【完結/R15BL】人格が破綻したあたおか勇者の愛が重すぎるんだが……?(加筆修正版)

架月ひなた

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第二章、家の中に部下が閉じ込められていた件

それはヤンデレ花言葉

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「ここ、お前らの家だったのか……」

 違う意味でショックだ。

「そうですー! あの悪魔がっ、悪魔野郎が! あれは人族のフリをした悪魔です!! やっつけて下さい!!」

「やっつけてください! て、アレ? アフェクシオン様、どうしてダンジョンから出ていらっしゃるんですか? お出かけですか?」

 今更な質問を投げかけられた。
 どっちがどっちか全く見分けがつかない。その前に名を聞いた事もないが。

「あー……。討伐されたからな、俺はもう魔王じゃない」
「えええええっ!??」
「アフェクシオン様が討伐されるなんて!?」

 その討伐した勇者と、人族のフリをしてこの家を奪った悪魔は同一人物だというべきか悩む。

「元々魔王なんて柄じゃなかったからな。それは別にどうでもいい」

 魔王をしていた父の影響と生まれ持った魔力の高さを買われて、ダンジョンに連れてこられただけだ。
 それよりも……かつての部下の家であんな事やこんな事まで散々していたのかと思うとやり切れない。

 この二人が己の部下だとあのカプリスが知らない筈がない。
 闇の森の時といいあの男には人の心というものはないのか。間違えた。無かったわ。一人で答えを導き出す。

 あの人格が破綻したサイコパスの変態ドS鬼畜男にある訳がない。愚問だ。考えた時間の方が勿体なかった。
 というよりも、二人に申し訳ない気持ちにさえなってきて「とりあえずお前らは今の内に逃げろ」と扉の外へと放り出そうとした。

「何だこれ?」

 押し扉が微かにしか動かない。魔法でもかけられているのかと逡巡して気配を探ってみるも、扉や家自体にはそんな気配はなかった。
 無理やり少しだけ開くと蔦が幾重にもビッシリと絡みついている。

「植物?」
「この葉の形はアイビーという植物ですね」
「アイビー?」
「はい。蔦性の植物ですよ。確か〝死んでも貴方と離れない〟という意味があった気がします」

 ゾゾゾと全身に悪寒が走り鳥肌が立った。
 植物には強化目的の光属性の魔法がかけられていたので、反対属性の闇魔法で効果を中和してそのまま黒炎で焼き切る。
 外はまだ昼だった。植物が家中を取り囲んでいたせいで暗かっただけだったらしい。

「これのせいで暗かったのか」

 舌打ちした。

「おい、この花は何だ?」

 出窓の前にも黒い花が咲いている。寝室への日光を遮っていたのはこの花だった。

「これは黒薔薇と言います。〝貴方は私だけのもの〟という意味を持っております。そこの隅に咲いているのはイカリソウといって〝貴方を離さない〟という意味だそうです。でも、今はイカリソウが咲く時期じゃないんですけどね。珍しいイカリソウです。花も植物も好きなので意味も書かれた辞典をよく見るんですよ」

 ——おもっ。

 心が磨耗していく。秒で燃やした。

「ああっ、せっかくの花が!」

 理由を口にするのも嫌だ。

 ——やはり俺も一緒に逃げよう。

 決意を新たに、家の正面に視線を向ける。そこには以前には見かけなかった円状になった木の柵があった。

 ——あんな物あったか?

 疑問に思いつつも通り過ぎる。近くにカプリスの気配がないか全神経を集中させていく。

 ——よし、いない。

「アイツが帰って来ない内に行くぞ」
「「はい!」」

 二人を引き連れて浮かんだまま進み、滑らかな丘を越えた時だった。

「「ごふうっ!?」」

 先を急いで走り出した双子が目に見えない壁に当たったように後ろに倒れ込む。

「防御壁……」

 掌に魔力を溜めていき防御壁にぶつける。空間が揺れ動いた気配がしただけで消えはしなかった。

 ——上等じゃねえか……。

「マジで腹立つ奴だな!!」

 腹が立つが血は騒ぐ。魔力を練り上げて両手を壁に押し当てる。

「έηάήζιΰξξ βΰικβδщΰ ηάξΰν!!」

 高難易度の闇属性攻撃呪文を唱えた。
 一帯に不協和音が鳴り響き、ガシャンとガラスが割れる音の後で防御壁が粉々に砕け散っていく。

「「さすがです! アフェクシオン様!」」

 二人の首根っこを掴んで、隣街にある森まで転移魔法で移動した。
 前回飛んだ倍の距離を移動したからついて来るのにも時間が掛かるだろう。

「ここは比較的大人しい魔獣や魔族しかいない。家は諦めてお前らはここで暮らせ。俺はもっと別の場所へ行く」

「どちらへ行かれるんですか? わたくし共もご一緒します!」
「是非ご一緒させてください」

「俺と居ると危険だ。ここにとどまっておけ。それに俺はこのまま大陸を幾つか渡るつもりだ」

「大陸を? 見つかるとそんなに厄介な相手なんですか!?」

「ああ。俺を討伐した勇者とやらだ。やたら気に入られててな。お前らの家を奪った奴だと言えば分かるか?」

「「え……」」

 脂汗をダラダラかきながら二人が固まったのを尻目に、魔法で顔と髪の色を変えて歩き出した。腰も股関節もギシギシいってるが暫くは歩いて魔力を回復させたい。

 ——まずは街にでも行くか?

 服を調達したかった。毎日着替えさせられているものの、相変わらず下履きは履いていない上に上下一体型の服にも変わりはないからだ。普通の服を着たい。
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