3 / 63
第一章、あたおか勇者にお持ち帰りされて監禁された話
こっわ……
しおりを挟む恍惚とした表情を浮かべ、カプリスに持ち上げられて膝の上に座らされる。
下半身だけ拘束魔法を解かれると、カプリスを跨いでいるせいで服の裾が持ち上がって捲れた。
下履きを履かされていないから、見えるか見えないかのラインが際どくて腹が立つ。
「もう少しで見えそうなんですけどね……」
何も言う気になれなくて視線を逸らす。口付けで唇は覆われ、口内を貪られた。
「……っ!」
何とか体を動かそうとしていると、左腕だけ微かに動く様になっているのが分かって神経をそこだけに集中させていく。思いっきり力を込めると、拘束が解けた。
次いで魔力制御装置も全力で引きちぎる。もうゼロコンマにも満たない時間の流れだった。転移魔法で出来るだけ遠くまで移動する。
——何処だここ。もしかして闇の森の近くか?
それならばついている。過去に一時期暮らしていた事があるからだ。
即座に闇の森まで飛んでちょうど中間地点に降り立った。
「元魔王が何の用だ。その格好は奴隷用か? 討伐されて人族にでも飼われたか」
下卑た笑いと共に背後に影が伸びる。視線を向けると巨大な魔族が立っていた。
「あ゛? 誰だお前…………」
見上げた時に魔族の首が飛んだ。
——は?
「アフェ~クシ~オン~、ど~こで~すか~?」
思わず悲鳴を上げそうになり手で口を押さえる。
カプリスが長剣に巻きつけた細ベルトを持ってブンブンと振り回していた。その度に地面と森の木々が削れて空を舞っていく。
時折り焦れたように斜めに剣を振り払う。閃光が走り、森が斜めに削ぎ落とされる。至る所から阿鼻叫喚が聞こえてきた。
——お前は破壊神か何かかっ!
幸いな事に己の姿は魔族の影になっていて見えていないみたいだ。
——コイツの体が大きくて良かった。
倒れ込んできた体を支えながら、体の下に潜り込む。カプリスが通り過ぎたのを確認してからまた転移魔法で飛んだ……飛んだつもりだった。
「やーーーっと、見つけましたーーー。こんなところで隠れんぼしてたんですね」
「ひっ」
背後からガッシリと抱きしめられて、とうとう悲鳴が出た。空に浮いたまま抱きしめられているので、服の裾が風で靡く。
——何で捕えられた? コイツの魔力量……リミッターぶっ壊れてんじゃないのか?
通常であれば転移中の人物を捕えるなど不可能に近い。出来る事があるにはある。でもそれは相手の魔力量や質を熟知していて、更に強い繋がりがある場合のみだ。初対面に近い己とカプリスには当てはまらない。
「浮いたままブチ犯すのもありですね。そこの魔物の匂いが移っているのには嫉妬してしまいますが……。まさか犯されたりはしていないですよね?」
横に首を振る。
「ああ、良かった。でももう食べるのを我慢できないのでここでしちゃいましょうか。アフェクシオン……?」
低音の声音で名を紡がれ、ごくりと生唾を飲み込んだ。
「どうした?」
「もう逃げないですよね? せっかく家の中で優しくしてあげようと思っていたのに逃げたのはアフェクシオンですもんね……?」
死を悟り、心を決めた。
近くにあった洞窟内に連れ込まれて、逃げられないように服を引きちぎられる。立ったまま壁に背を預けて、不本意ながらも大人しくしていた。
先程とは違い、カプリスの機嫌は上向いてきているようだった。
「はっ、てめ、しつこい」
未知なる体験過ぎて嫌だというのに、カプリスは執拗にこちらの体を指で慣らしていく。
「まだ足りない気がしますので念の為弛緩作用のある魔法をかけときますね」
——何の為に?
指を抜いて、服を脱ぎ始めたカプリスを眺める。
69
あなたにおすすめの小説
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。
三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。
そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。
BL。ラブコメ異世界ファンタジー。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!
黒木 鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。
専属バフ師は相棒一人しか強化できません
風
BL
異世界転生した零理(レイリ)の転生特典は仲間にバフをかけられるというもの。
でもその対象は一人だけ!?
特に需要もないので地元の村で大人しく農業補佐をしていたら幼馴染みの無口無表情な相方(唯一の同年代)が上京する!?
一緒に来て欲しいとお願いされて渋々パーティを組むことに!
すると相方強すぎない?
え、バフが強いの?
いや相方以外にはかけられんが!?
最強バフと魔法剣士がおくるBL異世界譚、始まります!
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった
水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。
そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。
ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。
フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。
ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!?
無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる