増えているとクロック帝国に報告があったみたいで。」


異様に増える…まさかね…。

僕の記憶に、幹部の一人であるヤツの顔が浮かんだけど気のせいだと振り払う。


「ネム、どうかしたか。」

「何でもないよ!」


ユースに目を覗きこまれたが僕は笑顔で答える。

それにしてもギルドの依頼か~。


「てことは、ウルフはクロック帝国のギルドに入ってるのかな?」

「はい、AランクなのでSランクの人達には勝てませんが、ギルド内では結構強いはずです!…だから、危険な森でもネムのこと守れますよ!」 

「…ありがとう!」


たぶん僕のほうがSランクの人達より強いんだよなぁ…そんなこと絶対言えないけど。


「ウルフがいなくても、俺達がネムちゃんのことは守るから大丈夫だよ。ねぇ~?ネム、ちゃんッ!」

「…ひゃあ!」


後ろから胸を鷲掴まれ、もみもみと揉まれる。


「ぁっ、…ひあ、…あん…あんっ…あ、…!」

「ネムちゃんは悪い人達にすぐ騙されそうだもんなぁ…。」

「…あんっ…あ、…ひあ、…あっ…!」

「た、たしかに…!」


確かにじゃなくて止めてよウルフ!


「そこまでにしとけ、またスライムが湧いてくるかもしんねぇだろ。」


ユースがアルくんを剝して僕を抱きとめる。


「ごめんユース、遅かった。」


アルくんの言葉に、え?とアルくんのほうを見ると前方を指差し、苦笑している。

指差した方向を見る。


「うぇ!?」


そこにはスライム…ではなく、大量のオーガが僕達を見て涎を垂らしていた。








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